Nゲージ蒸気機関車>蒸機の工作>C55流線形(3Dプリンター)
2018.9.17/2023.3.12
少し今までと違う形のものを作りたいと思い、KATOのC55の動力を使用して、C55流線形を作りました。
久しぶりに1/140蒸機です。低価格プリンターのAnycubic Photonで出力しました。
[KATO旧動力] トミックス動力
私が持っているC55流線形の模型はすべて20号機なので(明らかにプロトタイプが違うものでも20号機のナンバーを付けていまして…)、少し形の違う後期型にしました。
側面に縁取りの飾り帯がないものです。簡易型の3Dプリンターでは、微妙に斜めになっている銀帯をすっきり整えるのが難しいので、帯がないのは好都合だと思いました。
要するに難しいことを避けております。
全体的には34号機をイメージしました。しかし各部のディテールは、手に入った別々の機体の資料のつぎはぎです。
わからなかった部分はとりあえず、作りやすい形に作っておきました。
鉄板のつなぎ目やフタのエッジを、低価格3Dプリンター向きにどう作ればよいかは、例えば凹表現・凸表現などいくつか作り分けてテストしました。最終的にはいくつかの表現が混じっています。
エンジンとテンダーはそれぞれ一体にしました。あまり寸法が正しく出ないので、分割すると組み立て時の調整が難しいからです。失敗したり壊れたりしても、気楽に再出力できることを重視しました。
別付けのパーツは前のカプラー(KATO製)とエアホース(トミックス製)のみです。
エンジン部の動力ユニットは、ダイキャストの切削なしに使いました。
キャブの妻板が大きく後ろに傾いているため、モーターの前端が当たりそうです。肉厚やボディーの前後位置を調整して収めました。
ボディーの裏側前方と、火室の内側あたりに、下廻りを取り付ける突起を付けておきました。
動力ユニットの前端をはめ込み、後部を火室内側にパチンとはめれば固定できます。
しかし最初はよくても、造形後1〜2日経つと、ボディー上部の収縮のために裾が外側に開いてしまい、はめ合いがゆるゆるになってしまいます。ドライヤーで温めて修正したりもしました。
ボディー内側は肉厚のため狭いので(ラフに扱えるよう肉厚は1mmを確保しました…実際は肥厚のため1.2mmくらいになっています)、シリンダーやバルブギヤーが収まりません。
いずれも外側からボディーに収まるまで削りました。バルブスピンドルガイドやモーションプレートは外側が削り取られ、合併テコや加減リンクが落ちるので、とりあえず薄い紙を貼って落ちないようにしています。→とりあえずのつもりが、結局最後までそのまま使っています。
従台車の上部のバネも、ボディーの裾カバーに当たるのでカットしました。
さらに、ピストン棒やスライドバーの穴は内側に広げて寄せ、モーションプレートの取り付け座も少し短くカットして内側に寄せました。
テスト用の仮ボディーにはめ込んで確認しているところです。R280は割と普通に通過しました。R249も危なっかしい感じはありますが、脱線や車輪浮きなしに通過しているのでよしとしました。
結果がどうなるかわからないところが多々あり、少しずつテストしていきました。
出力寸法(主に厚み)は各部だいたい 0.2〜0.5mm 程度、場合によってはそれ以上大きくなります。ある程度大雑把になるのは許します…要するにふだんの私の工作だこりゃ(笑)。
一部のディテールのみ付け、具合を見るために仮出力したものです。
側板の途中に、縦縞が規則的に入っています。C55はこの部分で車体の幅が徐々に狭くなり、斜めになっていることと関係があります。
このプリンターは1層のパターンを液晶画面に映し出して露光する方式なので、斜めの部分にドットのガタガタ(約0.047mm四方)ができます。それが規則的な縦線となって現れます。
