Nゲージ蒸気機関車>蒸機の工作>南薩ボールドウィン6号機(トーマモデルワークス)
2022.8.6
昨年発売された5形蒸気機関車の姉妹品で、従輪が追加された姿です。
超低速タイプの動力ユニットは組み立て調整済みのため、確実に走らせることができます。
5形蒸気機関車と同じ構成なので、従輪の追加以外はほとんど同じ要領で組み立てられます。
→3D 5形蒸気機関車(トーマモデルワークス)
5形蒸気機関車では、金属線を通す穴を0.3mmドリルでさらう緊張の作業がありましたが、今回は穴径が変更されているようで、その必要性は減っているようです。
代わりに極細のカプラー解放テコのサポートをカットする作業に注意が要ります。とはいえトーマモデルワークスのキットはユーザーがカットしなければならないサポートが非常に少なく、全体的に楽なことは変わりありません。
取扱説明書はPDF形式の電子ファイルなので、箱の側面の説明文を読んでダウンロードしておきます。記載されているURLを入力するか、スマホならQRコードをスキャンします。
キットの中身です。サポートもここまで除去されています。見るからに「あっ、これなら何とかできそうだ」と思わせる構成です。
光造形樹脂(プラスチックの一種です)で造形された車体は、一般的なプラ模型のポリスチレンよりもやや硬さがありますが、ナイフやヤスリで削ったり、ドリルで穴を開けたりといった加工もできます。プラ模型用の塗料で塗ることもできます。
ボイラー左右の細い手すりは付属の金属線を差し込む方式です。従輪は黒色で、左右の車輪に金属のシャフトを差し込んで作ります。
これがこのキット唯一の心臓破りです。怖いほど細く造形されている解放テコから、サポートの残りを切り離します。
デザインナイフを使い、鉛筆で軽く字を書く程度の力で(人によって筆圧が相当違いそうですが)、カリカリカリカリ…と何回も気長になぞっていると、ポキンと取れました。
万一折ってしまったら、残りの解放テコも削り取ってしまい、0.3mm真鍮線などで作ってみてはいかがでしょう。
今回はやや造形時の縞模様が目立つものに当たりました。光造形には個体差があるので何でもないです。こういうものです。
説明書に従い、部品をよく見て要所のサポート痕を整えたら、金属の手すりを差し込んで接着しました。
ボイラー(サドルタンク)左右の手すりは穴を広げなくても十分簡単に入りました。所定の長さに金属線をカットして瞬間接着剤で固定しました。
後部の手すりは片側のみ少々きつかったため、無理せずデザインナイフの尖った先で穴を軽くさらって差し込みました。
ほか、底板には2箇所にM1.4タップを立ててネジを切りました。写真には写っていませんが、車体下側にも説明書に従い3箇所のネジ切りをします。タップがないときはネジ切りはせず、底板は動力ユニットに接着固定、車体には両面テープ留めにする方法もあるかと思います。
これで車体の部品準備はおしまいです。エアブラシで黒に塗りました。
今はアクリジョンのエアブラシ用うすめ液が、うすめ液「改」に変わっています。
黒の塗料は半光沢にしました。細かい調色がもう面倒でして、大雑把にアクリジョンのつや消しブラック1本と、光沢ブラック2本を30mlビンに全部入れて混ぜました。この1両に使うのはそのうち少しだけです。
希釈割合の指示がシビアでして、塗料:うすめ液=1:0.3 となっています。
まあ、ざっくり3:1でいいんだろうなと思い、目分量で希釈しました。旧うすめ液よりも、途中のエアブラシの詰まりが少ないような気がします。
実はこのうすめ液「改」は、この前のC53で初めて使ったのですけども、その時は希釈割合を勘違いしてブツブツになり大失敗しました。
ナンバープレートはエアブラシではなく、Mr.カラーの缶スプレーでバッと金色に塗りました。エアブラシで金色を吹くと、洗浄の際にいつまでも金粉が出てくるのが嫌になりまして。
メタリック塗料用にエアブラシをもう1本用意できればいいんでしょうが、私はそれほど使いそうにないです。
面相筆で凹みの部分にタミヤカラー(アクリル)のフラットブラックを塗り、軽く乾いてから、凸部を先の尖った細い綿棒に少し水を付けてふき取りました。
2〜3回繰り返すときれいにできました。凸部をあまりごしごし擦ると、金色が剥がれてくることがあるので注意です。
このほか先に黒を塗り、スタンプのように凸部に金色を載せる方法もありますが、私はどうにも苦手でして、こういう凹版方式にしています。昔、GMの客車のナンバーが凸モールドだった時、白をスタンプしようとしてうまくいったためしがないんですヨ。まあ、へたくそなんですよね。
このキットで一番興味のあったところです。
車輪と従台車は1つのランナーにモールドされています。このうち車輪を2個と、従台車を1個使います。残りは予備です。
車輪はパイプ状の補助材を付けたままランナーから切り離します。
説明書には「この位置でランナーからカット」と指示がありますが、私の老眼では小さな図がよく見えず、600%まで拡大してようやく理解しました(笑)。
要するに車輪にパイプ状の補助材本体がちゃんと残るようにカットすればいいようです。というわけでニッパーでランナーとの継ぎ目あたりをブチッと切りました。
