Nゲージを始めるには(5)

機関車の構造

車輪から電気を取り入れる

左右のレールに流された電流は、機関車の車輪を通して取り入れられ、モーターに流されます。

機関車の構造

この図は機関車の構造を単純に描いたものです。赤色は前進時のプラスの極性を、青色は前進時のマイナスの極性を示しています。

パワーパックから左右のレールに流された電気は、金属製の車輪に流れます。車輪は左右に分離した金属製の台枠にはめ込まれているので、電気はここを通って最終的にモーターに流れ、機関車を動かします。

左右の車輪と台枠には別々の極性の電流が流れますから、これらが接触するとショートします。ですから、左右の車輪は車軸の部分などで互いに絶縁されています。プラスチック製の中空の車軸に、左右から金属車輪がはめ込まれているものや、車軸と車輪の付け根の部分がリング状のプラスチック材で絶縁されているものなどがあります。また、左右の台枠も、間にプラスチック製のスペーサを挟んで絶縁されています。

D51(SL列車セット)の内部

KATOなど量産メーカーの完成品では、台枠にダイキャストを使用した丈夫な構造になっています。写真はKATOのD51旧製品です。左右の車輪の間に挟まっている箱状の部分がダイキャスト製の台枠です。よく見ると中央に少し隙間があって左右に絶縁されています。写真ではよく見えませんが、モーターの端子は左右の台枠に接触しています。

ライト点灯式の模型では、モーターのほかに電球やLEDの基板も取り付けられています。なお国鉄時代の蒸気機関車はいつも点灯していたわけではないので、模型が非点灯でも特におかしくはありません。

手で転がすことはできない

モーターの軸には、ふつうウォームというらせん状のギヤが使われています。ウォームは、普通の平らな歯車であるウォームホイルに噛み合っています。 ウォームを回すとウォームホイルを回すことができますが、普通のNゲージで使用されているウォームの場合、その逆はできません(始めの絵を見ていただくと、何となくわかると思います)。ですから、Nゲージの機関車(動力車)は、ただ線路に乗せて手で転がして動かすということはできません。車輪を引きずって傷めてしまいます。鉄道模型は色々な意味で、低学年向けの商品ではありません。

メンテナンスが必要です

毎日走らせていると、何日かでレールや車輪の表面に汚れが付いてきて、電気の流れが悪くなります。そのままでは動かなくなりますから、定期的に車輪とレールを掃除する必要があります。

線路は柔らかい布の内側から指を当てて、レール表面をなぞるようにして汚れを拭き取ります。綿棒などを使ってもよいです。車輪も同じようにして拭き取りますが、動輪は回転できないため、その時点で見えている面しか拭けません。1箇所を拭いたら線路に載せ、少し動かして新しい面を出し、何度か繰り返します。

汚れがひどいときは、綿棒に専用クリーナーを少し付けて拭けばきれいになります。KATOからは「ユニクリーナー」、トミックスからは「レールクリーナー」の名前で市販されています。これらを使えば、プラスチック製の車体やギヤを傷める心配はありません。なお、KATOからはギヤ用の潤滑油として「ユニクリーンオイル」というものも発売されていますので、これと間違えないようにしてください。

これで直らなければ、分解して内部のゴミを取り除いたり、軸受けの油や汚れを拭き取ったりする必要がありますが、慣れた人でないと組み立てられなくなりますから、初めのうちは修理扱いでメーカーに依頼することもあるかもしれません。しかし、こういうことでいちいちメーカーに送っていては大変なので、いずれは自分でできるようにならなくてはいけません。

ウエイトで車輪を押し付けている

機関車のウエイト

車体が軽いと、走行中の振動で車輪が浮いてしまい、集電不良や脱線の原因になることがあります。また、駆動輪がレールに強く密着していないと、スリップしてしまい列車を牽けません。そのため、機関車にはウエイト(おもり)が積み込まれていて、車輪をレールにしっかり押し付ける働きをしています。
ウエイトの形や大きさは模型によってまちまちです。最近は、写真のようにしっかりした大きさのウエイトを搭載している模型は減ってきています。

小さいNゲージではウエイトを積んでも不十分なことがあるので、動輪のどれかにゴム製のタイヤをはめ込むことがよく行なわれます。ゴムは電気を通さないので、この場合集電車輪は1つ減ります。また動輪のほか、テンダー車輪などからも集電して性能を上げていることがほとんどです。しかし小型機関車のように、もともと車輪の少ない車両は、どうしても集電のうえで不利になります。

そんなわけで、私は初めての方には、車体が重くテンダー付きの機関車をお勧めすることが多いです。しかし、好きな車両というものがあればそれが一番だと思うので、カタログやメーカーのサイトなどで十分お調べのうえ選んでください。


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