輪郭にそってレーザーをなぞるように照射する方式のプリンター(おもに業務用)では、このようなガタガタは起きにくいですが、低価格の光造形プリンターはたいてい液晶方式なのでやむをえません。前方の車幅を絞らなければ防げますが、まあ、絞ってみたかったので(笑)このままです。
なお、先台車などの可動範囲を考慮し、絞り方は実物よりも緩やかにしました。
積層ピッチをどのくらいに設定するかも悩みどころです。
このプリンター(Anycubic Photon)で、速さ・平滑度・ディテール再現のバランスが最もよいのは0.05mm前後かと思いますが、曲面部分はもっと細かいほうがきれいに出ることがあります。その代わり垂直な平面に積層痕が目立つようになるというデメリットもあります。
0.05mm、0.0375mm、0.025mmの3つで試しました。0.0375mmは積極的に選ぶ理由がなかったので、両端が残りました。
フロントの3Dデータです。ディテールは正しくないところがあります。
積層ピッチ0.05mmで出力した超拡大です。
平面のドットピッチ(0.047mm)と、積層ピッチが大体等しくなっています。
こんな拡大では粗く見えますが、実際には幅2センチありませんから実用上はまずまずです。特につや消しで塗装すればかなり落ち着きます。
ただ、いつもつや消しで逃げているので、今回は同じつや消しでも、少しツヤを加えたいと考えています。
半分の積層ピッチ0.025mmで出力した超拡大です。
デッキ部の丸みの部分は、積層が細かい分滑らかになっており、テールライトの枠もきれいに出ています。
しかし、煙室扉あたりに定期的に出ている横縞が、0.05mmのときよりも目立つような気がします。
この横線が発生する理由は、先ほどの車幅の絞りと同じです。角度によってドットのガタガタが発生するためです。
もし、面がちょうど斜め45度になるようにモデルをセットし、積層ピッチを液晶ドットと等しい0.047mm(本当は0.04725mmかもしれません)にすると、余りが出ないので一定の平滑度になります。
その代わり、ちょうど45度にならなかった他の箇所の面に縞模様が出ます。まあ、どこかであきらめることになるかと思います。
積層ピッチ0.05mmのときは、これ以外の積層の線も目立つので、全体として埋もれ、目立たなかったのではないかと思います(個人の見解です)。
こちらはキャブの屋根です。くるんとした丸みの強いものにしました(有名なトップバッターの20号機は、あまり丸みがないように感じます)。
こういう連続的に傾きが変わっていく面は、積層ピッチが細かいほうがきれいに出ることが多いです。
積層ピッチ0.05mmです。全体の中では大したことはありませんが、モアレのような模様が出ています。
積層ピッチ0.025mmです。0.05mmに比べれば模様は目立ちません。こちらのほうがいいですかね…。
今度はテンダーです。垂直な平面の壁です。本当はうまく傾けて、垂直な壁ができないようにしたいのですが、サポート材が付く都合上、発生するのはやむをえません。
こちらは積層ピッチ0.05mmです。数か所、目立つ線もありますが、低価格プリンターとしてはまずまずです。
積層ピッチ0.025mmです。
積層が細かい分、層の乱れによる積層痕も多いです。これは、0.05mmのほうが良さそうです。
なおこの程度なら、つや消し黒で塗ればだいぶ目立たなくなります。
というわけで、エンジン部は0.025mm、テンダーは0.05mmとしました。
ところで、テンダーの給水口ふたのあたりに、必ず少し強めの線が出て、そのあたりの壁も微妙に歪んでいることがわかります。
これは内部構造に関係があります。
斜めに造形していくと、ちょうどこのあたりで内部に壁が出現し、外壁の厚さが変わったり、急に妻板がなくなって外部に開放されたりします。
壁の厚みが一様でなくなると、そこで紫外線硬化樹脂の膨張量などに変化が生じ、表側に影響が出てしまいます(個人見解)。
内側に壁ができたり、壁の厚さが変わるときは、間に丸みを入れて滑らかにつなぐなども試しましたが、厚みが最終的に変わるのは同じなので、解消することはできないようでした。
