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C58(3Dプリンター)

3Dプリンターで出力したC58

2020.9.15

先日ご紹介した、DMM.makeでのアクリル(HiReso/HiPerf)βテスト造形 のHiReso樹脂は、柔らかすぎて造形できないケースがあったようで、先月8月17日より新しい樹脂に変更されました。
どんなものだろうと、またテスト注文してみました。まだNゲージサイズで出力したことがなかったC58をテストデータに使いました。

造形結果は、確かに少し硬くなったようです。まだ柔らかい印象ですが、全体の形はデータどおりにできました。サポートが付かない天面の平滑さは従来機以上です。しかし細かいディテールは造形後に欠損しやすく感じ、扱いに神経を使いました。思い切って簡略化し、丈夫にデータを作ったほうがよいように思いました。

なんと、この新しい素材も本日9月15日で中止となってしまい、アクリル(HiPerf/HiReso)のβテストは本運用に移行せず終わることになってしまいました。HD3500Maxの代替としてはうまくいかなかったようです。何だか意味の薄い記事になりましたけど、作った物が消えてしまうわけではないので掲載します。


構造

3Dデータ

データは縮尺1/80で作ってあったため、倍率を機械的に変更して1/150にしました。他の作業は、下廻りに合わせるための修正です。

下廻りとテンダーにはマイクロエースのC58を使いました。

ボイラー

ボイラー・煙室・キャブは一体化しました。

元のモーターは入りませんので撤去し、今は安くなったコアレスモーターを代わりに使うことにしました。 色々売られていますが、極端な低価格品は鉄道模型に適しているのかわからなかったので、トーマモデルワークスの12Vコアレス0716Sを使いました。直径7mm、長さ16.5mmです。

他のパーツ

種車のシリンダーブロックは高さのほかに車幅方向も広く、1/150幅の車体からはみ出してしまうので、なるべく狭めて新たに作りました。

従台車も作り直しました。種車では従輪が後ろに寄っているため、いくらか前に寄せました。
分配弁などのキャブ下ディテールも従台車側に付けました。この従台車はカーブでもそれほど首を振らないので、それでOKと考えました。

一番右の部品はコアレスモーターを取り付けるホルダーです。

動力部の削る部分

元の動力ユニットは、新しいボイラーに合わせて削る必要があります。
3D CAD上でボイラーと動力ユニットの論理積をとり、削る箇所を調べました。

まあ、そこそこ削る必要がありますね…。

ボディーをかぶせた様子

正確に削れれば、造形後のボイラーがギリギリ収まるはずですが、あまり一度でうまくいったことはありません。

先輪はワールド工芸のスポーク車輪を使います。元の位置だとカーブで排障器にフランジが引っかかるので、少し後ろに下げる必要がありそうです(図はそうする前です)。

マイクロエースのC58

犠牲にする種車のC58を中古で買いました。
動力はごく低速で「ぐっ、ぐっ、」というむらが少々ありましたが、その速度を過ぎれば普通なので、まずまず使えそうです。中古品は選べるほど数が出ていません。

さて、せっかく買いましたが、削ります。

モーター取り付けの検討

モーターはキャブ内に何とか収まります。ただ後部の配線には余裕がないので、根元から急に曲がったりして取れる不安はあります。

難儀したのはウォームの移植でした。何度かやったことがあるので軽く考えていましたが、ウォームが元のモーターから取れません。ヤットコ2本と元のモーターをボロボロにし、30分がかりで何とかギヤプーラーをセットできる隙間は開けました。 が、ハンドルを回すとギヤプーラーのほうが負けて折れました。道具を壊すような作業の仕方はよくないので、ちょっと後味は悪いです。

最終的に外したウォームの内径は1.5mmで、使うコアレスモーターのシャフト径は1mmのため、内径1mm・外径1.4mmの真鍮パイプで隙間を埋めました。

今回は3Dプリントサービスの利用なので、送付するSTL形式データにエラーがあると作業してもらえないことがあります。久々に修正の手間がかかりました。全然取れないエラーがあって、複数の修復ソフトをハシゴしました。
最後はうやむやのうちに直りました。同じ部品でも、配置を変えただけでエラーが出なくなることがありまして、相変わらず合点がいきません。

βテストで使われる機材は、ProJet MJP5600というインクジェット式(マテリアルジェット式)3Dプリンターです。1層ごとにUV樹脂の素材とワックスサポート材が吹き付けられます。 比較的正確な寸法で造形されますが、この方式は樹脂とサポート材の界面が滲んで不明瞭になる特徴があり、また層間結着がやや弱いようです(との私の認識)。

動力ユニットの加工

注文した造形物が出来上がってくるまでに、動力ユニットの切削を済ませました。
手持ちのヤスリがけで、3時間ぐらいで大体終えることができました。あとは現物合わせで調整です。

組み立て

造形されたボディー

造形物が出来上がりました。7,000円少々です。新しい樹脂は黒なので、サポート材で荒れたところ(乱反射で白く見える)がよくわかります。 ザラザラの程度は、以前何度かご紹介したProjet 3500HDMaxと同様に見えました。

嬉しかったのは、デフ側面やキャブ側面が平滑だったことです。これらが天面になるよう、ボイラー部は横倒しで造形されたように見えます。作業現場で判断してくださったのなら恐縮してしまいます。無条件にZ軸アップで造形されるものと思っていました。

