Cello Repair1-5
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バラバラなったチェロの修復 X

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    ◇ 弓の修復    

先端の白いチップが、ご覧のように、割れて剥がれていました。

アジャスターネジは、すっかりさび付いていて、プライヤーに ゴムシートを挟み、力任せにに回してようやく外したような状態。

そのためか、Tの字の真鍮の受けナットもさびて緑青が出ていました。

この角度では少し分かりづらいのですが、フロッグの毛束を入れるシェル・スライドカバーも浮いています。

フロッグも補修部品としての在庫も持っていますが、今回は、直して使えるものはすべて使います。


同様に、グリップ部の銀捲き線も酸化していて、真っ黒。

半月リングや、フロッグの金属類も汚れやさびでずいぶんくすんでいました。

まずチップの交換です。

ご覧のように、チップを金属ヤスリで成型して削りだします。
そこに毛束を入れる台形を写し取り、その台形をくり抜きます。

エポキシ系の接着剤で貼りますが、麻ひもでしばって固定しているところです。

これは、やったことがないと分かりにくいところですが・・・ ただ、
しばろうとしても、全体になかなか均等に圧力をかけて縛ることが難しいものです。

先端が細く、角度がついていることと、紐が滑ってしまうからです。

その点、中央の写真のように、半割した竹を背負わせることで、 先端から根本まで、しっかり縛ることができます。

要するに、縛る紐の受けになるように、半割の竹と一緒に縛るのです。

半割してあるので、弓の断面曲線と竹の内径の曲線が合い、 こんなものでも、簡単に固定することができます。  

貼りあがったら、やはり小型の精密金属ヤスリで外形ぴったりになるように成形します。

銀捲き線は、先の一部が少しゆるんでいたことと、黒ずんでいても、ある程度しっかりしていましたので、 これは金属磨きをつけて磨きました。

金管楽器を磨く、あの「ピカール」だっていいし、車の塗装に使う磨き剤のコンパウンドでもOKです。

様に、半月リングやフロッグの金属類の磨きました。

皮も、手垢と色落ちだけで程度がよかったので、手垢は溶剤で拭き落とし、色はマーカーの黒で着色。
その上から、アルコール系のクリアーニスを使って銀捲き線と一緒に薄く塗りました。

婦人ものの高級バッグなどと同様、エナメル仕上げの皮と同じような手法を、身近なもので間に合わせたようなものです。

また、銀捲き線にニスが染み込むことで、さび止めにはなるし、ゆるみにくくもなります。

皮のニスも同様、指の汗も染み込むことはなくなるし、汚れがつきにくく、落としやすくなりますね。

もう一回、最初の段階と比べて見て下さい。
まるで別物のように、見違えるようになったでしょ。


◇ 毛替え (06.1.18追加)

毛替えすると、もう弓も新品同様。

ビニル袋は、保存用の馬毛の束、右の巻いたものは外した古いもの。

馬毛は、蒙古産80cmの長さがあるもの。
筆者は使いやすいように、大ききな束を小さく分け、それぞれにナフタリン(「タンスにゴン」)を入れてシール付きのビニル袋で保存しています。
この写真では、ビニル袋の中のナフタリンがよく見えていると思います。
馬毛だって純毛?ですから、保存が悪いとカーペット虫に喰われ、ズタズタにされてしまいますから、保存も要注意です。

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