八月の濡れた砂
言わずと知れた故藤田敏八監督の青春映画の記念碑的作品。これが日活最後の作品となりました。これ以降、ご存知のように日活はロマンポルノ路線を突っ走ります。
村野武範が無軌道な青春像を好演。テレサ野田の初々しさも良い。洋上に浮かぶヨットを俯瞰するラストシーンに語りかけるようなせつないまでの石川セリの唄が流れ、当時の若者の胸をキューンと締めつけたものです。その石川セリは井上陽水夫人、でもあのテレサ野田は今何処。戻る
青木義郎
澤田幸男監督「関東幹部会」を観た人だったら絶対に忘れることのできないシーン。ラスト間近、単身渡の兄貴が殴りこみをかけ、幹部の青木義郎を背後から羽交い締めにし、ドスで腹を真一文字に割腹するシーン。いつも憎々しいまでのいやったらしさとしつこさで見事なまでに悪役を演じ切っていた青木氏。その殺され方もまことにあっぱれでした。この人がでてくるだけで、それまではまるで間延びしたパンツのヒモのようにたるんでいたシーンが俄然ひきしまり、画面にただならぬ緊張感をもたらしました。もうこういう悪役はいませんネ。
不思議としかいいようがないのですが、クルセイダーズの音楽、とりわけウェイン・ヘンダーソンのトロンボーンのサウンドが聞こえてきますと、生前の青木義郎氏の堂々とした悪役姿の記憶が甦ってくるのでした。 ほとんどマスコミの口の端にも昇らずひっそりと亡くなった青木義郎氏へ合掌。 戻る
「刺 青」
文豪谷崎潤一郎の短編。「それはまだ人々が愚かという貴い徳を持っていて世の中が今のように激しくきしみあわない時分であった。」この名調子で始まる短編こそは、谷崎氏の最高傑作。そう思います。この作品、谷崎先生の、およそ全ての文学的要素が天こ盛り。このはじめの文章はほとんどそらんじるまでに熟読、しかも何回読んでも面白い。芳醇な和製エロティシズムを満喫できます。時には、ウイルトンフェルダーのオリジナルアルバムを聴きながら読むのも一興か。乙なものです。戻る
ジェロム・レ・バンナ
現在K1最強のファイター。バトル・サイボーグの異名を持つ。その肉体は盛りあがる筋肉の塊です。ゴング前にレフリーの説明を聞きながら対戦相手を睨む視線からは殺意さえ感じるほど。破壊力抜群のパンチは、あの極真の世界王者フィリオをさえマットに沈めました。戻る
「豪快さん」
泉 昌之作。生れた時の第一声が「ダーッ」だったという実に豪快な「豪快さん」の劇画です。戻る
レオン
リュック・ベッソン監督、主演ジャン・レノ。アパートの一室に住む孤独なスナイパーと、同じアパートで家族を警察に惨殺され行き場を無くした一人の少女との出会い。そして少年と少女のようなあどけない恋物語。少女は女スナイパーとして一人立ちしようとし、やがて劇的な結末を迎えます。ロリータのハードボイルド版か。悪徳警部ゲーリーオールドマンもこれまた良い。戻る
ガルシャの首
サム・ペッキンパー監督。ウォーレン・オーツ主演。ドンの娘を孕ませた男ガルシャの首に賞金がかけられ、その首を狙った殺し屋たちの争奪戦かはるかメキシコの地で繰広げられます。ウォーレン・オーツの男臭さが砂塵を上げ、硝煙とともに臭ってきます。ラスト、単身殴りこんだオーツにマシンガンが連射。スローモーションタッチで銃弾が雨霰と舞い、薬莢が飛び散るマシンガン・ポエム。ペッキンパー監督の独壇場。戻る
ワイルド・バンチ
サムペッキンパー監督渾身の作。メキシコで繰広げられるウイリアム・ホールデンを頭とする盗賊一党と、彼らをを追う保安官との追跡劇。砂塵が舞い、テキーラの臭い漂い、馬の蹄轟く。ラスト、スローモーションで映し出される凄絶な銃撃戦はアメリカでも非難を浴び上映禁止になったほどの大迫力。ウォーレン・オーツ男の雄叫びがマシンガンの銃弾とともに観る者の胸を打つは必定。戻る
アンディ・フグ
 アンディーフグ氏の突然の訃報を知り愕然としました。あれほどの強靭な肉体の持ち主が入院してわずか2週間足らずで亡くなったのです。人生とは全く分からないもの。私もフアンの一人としていまだに信じられませんし、他の人も同様の思いでしょう。7月の試合でしたか、日本人選手を相手に軽くいなすような試合運びで、最後は見事KO勝ち、圧倒的な強さを見せ付けたばかりではありませんか。実に威風堂々として、王者の貫禄十分、挌闘家としての格の違いをまざまざと見せつけた試合でした。
 これまで、壮絶な負け試合を食らっても、不屈の闘志でリベンジし、次には必づ倒す。その一種悲壮なまでのアンディーの闘う姿に、「武士道とは死ぬことと見つけたり」という今は絶えて見られない武士の面影を重ね合わせ、男の美学をそこに見ようとし、熱き思いで私たちは応援したのでした。享年35才。あまりにも凄絶で早すぎる死。謹んでご冥福を祈ります。戻る