等々、あまり色々なテストばかりしていても完成しないので、いったん形にいたしました。
紫外線硬化方式なので経年劣化もあると思いますが、やはり、プリントしなおせばいいので平気です。データさえあれば、より高精度なプリンターで出力してもらうことも可能です。
もとのC55です。
(拡大写真)
3Dプリンターで上廻りを作ったC55流線形(後期)です。
(拡大写真)
ただ出力するだけでは、丁寧に作られた金属やプラスチック工作のようにきれいなものにはなりませんが、工作の上手下手が出ないため気軽に取り組めます。
たとえ変なところがあっても、データをいじって再プリントすれば済む点でも気楽です。
簡易なプリンターはあまり寸法がぴったり出ないので、なるべく分割を減らしてパーツ数を絞り、単純な構造にしておけば、再プリントの際も簡単だと思います。
―実は初回掲載後、どうしても気になる部分が出てきまして、一度出力し直しました。完成写真も差し替えてあります。
基本的な形は次のように作りました。私は3D CADをきちんと学んだことがなく、進め方は正しくないと思いますが参考までにメモいたします。
一見、C55流線形は捉えどころのない形ですが、よく見ると意外に単純な形です。これまでの蒸気機関車の作り方と特に違いはありませんでした。
使用した3D CADは、Autodesk Fusion360 です。
ボイラーは断面を描いて押し出しました。
ボイラー本体と、その外皮を別々にしています。それぞれの側面形状が異なるためです。
ボイラー本体の側面図をスケッチし、ボイラー本体に向けて押し出しカットし、先頭の形状を作りました。
先ほど作った外皮はカットされないよう、非表示にしてあります。
同じ要領で、ボイラー外皮の側面図をスケッチし、押し出しカットしました。
煙突デフをスケッチして押し出し、それぞれの位置に移動・コピーしました。
…とか何とかで煙室付近を作っていきました。
ランボード(?)をスケッチして押し出しました。
まだデフがないので、何となくC53流線形(43号機)のような感じです。
デフをスケッチして押し出し、所定の位置に移動・ミラーコピーしました。デフが付くとC55流線形っぽくなります。
と、最初は私の頭の中には手順がすらすら浮かんで来ず、ノートに鉛筆で色々な図を描きながら、考え込む場面がしばしばありました。難しく考えすぎでした。
あんまり、頭の回転がよくないんですヨ…。
図面はおもに、「蒸気機関車スタイルブック(機芸出版社・新版)」のほか、「日本国有鉄道 蒸気機関車設計図面集」(原書房)のエンジン側の組立図、 そして「国鉄蒸機の装備とその表情(下)」(ネコ・パブリッシング)のテンダー組立図を参考にしました。1/140で3Dプリンター出力するにあたり、うまく出力されないディテールや強度が不足する箇所は、適宜自分の考えで変更しました。
「蒸気機関車スタイルブック」の図面は、鉄道模型趣味1974年7月号の折込図面だと思います。同誌によると、当時公表されていた組立図では車幅のすぼまりの起点と長さに差があるため、実物写真により修正したとあります。 確かに、「日本国有鉄道 蒸気機関車設計図面集」の組立図のほうが短いスパンで急激にすぼまっているようです。このあたり、実物に何タイプかあったのかは調べきれませんでした。
なお「〜設計図面集」の組立図はハンドレールが低いタイプです。「蒸気機関車スタイルブック」の図はハンドレールが高く、側面カバーの高さが均一な20号機をもとにしているようです。
今までに色々な機関車の図面が発表されていますが、元の組立図から読み取れない形状や寸法もありますから、そこを図面の作成者様の調査やお考え・もしくは感覚値や感性で埋め、模型用の図面として成立させているものと思います。 まさに図面そのものがご作品のようなものであると感じ入りました。
[KATO旧動力] トミックス動力