Nゲージ蒸気機関車2022年のメモ>2022.11.25

8620形 58654「SL人吉」(KATO)

58654「SL人吉」

2019年版カタログのコラムのあたりから何となく触れられていた、8620形58654号機と「SL人吉」客車セットが発売されました。
先に8620東北仕様が発売されたので、それをもってあのカタログのコラムは消化されたのかなと思っていましたが、きっちりSL人吉も発売されました。

[1] 2


外観

メーカーの公式サイト等にも詳しく掲載されており、またKATOの8620の完成度の高さについては以前も感想を書いたとおりですので、ここではその8620東北仕様やマイクロエースの「SLあそBOY」と並べてみました。

8620形 東北仕様

8620 東北仕様(KATO)

2020年、新しい感染症で世間が右往左往しているときに突如現れたヒーロー。デフなしや梅小路の8630なんかも期待されているのではと思います(私の想像ですけど)。

8620形 58654「SL人吉」

58654「SL人吉」(KATO)

今回のスター、期待の新人です。
復活後の58654で、現役時代より上下に狭くなった門鉄デフが付いています。模型も大変きれいにできています。

8620形 58654「SLあそBOY」

58654「SLあそBOY」(マイクロエース)

当時の通常の蒸機用モーターで8620形に挑んだマイクロエースが、バリエーションの最後に放った製品。大型の煙突カバーが付いていた時期の姿です。

KATO製品を買うのに先立って、マイクロエースの58654を10年以上ぶり?に動かしたところ、何もメンテせずとも一発で動き出しました。最初は起動電圧は高かったものの、動きはスムーズですぐに馴染みました。
最近始めた方が見ると得体が知れないスタイルかもしれませんが、アリイ製品を見慣れた目には今でも普通に楽しく遊べてちょっと嬉しくなりました。

ただKATO製品とは時空が違うものなので、同一レイアウトには共存しにくいかもしれません。そこは考え方しだい。

以下2点は今回の58654(KATO)です。

非公式側後方から

非公式側前方から

8620の基本のスタイルは前回の東北仕様で確立しており、Nゲージの量産模型としてバッチリな感じです。飾り塗装に関してはロッドの赤の吹き込みがわずかに見られたものの大したことはなく、金色の装飾がきれいで特にランボードの二重線には見とれました(大体自分できれいにできそうもないものには見とれます)。
東北仕様では公式側ランボード下の配管の歪みが物によって目立ちましたが、今回は複数本が連結して並んでいるためか解消気味です。やっぱり部分的には歪んでしまっていますけども。

部分表現ツアー

2006年に発売された、マイクロエースの「SLあそBOY」と各部を比べてみましょう。
プロトタイプとした時期が違い、また各製品の設計条件や制約も大きく異なる中で、どんな工夫がされてきたのかが外観に表れています。
どちらも製品化はすごく大変だっただろうと思います。

KATO前面
KATO
形式入りナンバープレートの書体がいかにも旧規格のローマン書体風になっていて雰囲気がいいですね。白色の細いつかみ棒は東北仕様とは部品構造が違い、ぐらつきは少なくなくなっています。

58654には煙室下(アゴ)のやや深い位置にシンダー除けが付いており、この模型にもあります。東北仕様でも手前の浅い位置にツナギ板が付いていましたが、同じではなくやや奥にあります。

マイクロエース前面
マイクロエース
動力部の都合でボイラーの太さや高さが目いっぱいデフォルメされています。それまで発売されていた8620のシリーズを流用のうえ、特徴的なパーツは新製してまとめられています。
端梁の標識灯のレンズに赤が入っており、実物も赤みが感じられる箇所なのでよいアクセントになっています。

ちなみに先輪の直径はKATOと同じですが、フランジは実物通りデッキの低いKATOのほうがだいぶ低くなっています。

KATO煙室下部
KATO
細いボイラーが第一動輪の上にちゃんと浮いています。この角度では向こうの動輪のスポークまで見えています。
加減リンク上部のカバーは東北仕様とは異なる箱型です。

マイクロエース煙室下部

マイクロエース
ボイラーの下は抜けておらず板でふさがっていますが、当時としては普通の表現でした。裏返しだった先輪輪心も是正されました。
シリンダー脇の「JR」ロゴにも注目。

KATOキャブ
KATO
東北仕様は後ろに延長された屋根でしたがこれは基本サイズです。天窓はスライド式が1個です。
キャブ側面の表記が賑やかですが、窓下の札差は金塗装を容易にするためか、浮き出しモールドではなくなり平面印刷になっています。
車幅の調整の関係で、屋根のカーブの半径・高さも微妙に調整されているかと思いますが、自然にまとめられています。

