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C57 4次型(新)の組み立て

2009年末に発売されたワールド工芸のC57 4次型(新)は、バルブギヤのつくりが少し変わり、今まで固定式だった加減リンクが動くようになりました。 Nゲージは下廻りの縮尺が上廻りに比べて大きく、フルワーキングのバルブギヤを作ろうとすると厚みが出て外観に影響が出ます。 ワールド工芸はそのあたりの外観を重視しているため、各種ロッドが薄く作られており、可動部分の寸法は結構シビアです。

2010.1.23


車体組み立て〜塗装

パッケージ

C57(4次型)は、2000年に旧系列のキットで一度発売されています。
今回の4次型九州タイプはフルリニューアル後の最新製品です。旧製品よりもランボードが少し狭くなっており、動力もユーザーによる組み立てとなっています。

キャブ窓のひさし

組み立て経過省略(ひどい!)…新系列のC55とほとんど同じ要領です。申し訳ございません。

キャブ側面窓のひさしの説明がありませんが、D1-15を使いました。

似たような部品が複数の板にあり、間違えて使うとハマることがあります。説明書6ページの部品図を見て、×印のついているものは切り離し、別に保管しておくとよいと思います。 切り離した時点で間違えている可能性もあるので、捨てないほうがよいです。

メーカーサイトに記載がありましたが、テンダー車軸に用いるワッシャM-6は、直径ミスにより使えません。サービスセンターに連絡すれば正しい部品を送っていただけます。その正体は、内径2.4mm、外径4mmくらいのワッシャでした。
なお外箱ステッカーの端に青丸が入っている製品には、初めから修正済みの部品が入っているそうです。

ハンドレールと空気作用管

非公式側に付く通風管とハンドレールは、逆の番号で図示されているところがあります。
合わせてみるとすぐわかりますが左が正解だと思います(上がF-17、下がF-18)。

F-17の後方は、キャブのk穴に入るような図示もありますが、部品の長さはATS発電機のあたりで終わるので気にしなくてもよいと思います。

※左の作図はテキトーなので、実際にはこの段階で付いている部品はほかにもあります。

塗装終了

組立と塗装が終わったところです。特に難しいところはありませんでしたが、説明書には非公式側の写真がまったくないので、よくわからなかった部分もありました。

今までのキットはボイラーが前後2分割のため、つなぎ目で前後が「への字」などになりやすかったのですが、今回のボイラーは全長にわたる1つの部品になっています(後部のみ、その上にもう1枚を重ねます)。そのため気分的に楽です。
ただし、後部の張り重ねが左右どちらかにずれる恐れはあるので、ずれたままランボードを合わせて固定すると、ランボードがねじれてしまいます。これは今までと同じなので十分注意が必要です。

下廻り組み立て

今回特に変わったところです。ぶっつけ本番で組みながら撮影しております。
手順は説明書とまったく同じです。

動輪の取り付け

動輪をはめてブレーキシュー(動輪押さえ板)を取り付け、サイドロッドを取り付けたところです。ここまでは今までのキットと同じです。

動輪の軸受けはとても大切なので、形をおかしくしないように丁寧にヤスって動輪が軽く回るようにします。さらに軸受けに鉛筆を塗りこんでおきました。

前後に軽く転がるかテストしますが、第2動輪ピンがまだなので、そこが引っかかることはあります。

動輪のタイヤと輪心がゆるくて、タイヤだけ空回りするときは、内側から少量の瞬間接着剤などで固定しておいたほうがよいと思います。

ラジアスロッドの仮止め

ラジアスロッドの穴には、あらかじめ1.0mmタップでネジが切られています(たまに、こういうサービスがされている部分があります)。
このネジは今までのキットでは外側から留めましたが、今回は内側から留めます。最初はあまりきつく留めずに、ラジアスロッドがネジを支点に上下できるようにしておきます。

コンビネーションレバーを付ける

コンビネーションレバーを、ラジアスロッド先端の角穴に引っ掛けて、ぶら下げておきます。

加減リンクの取り付け

加減リンクを、モーションプレートの裏側に下から差し込んで、上側に出します。隙間が狭いので通しにくいですが、斜めにしたりして何とか入れました。

次に加減リンクの裏側にある中心ピンを、ラジアスロッドの穴にはめます。最後にラジアスロッドを下側に動かして、加減リンクのピンが溝に収まるようにします。

ラジアスロッド先端をはめる

このとき、ラジアスロッドの先端は少し車体内側にたわませて、コンビネーションレバーと一緒にバルブスピンドルガイドの裏側にはめ込みます。
それから仮止めしていたラジアスロッドのネジをきちんと締めます。

