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Woodcraft1-1 木工の楽しさ・おもしろさ No.1-1
BGMは、鈴木5巻にはいっている「ドイツ舞曲」です。
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木製の譜面立て その1 木製の譜面立てその2は→ こちら


ある日のレッスンでのこと。

譜面立てをつくって工房に置き、立って練習するようになったことを先生に話したら、『わたしも、前から木製の譜面立てが欲しかったの・・・』とおっしゃる。

『では、暇をみて、つくって差し上げましょう』と約束はしたものの・・。

工房に置いたものは、ただスタンドの、棒の上に譜面立てをつけただけ(下に写真)。

しかも、自分が立った背の高さに合わせた固定式。

問題はそこ。

先生の教室だと、子供から大人まで、少なくとも50cmは伸び縮みしなければ要をなさない。

さて、木製で伸縮させるにはどう細工するか、見本にすべき市販品なんて見たことはない。また、先生のお宅に置いて遜色ないように、 インテリア家具調に仕上げたい・・・などと、イメージはふくらむのだが、技巧面で考えこんでしまった。



つくりたいものを手作りし、
思った通りにできたときの喜び!










材料も、工具も、加工方法も
工夫し、考え、そしてつくります。
中軸を抜き差しするためには、外軸は中空にしなければならなが、しかし、そんな具合のいい材料は市販されていない。

作るにしても、それほど大きな木工旋盤(ロクロ)などはホームセンターに売ってもいない。

以前、エンドピンを削れる程度の、小型のロクロは手作りしてあった。

そんな体験から、要は直径3〜4cmの棒が削れればいいのだ、ということで、以前のものよりも、ちょっと大型のロクロから作り始めた。

さいわい、横付けのドリルスタンドがあったので、それを流用。

ドリルの先端には、中心と120度ずつの三点のピンで材料を固定するようなアジャスターをつくってつけました。
 
反対側(写真手前)には、先端を長円錐状にとがらせたボルトで、素材の芯を支えることにしました。
 
削る刃の「バイト」には、100円ショップで買った、鉄工ヤスリの「平」と「半丸」の先を適度に削りだし、市販のバイトのように研いで仕上げました。
手前の角材は、バイトを一定の角度で固定するために置いたものです。

