ウエイン・ヘンダーソンプロデュースによる起死回生の一撃。「俺たちを信じ続けてくれたファンと協力者にハッピー・アゲインを捧げます」と、おそらく万感の思いを込めて、ウエインヘンダーソンは語っています。サァ、コンガの高鳴りに乗って、、ウエインヘンダーソンのトロンボーンとウイルトンフェルダーのサックス2重奏のうねりが津波のようにわたしたちを襲ってきます。「LOCK IT DOWN」。
何か突き抜けるような晴朗さを感じます。いままで曇天だった空に、ようやく太陽が顔を出し、群青の大海原の水平線に、モクモクと入道雲が盛りあがり、陽光がまぶしく輝きます。打ち寄せる波の浜辺でスイカをガブリと一口。聞こえてくるのは、クルセイダーズサウンド。海の家、夏の恋人たち、夏のファンク、夏の暴力、夏のセックス、そして夏の・・・「八月の濡れた砂」を踏みしめて「WHEN YOU'RE SO FAR AWAY」が実に清々しく日に焼けた素肌にボディーローションのように染みこみます。
「ROCK SLIDE」は、久々にリボルバー愚連隊マーチとでも名付けたいほど、拳に力が入る。閉塞感をブチ破るに十分な迫力満点のサウンド。これぞクルセイダーズ炎の力業。
唐突ですが、もはやマスコミの口の端に上ることも無く、脇役人生そのままにひっそりと姿を消して亡くなったあの「大幹部」男、故青木義郎氏の面影が胸を焦しながら甦ってきます。青木義郎氏が何故か日活ニューアクションのウエインヘンダーソンだったのではないかと思えてなりません。
「ARE YOU PART OF ME」、ウイルトンフェルダーのサックスがやけに艶っぽい。ラブリーなサウンドというよりは、むしろ谷崎潤一郎作「刺青」の清吉と芸妓の物語のように艶麗。ですから曲名も、「お前さんは私の肥料におなりかい」とでも耳元で呟かれてるような按配、「折から、朝日が刺青の面にさして、女の背中は燦爛とした」ような情景が彷彿。ジャケットの女性の妖しい瞳のように、サウンドもまた妖艶な燐光を放っています。
そしてとどめは「UH-HUH! OH-YEAH!」。K1のバトルサイボーグ、ジェロム・レ・バンナの強烈なフックのように重い。野太い声でアジテートするウエイン。聴く人のハートにクルセイダーズ炎の魂のタトゥーが彫りこまれること必定です。
文字通りハッピーになること請け合いの「HAPPY AGAIN」、妖しくもリキの入ったアルバムで、まさにクルセイダーズファン必聴でしょう。
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