回転テスト

一度リターンクランクを第2動輪に留めて、回転テストしてみます。
リターンクランクは少々ゆるかったので、先端をヤットコで少し平たく潰しました。以前は斜めにニッパーで傷を付ける方法が紹介されていましたが、手加減を誤ると切断してしまうので注意が必要です。

コンビネーションレバーは前後に振り子状に動くので、バルブスピンドルガイドの裏側(矢印の部分)に少し余裕が必要です。

ピストン棒切断

クロスヘッドとメインロッドを取り付けます。

クロスヘッドに付いているピストン棒は、付け根から7.5mmぐらいで切断することとされています。 しかし、実際には組み立ての誤差で不安なほどギリギリだったこともあり、切断のときに目盛をひとつ読み違えるというポカをやったこともあるので、少し長めに切って整えていきました。

なお、ピストン棒の途中に意味深なスジがありますが、これは過去の遺産なので無視します。間違えてそこで切るともうおしまいです。

メインロッドの取り付け

ピストン棒は、動きのガタによって色々な角度でシリンダーの穴に出入りするので、穴の直径に余裕がないと回転がしぶくなります。よってピストン棒が軽く出入りするようにヤスリで整えておきます。穴を大きくしすぎると、どういう支障が出るのかは、まだ経験がありません。

ピストン棒をまっすぐに修正して紙ヤスリで磨き、スライドバーとクロスヘッドの内側も磨いておきます。
メインロッドを下側にしてクロスヘッドを引っ掛けますが、取り付け済みのコンビネーションレバーが邪魔になって面倒でした。そのあとメインロッドを後方に回して第2動輪の穴に重ね、上からリターンクランクで留めます。

ピストン棒の調整

まずは、クロスヘッドが一番後方に来るように動輪を回転させ、シリンダーの中を覗き込んで、ピストン棒の余りがどのくらいあるかを見ておきます(矢印)。各部にガタがあるので、ちょっと揺すってみると、もっと短くなることもあります。

次に、クロスヘッドが一番前方に来るように動輪を回転させ、ピストン棒がつっかえるようなら先端から少し削りますが、先ほど確認した長さまでが限度です。それ以上削るとピストン棒が抜け落ちて走れなくなります。

回転の調整

滑らかに回転するように調整します。

  • 第1動輪ピンがメインロッドに干渉することが多いので、メインロッドを少し外側に曲げて、ピンをよけるようにしています。
  • あまり外側に曲げると、加減リンクと干渉しそうですが、回転の様子を見ると普通はぎりぎりで互いにすり抜けるようです。
  • メインロッドとの干渉を嫌って第1動輪ピンを差し込みすぎると、特にカーブなどで回転が渋くなるので、若干の余裕をもたせます。
  • ほか、青い矢印の部分(バルブスピンドルガイドとコンビネーションレバー、ピストン棒の穴、リターンクランクの深さ)にも余裕を持たせます。
片側完成

片側が完成したところです。
加減リンクが動かなかった旧キットに比べて、回転が渋くなることはありませんでした。とてもスムーズに回転します。

曲線レールの上も、色々な方向から転がしてみて、1度も引っかからないようになってから(あくまで目標ですが…)、反対側も組み立てます。テスト段階で引っかかるようだと、実際のレイアウトでは使い物にならないことがあります(でも、逆もあるんですよね。条件が違うので)。

断言はしませんが、この段階で回転が渋いとき、馴染ませようとして無理に回し続けても、スムーズになることはまずないと思います。かえって今まで持ちこたえていた部分がついにズレたり、緩んだり、歪んだりして、どんどん破綻していくことがあります。原因を一つずつ切り分けていって、引っかかる原因を全部突き止めたほうがよいと思います。

最終組み込み

上廻りと合体

上廻りを仮に固定して、車体が傾いていないか、回転がスムーズかをチェックします。

  • エアータンクとリターンクランクが干渉することがありますが、このC57の場合はほとんどないか、あっても軽微だと思います。
  • コンプレッサーが内側に寄っていて、第3動輪ピンと干渉することはありえます。
  • 私の作例では加減リンクのバリを取るのが不十分で、写真の部分が干渉していました。
従台車に車輪が入らない