回転の力が適度だったためか、刃の切れ味が良かったためか、思った以上にスムースに、しかも自由に削ることができました。

これなら、ウィンザー調の椅子の脚でも、こけしでも、野球のバットでも作れそう。

写真は、工房で作業中の筆者。



主な材料、中軸用の直径18mmの丸棒、外軸用には直径30mmの棒。脚に使う適当なラワン材。

それに、釘やビスを使いたくなかったので、脚を軸に取りつけるための直径6mmの既製品のダボ2×4本(写真中央のビニール袋入り)。

脚は、型紙通りにジグソーで切り抜き、4枚をそろえてクランプし、ペーパーで均等に仕上げました。

テーブル上の白いボール紙は、脚の切り抜き型紙と、正面のものは譜面立ての、中央線から1/2の型紙。

譜面立て正面のデザインで空けたエフ字孔は、チェロ用の本物の図面から型どったものです。

バックに立っているのは、以前につくった自分用のいい加減な譜面台。

さて、道具や材料はそろったものの、外軸の芯を中空にする方法は・・。

説明が長くなるので、それは、最後に詳細を記します。


背景のものが最初の譜面立て。

材料は安いものでも、
本格指向を目指します。















譜面立ては、蝶ナットで自由な角度に変えられるよう、 また軽くするために2.7mmベニヤにして、周囲の中央部だけ薄い板の力木をクランプ。

写真は、中軸に、自由に角度を変えられる腕木を接着しているところ。

ベニヤとラワン材のため、トノコを塗って目止めしてあるので白っぽい。 

左側は、自分用の、ただ、立っていればいいという、いい加減につくったものの脚部。

材料さえそろえば、手製のロクロ以外は、ほとんどヴァイオリンづくりの工具で間に合います。



なにより、嬉しかったのは、先生にたいへん喜んでいただけたこと。

それに、毎回のレッスンでは、先生自ら持ってきて、ほかの子供たちの生徒と同様に、

わたしの背の高さに合わせてくれるのです。

そして、レッスンの1時間、みっちりとわたし自身が使うのです。


この脚のデザインは、ややロココ調・猫足の簡略した型。

脚部の縁は、ルーターの南京型の面をとったので、洋家具調の仕上げになりました。

上の写真の脚とは大違いでしょ。

ニスも、ラワンの自然の木目を生かし、見るからにチークのような仕上げになりました。


=秘策? ◇ 木のパイプは、吹き矢づくりの方法で アマゾンの裸族・インディオからヒント=

一昨年暮れに放映されたNHKの『地球に乾杯』−「吹き矢とともに暮らすアマゾンの知られざる種族」−
というのが大きなヒントになりましたので、それを紹介します。

主役は、その種族の新婚の青年、ちょっとジャニーズ系のなかなかの好男子。

その種族では、男として一人前になると狩人として自分の吹き矢をもち、
妻子のために獲物を獲れるようでなければなりません。

そこで、一族の長老や狩りの名人が協力して「吹き矢」をつくるのです。

「武器としての吹き矢」、それは、長い木のパイプと、割り箸の半分の細さの矢からできています。

矢の先端には特別な植物から抽出した毒を塗り、
竹串の後ろの方には綿の繊維のようなものを巻き付け、筒に入れてフッと吹きます。

ちょうど、綿毛がついた大きな耳かきか、綿棒を大きく、長くしたようなものだとご想像下さい。

すると、その綿がちょうどいい具合の弁の役割になり、息の圧力で矢が勢いよく飛んでいきます。

さて、ここでも、筒が問題です。

機械や工具もないに等しい彼らが、どうしてつくったと思いますか?まず、素性のいい2枚の板を準備しました。

板とはいっても製材があるわけではありませんから、幅10センチ、厚さ4、5センチ、長さが3mほどのナタで割ったような、ただの木の板です。

それを携えて、彼らは河原に行きました。

そして、木の又をちょうどYの字に何本か立てて水平の台に仕立て、その上に一枚の板を乗せます。
 
さらに、河原の濡れた砂をその上にばらまきます。 

その上にもう一枚の板を重ねて乗せ、狩りの名人のおじさんと青年とで、ひたすらこすり続けます。

砂が減ると、ときどき新しい砂をまきます。そして、まるまる二日かけて、ほぼ、二枚がぴったり合うようになるまで削り取りました。

まさに、川砂がサンドペーパーになっているのですね。

それを部落に持って帰り、つぎには素焼きの土器に赤く模様をつけたり、顔や体に化粧として使う、赤いザクロのような木の実を採ってきました。でも、これは食べられません。

その赤い汁に糸をひたひたにつけ、ちょうど大工さんの赤い「墨差し」のように、二枚の板のセンターに合わせて糸を張り、ピシリと直線を打ちました。

それに、小刀が折れたようなノミ(のような刃物)で、糸で描いた線に沿って、数ミリの、V字形の溝を彫っていきます。

れまで部落で下ごしらえしておいて、また、河原に行きます。 今度は、細い木の芯をそのVの字の間に挟み、また、砂をかけます。

そして、ツタで二枚を軽くしばって、その細い芯を抜き差しして、また、ひたすらこすります。すりあわせて減った分、しばったツタを締め直します。

矢が通るにちょうどいい具合に削るのに、やはり丸二日かかりました。それでも、まだ板の幅や厚さは、8〜10センチ程はあります。

つぎは、手頃な木の又を採り、又の両方の先を二つに割ります。その割った間に山刀を差し込み、ツタでしっかり縛ります。

ちょうど、アルファベットのAの字のようにしました。真ん中の横線が刀で、刃は下に向いています。

そのAの字の両脚を手にもって、刃をむき出しになったカンナのようにして板の角にあてがい、引いて、少しずつ細く削っていくのです。

それまでも、幾日も日数をかけていますから、削りすぎのような失敗は許されません。

そして、すべての角を削り取り、すっかり3.5センチのパイプ状になりました。それを、薄い特別なツタの皮でクルクルと巻いていき、二枚を固定させます。

仕上げは、ゴムの樹液を煮詰めたものを塗ります。真っ黒いタールのようです。その上から、土器の割れたかけらを焼いたものでこすります。

熱が加わりますから、タール状の樹脂は熔けてパイプの木にしみ込み、隙間も埋まるし耐水性になります。

さらに、それをイモの皮でひたすらこすり、艶を出します。 最後に、鹿の角でつくったマウスピース(吹き口)を樹脂で固めてつけ、これで仕上がりです。

青年は、その新しいマイ・パイプをたずさえ、三日三晩ジャングルにこもり、獲物を獲ります。それが一人前の狩人としての「登竜門」になります。

なれない初めての体験で、獲物は、小鳥がたったの4羽。でも、部落では家族・親族ともども、一族そろって暖かく彼を迎えました。

その晩は、どぶろくで宴会です。彼も、きっと、何年か何十年かすると、狩りの名人になっていて、子供たちや孫たちに、同じように、吹き矢をつくってやるのでしょう。

◇それからが実践

基本的には、この考え方の方法でつくりましたが、私は現代文明に生きる者、河原に持っていって砂で削るようなことはしません。

できるだけ合理的に、かつ、手持ちの道具を駆使してつくりました。

最初に、上述した材料の30mmの丸棒を、電動丸鋸+定規を使って正確な1/2に割ります。

その断面の、半円の弦になる中央には、あらかじめ電動丸鋸の刃を必要な半径にセットしておき、切り込みを入れます。

つまり、これが中空にする穴の半径にあたるわけです。 さらに、数ミリずつ切り目を入れる幅・定規をずらし、ノコの刃の高さも調整して切り込みを入れます。

そのままで、反対側も切りますと、左右対称、同じ深さに切れます。

そうすることで、彫るつもりの半円に幾筋ものノコ目が入っているわけですから、後で丸ノミで彫るのが楽になるわけだし、

彫り過ぎも彫り残しもなく、均等に彫ることができるようになります。

最後には、使用する中軸に80番〜100番程度のペーパーを貼り、何度かこすってなめらかにします。

これで、スムースに抜き差しできる中空パイプができることになります。

ここまでくれば、後は木工用のボンドでしっかり張り合わせれば、ひとまず外軸素材の完成です。



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