それよりドロダメがなくなっているのが謎(笑)。元のデータにはありますが、注文直前のエラー自動修復の際に消えたようです。まあ、いいや(いやいいのか…?)。

このβテスト樹脂で困ったのは、細かい部分が破損・脱落しやすいことで、特に積層に沿って欠けることが頻発しました。
すでにキャブやデフの手すりなど細いところはいくつか取れていましたし、扱っているうちに逆止弁、汽笛、ステップ、カプラー解放テコの一部などがどんどん欠けていきました。もっと太く作るか、簡略化しないとだめだったということですね。 瞬間接着剤を浸み込ませて、細いところは全体的に補強しました。ただ、紙や木と違い、素材の内部に浸みこんでくれるわけではないので、効果は限られていると思います。やらないよりはましな印象です。

モーターの取り付け

ダイキャストブロックにはハンダ付けが効かないので、リード線式のモーターは配線をどうするかいつも困ります。 今回はリード線の先に真鍮線をハンダ付けし、モーターホルダーの側面に溝を掘り、ダイキャストブロックとの隙間に差し込みました。

従台車の取り付け

従台車はドローバー下のフックにはめて、レールに載せた時に後部が下がらないようにしました。採寸ミスでうまくはまらず、少し削りましたが、前述のように欠けやすい素材なのでハラハラしました。

ドローバーはとりあえず3mmほど切り詰めました。後部のテンダー車輪のあたりに見えるリン青銅板は、ドローバーの切り継ぎ部に当てた補強板です。 テンダーのこのへんは寸法がギリギリで、ドローバーの切り詰めによる影響もあり、あちこちを削って調整しました。

先台車の取り付け

先輪は排障器に当たるため、0.3mm程度後ろにずらしました。

ずらし方には色々考えられますけども、先台車には手をつけず、取り付け部のピンの位置を変えました。 底板に付いていた元のピンはニッパーでカットし、その0.3mm後方に穴を開け、代わりに外径1.4mmの真鍮パイプを立てました。このパイプは、モーターにウォームを取り付けるときに使ったのと同じものです。

下廻り完成

組み立てた下廻りとテンダーです。

誤って公式側のクロスヘッドからピストン棒をへし折ってしまい、こちらだけD51のクロスヘッドに交換しました。元のクロスヘッドはどちらかといえば8620に近い形だったので、まあこれでもいいかと思います。

テンダーの重油タンクは削り取り、木工用ボンドを塗ってモーリンの石炭をふりかけて隠しました。床下のATS車上子は取り去りました。

造形物(βテスト素材)の表面

塗装したボディー

塗装したボディーです(クリックで拡大します)。塗装前の白かったときよりも、本当の造形の具合がわかりやすいと思います。

かなり表面が荒れて見えると思いますが―実際そのとおりですが―、丸いボイラー部など全体がサポートに包埋されていた割に、細かいリベットやボルト表現なども意外と視認できました。

前面

前面は側面に比べ表面が荒れています。ボイラー側面もほとんどサポート材に埋もれていたはずですが、前面のほうが一段不明瞭です。

下地処理はちゃんと行うにしても(これは何もしていません)、ここはパーツを分けて上面を向けたり、別製品のパーツを使ったりするほうがよさそうです。

ランボード

解像度の高い業務用プリンターなので、ランボードの網目も消さずに出力してみました。
写真で拡大すれば網目や点検蓋の存在もわかりますが、私の視認ではただのつや消しにしか見えないのが悲しいところです。この網目はランボード表面から0.05mm浮き出しています。

細かいところを写すため、写真は実物より相当拡大されていますので、かえって印象が伝わりにくければすみません。

完成

3Dプリンターでこうした造形ができることには、現在何の不思議もありませんけども、一応C58のNゲージ模型として完成させました。造形部分は表面未加工です。市販のプラ製品と並べると次のとおりです。

マイクロエース C58


種車としたマイクロエース製品です。
(拡大写真)

3Dプリンター C58


今回作った3Dプリント品です。
上物は楽ですが、動力部の加工には普通の改造と同じ手間がかかります。
(拡大写真)

KATO C58


KATO製品です。登場から30年になります。
(拡大写真)

以下、今回のβテスト造形です。βテスト終了につき、最初で最後のトライになりました。
ただ、もし壊れても自分の3Dプリンターで出し直せばいいです。

C58非公式側
C58前方


ナンバープレートはやえもんデザインの余りで、実機との関係はありません。

C58非公式側後方

ダイキャストブロックを大幅に削り、ウェイトも取ったままなので軽くなっていますが、平坦線で2軸貨車10両程度は普通に牽いているようです。必要なら補重はできます。
ちなみにトーマモデルワークスから買ったコアレスモーターは、特に変わったクセはなく、素直に回る感じで運転しやすかったです。性能評価は私にはわかりませんので感じだけです。
C58と客車

なくなっていたドロダメは、最後にやっぱり作り足しておきました。

C58

Nゲージの量産品のC58は、マイクロエースの新しいバリエーションが3年前に予告されましたし、30年たったKATO製品のリニューアルもあることと思います。SM-5モーターがなくなったので、旧製品の再生産はもうないでしょう…いや、モーターだけ別物に交換すれば再生産も可能でしょうか。旧D51やC11も途中で変更されていましたし。


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