さて…。

従台車に車輪をはめようとしたら、軸受けの幅(赤い矢印)が広くて入りません。仕方なく車軸の付け根の輪心ブッシュを削り取りましたが、それでも到底入りません。

そういえばエッチング板に同じ形の部品が2つあったな、間違えたかなと思って番号を確かめましたが、合っています。しかし説明書の図では、軸受けの部分がもう少し内側から折れ曲がっていて、わずかに形が違います。

使わないほうの従台車

念のため使わないほうの部品(D5板)を見てみると、こちらが説明書のとおりの形です。軸受けが板厚を考慮して、少し内側から折り曲げる形になっています。

ひょっとしてこちらが正解…?しかしすでにもう一方の部品に軸箱もハンダ付けして組み立て、塗装も終えているので、今の時点でこちらの部品を試すのは大変です。やってみてこちらが正しいという確証もありません。

軸受け作り直し

というわけで、使えない軸受けをちぎり取り、プラ板で安直に軸受けを作りました。ここはそんなに精度が必要な部分ではないので、小学生的な工作で大丈夫だと思います。

…ストローと竹ひご、牛乳びんのふたで自動車を作るなんていう工作がよくありましたね。廃れて久しいかもしれませんが。その延長です。

動力

動力ユニット

動力ユニットは今までと同様の作り方です。

1枚の車輪座にギヤが3個と車軸が2個、都合5個の回転軸が付きます。ギヤ軸すべてを正しく平行にするのは普通の道具と工作では無理なので、細かい誤差が積み重なって動きに影響することがあります。
車軸はイコライザー構造なので、ある程度上下に傾くような動きをするのが正解です。この仕掛けのため駆動軸を傷めずに分解することは難しく、分解のたびに駆動軸を使い捨てるという考えになっています。

今回は初めてテンダー車輪にも輪心パーツが付きました。車輪の圧入のときに一緒に重ねて圧入できます。輪心の裏表を間違えないようにしないと先輩のようなことになりますが、最終的には台車枠に隠れてほとんど見えないので影響はないと思います。

なお後部の配線が高すぎると、ウェイトに触れてショートします。

完成

南のカマと北のカマです。

C57 4次型九州タイプ(ワールド工芸) C57 4次型 ワールド工芸 C57 4次型九州タイプ(ワールド工芸)
C57 135(トミックス) C57135 トミックス C57 135(トミックス)

今回の4次型は、196号機用の付属パーツでそのまま組み立てました。196号機のデフは、C57 4次型の標準デフの上側を利用して作ったような形をしています。
キャブと従台車の隙間をほとんど感じません。末期の姿のため、4次型の特徴であるランボード屈曲部が撤去されているので、オリジナルとは少し感じが違います。

4次型は実質的には別形式とよく言われますが、それでもこれはやはりC57だなと、組み立てていて感じました。

C57 4次型 前方から

C57 4次型 後方から

写真に撮るとやっぱり、工作の拙いところが目立ってしまい、恥ずかしく思います。この段階で直せるところもあれば、直せないところもあります。

今回はテンダーも少し変わっています。従来は、テンダー側面の大部分はエッチングで少し薄くなっており、上部のフチのみ元の板厚で浮き出している表現でした。
今回はテンダー側面は薄くなっていません。そのため丈夫で形もしっかりしていますが、全体的に同じ板厚なので、フチはスジ彫り的に表現されています。細い帯材を上からハンダ付けしようかと思いましたが、面倒になってやめました(客車キットのシル・ヘッダーをハンダ付けするようなイメージ…)。

加減リンクのつくりは、やはり今回のほうが断然いいです。従来、固定された加減リンクの先端をエキセントリックロッドが往復するのがワールド工芸の特徴で、色々な事情からある程度は納得していましたが、新しいものを見てしまうと(プラ製蒸機では当たり前ですが)その差は大きいです。
当初、下廻りにトミックスのC57を使って組み立てようと思っていたのですが、加減リンクまわりが新しくなると発表されたため、今回はまずそのまま組んでみました。トミックスに比べて動輪が大きくて見映えがするので、これを使わないのはもったいなかったというのもあります。


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