残したパイプ状の補助材をガイドにして、初回サービスのΦ0.98mmドリルを通し、車輪中心の穴を垂直に整えます。
(初回サービスがないときは普通のΦ1.0mmドリルでも大丈夫)
パイプ状の補助材はドリルを垂直に通しやすくするためのものなので、車輪中心の穴を整えたあとはカットしてしまいます。
それでも厳密に垂直にするのはなかなか難しいと思いますが、まあ細かいことは気にせずにいきます。
ドリルを通したら、パイプ状の補助材はもう不要なので、ニッパーでおおまかにカットしました。雑すぎるゾこりゃ。
そこを平らにするために、お皿状の治具が付属しています。
平ヤスリをかけて、切り口を治具のフチあたりまで平らに削っていきます。少し治具が削れるくらいでよいそうです。
治具が少し削れるところまでは来ましたが、中心の軸周りにはボツボツの切りの残しがまだあって、まだ十分ではないようです。
この中心の凸凹が、従台車の軸受けに引っかからないようにするための作業だと思うので、気にせずこのあとゴリゴリとヤスリをかけて平らにしました。
治具を使わずに直接手で車輪を持ってヤスリ掛けしてもいいのでは、と思えますが、車輪がとても小さいので直接には持ちにくかったです。少しでも安定して保持できるようにという配慮なのでしょう。
付属のシャフトの先端の角をヤスリで少し落とし、車輪に刺し通しました。
最初に0.98mmドリルでさらっていましたが、きつくて入らず、再度手持ちで何度もドリルを回して調整しました。これまでの垂直化の努力もどこかに行ってしまい(笑)。
シャフトをヤットコで挟んで、少しずつ車輪を差し込んでいきました。
なお余ったシャフトは最後に針金用のニッパーでカットしました。プラモデル用のニッパーの中には、用途的に非常に刃が薄くて弱いものもあるので、そういうのはシャフトのカットには使わないほうがいいかもしれません。金属エッチングキットのカットに使ったら、完成までもたなかったこともありました。
最終的には左右の車輪の外側間隔が約11.2mmになればよいそうなので、そのへんを目安に差し込みました。
このあと、先に従台車を差し込んでから、反対側の車輪を差し込みます。
反対側の車輪がまたけっこうきつく、私は万力で圧入しました。中心の穴はドリルがよく通るまで十分整えておいたほうが良さそうです。1.0mmドリルを使うときはその限りではないかもしれません。
きつい代わり、接着剤を使わずに固定できています。
矢印の部分が引っかからずにスムーズに回ればよいわけです。
車輪の左右間隔は約11.2mmになるよう自分で調整します。そこには治具は関与しません。
車輪はとても軽く回り、ポイント通過など走行も問題ありませんでした。私のレイアウトはKATOの旧固定式ポイントなので、あまり参考にならないかもしれません。ちなみにこのキットは旧ポイントでも通電途絶を起こすことなく、スローでそのまま通過しました。走りっぷりがとても安定しているんですよ。
あとは全体の組み立てです。
(1)動力ユニットの後部に従台車をはめ込んでから、(2)床板を重ね、(3)ネジ留めしました。
床板の上部には、バックプレートを両面テープで貼り付けました。
動力ユニット前方に前端梁を重ね、前後のネジでボイラーに固定しました。
最後に別途用意した後部カプラーを固定すれば完成です。私はマグネ・マティックカプラーNo.2001(短)の取り付け穴を1.5mmドリルで拡大し、1.4mmネジで留めました。
注: No.2001カプラーの取り付けネジは標準で1.2mmですが、トーマモデルワークスの場合は取り付け穴を1.4mmとし、カプラー側の穴を拡大して1.4mmネジで留めるものが多いようです。 以前どこかでその説明を見た覚えがあるのですが、ちょっと見つけられなかったのでだんだん自信がなくなってきました。
さあ試運転と思ったら、先客2機が線路を適当に占有していまして、まず彼らを片付けなくては…。
この3両の機関車はすべて3Dプリンターによる光造形で作られています。
実機についてはあまり詳しいことがわかりませんので、基本的な塗装のみ行っています。
ずいぶんあっさりできたので、何か忘れていないか不安になったりします。
成型に歪みがあると、前方アングルでは目立ちやすいのですが、このキットは歪みが少なくしっかり造形されていました。メーカーの造形ノウハウのおかげと思います。
マグネ・マティックカプラーNo.2001はしばらく国内で品切れでしたけども、最近ようやく再出荷されて一息つけました。
向こうがライフ・ライク製(アリイ販売)のボールドウィンのサドルタンクです。
手前が今回の南薩ボールドウィン6号機です。このページの写真は異常拡大ばかりですが、全長は端梁間で5センチ程度の小さな模型です。
自分は普段あまり使わない機関車だと思いますが、簡単なキットの組み立てが好きなので買ってみました。あと初回サービスの0.98mmドリルが欲しかった(笑)。短時間で組み立てられますが、部品は少なくても色々な工程があって面白いと思います。
それとやっぱりトーマモデルワークスのNゲージ模型の強みは動力ユニットですね。こんなに小さい機関車がちゃんと安定して自走する、形だけではない点が大きな特長だと思います。