ウエインヘンダーソンのお出ましだいとばかりに、ジャケットに「WAYNE HENDERSON」とひときわ大きく書かれ、その下に改行して小さく「AND THE NEXT CRUSADE」。いかにも次のクルセイドに渾身の力を込めるとの意気込みがひしひしと伝わってきます。そう、前作「HEALING THE WOUNDS」をトロンボーン・マシンガンで蜂の巣状態にしながら、ついにウエインヘンダーソンが帰ってきたのです。
クルセイダーズ初期の頃、メンバー中、最も危険な雰囲気を漂わせていた男こそ誰あろうウエインヘンダーソンその人だったと肌で回想するところ。「危険」とは誤解無きように言いますが、はちきれんばかりにパッションが満タン状態という意味合いで使ってます。野望もそのパッションの一つ。ウェインヘンダーソンは、言わば、クルセイダーズただ一人の「豪快さん」だったのかも知れませんネ。
今にも破裂寸前までにパッションの膨らんだ巨大な風船は、南の風に吹かれて、やがてクルセイダーズを離れて漂流する宿命にあったのでしょうか。
それから時経て、我が愛するクルセイダーズは、癒しのまどろみに今しも沈んでいこうとしていましたが、その矢先、パッションの黒い神が降臨しました。「BACK TO THE GROOVE」。この混沌とした危険な魅力溢れるアルバムこそウエインヘンダーソンの真骨頂。
まずは1曲目「ROSA CAFE」はWAYNE'Sマンボといった風。「RIGHT ON BROTHER MAN」、「THE GRAND DANCE」、「TNT」はヴァイオレンスのスパイスを効かした激辛ハードボイルド・サウンド。あの「レオン」の宣伝文句をもじって、さしずめ兇暴なファンクとでもいいましょうか。
「ARCOIRIS」は心地良いけだるさを誘うトロンボーン整体術。「DOWN HOME TRANSITIONS」は「WAY BACK HOME」の流れを汲むテキサス魂あふれる郷愁系。「LADY IN WAITING」ではラブリーなサウンドをしっとりと聴かせ、「ALFIE」では何とバカラックの曲をゴスペル調で高らかに歌い上げる。このバラッドをバックトーンに、目を閉じれば、心の行灯に火が灯り、「ガルシャの首」のラストシーンか「ワイルドバンチ」あたりの壮絶な銃撃戦がスローモーションタッチで甦り、イヤァー、もう実にエネルギッシュなサウンドに満ち満ちて、久方ぶりに「クルセイダーズ気分」を満喫できました。ことほどさように、猛暑の今夏に聴いたこのアルバム、焙煎ニンニク風味で、元気回復に効果覿面、文字通り栄養満点でしたヨ。
「BACK TO THE GROOVE」CDの情報をいち早く教えて頂いたREUBENさんに心より感謝致します。
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