マイクロエースキャブ

マイクロエース
高いボイラーに合わせて大幅に上下伸長されているため、独特な側面デザインのキャブです。基本は他と共用ですが無線アンテナが追加されています。

キャブ下ステップは省略されているものの、後ろのテンダーのステップには白が入っているあたりが細かいです。

KATOテンダー
KATO
門鉄デフに並んで今の58654の特徴であるかさ上げテンダーが新製されています。既存品を改造して作るにはこれが悩みの種でしたね。
後部のハシゴもカプラー解放テコも浮いており立体感があります。

マイクロエーステンダー

マイクロエース
外形のかさ上げはありませんが重油タンクは増設され、上から見るとそれっぽくなっています。
でもテンダーの高さを実物同様にしても、この模型のキャブの屋根はもっと高いので、落差は埋まらなかったかもしれません。割り切ってよかったのかもですね。

KATO機炭間
KATO
コアレスモーター採用でキャブ後方に空間がありバックプレートもあります。キャブ下のディテールは密度や立体感がちょうどいい感じです。
キャブ後部の手すりは浮いていますが、テンダー前部の手すりは壁とつながっています。浮かせるには微妙に狭かった感じですかね。

マイクロエース機炭間

マイクロエース
KATOのSM-5に似たモーターがキャブ内に入っています。後ろにわずかにはみ出していますが、私は当時の感覚でははみ出しているとは捉えていませんでした。
テンダーの手すりは少々オーバーながら浮いています。

KATO非公式側
KATO
ランボードが一段下がっている位置が、公式側より前寄りにズレている様子が作られています。
こちら側の加減リンクのカバーには金色の装飾が表現されています。時期により装飾には変化があるかと思います。

マイクロエース非公式側

マイクロエース
ランボードは思い切りよく左右対称です。しかし加減リンクのカバーはなぜか公式側よりも前方にズレていまして、加減リンクをカバーできていないのがお茶目です。
…なんて書いていますが、私も模型を自分で作るときに、下廻り流用のため泣く泣くずらしたことはあるんですよ。

以上、何を生かして何に目をつぶるか、前提となっている条件をもとに選択を積み重ねて設計を進められてきたのでしょうね。
メーカーによって、ほぼ手法が定型化していた部分もあるかもしれませんけども。

客車(簡単に)

同時発売の客車から、オハフ50-701をちょっと見てみます。マイクロエース発売の「SLあそBOY」の時点とは外観が大きく異なります。
あまり私は復活列車の客車に注目していないので、特に何か書くことはできませんので並べるだけです。

オハフ50-701 KATO

オハフ50-701「SL人吉」(KATO)

オハフ50-701 マイクロエース

オハフ50-701「SLあそBOY」(マイクロエース)

KATO
KATO
写真は付属のジャンパ栓を付けています。客車間は密自連、編成端はアーノルドカプラーですが、やや機関車との連結間隔が広いように感じます。客車側がボディマウントで首振りの関係なのかもしれません。

マイクロエース
マイクロエース
カプラーは台車マウントのアーノルドタイプです。

KATOの編成には、車内の展示棚照明装置が標準装備されています。結構目立つ面白い仕掛けです。

白色に光っている展示棚ライト

客車を連結した様子です。気のせいか、それぞれにそれぞれがちゃんと似合っているような気がします。
機関車の車高の差は客観的に見てすごいですね。それを克服した製品が世に出るには今までかかったということなのですね。

58654+「SL人吉」(KATO)
「SL人吉」(KATO)

58654+「SLあそBOY」(マイクロエース)
「SLあそBOY」(マイクロエース)

今回の58654には、単品(2028-2)と4両セット(10-1727)がありますが、含まれている機関車とその付属品は同じものです(単品のプラケースが丸ごと入っているわけではありません)。

地域や時期が限られる列車ですから、興味をもつ方もある程度限られるかもしれませんが、現代の技術で製作された58654を熱望されていた方には購入に迷う余地がない製品かと思います。

58654(KATO)

KATOの8620についてと、マイクロエースのSLあそBOYの記事です。それぞれの登場時の感想です。

8620 東北仕様(KATO)
8620+50系「SLあそBOY」 雑な記事…失礼しました


[次ページへ→]

[1] 2

「Nゲージ蒸気機関車」トップページに戻る