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油絵の具・用具箱のリメイク

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 小生、昔、高校2年から入ったクラブが美術部でした。

その、昭和34年当時はまだ戦後の影響が残っていて、日本全土・誰もが貧乏のまっただ中。

油絵の具や絵筆は何とか買ってもらったものの、ケースまではとてもとても手が届くものではありません。

当市・裾野から沼津の高校までは、御殿場線のSL(D-52)の蒸気機関車で通学。

ボール紙の菓子箱か何かに入れて持ち運べば、多分、それでも用は足りたでしょうが、その頃から工作好き。

そこで、夏休みに廃品(疎開の引っ越しで壊れた引き出し)を利用してつくったのが、小生ご自慢の「てづくり・画材用具入れ」

現在の目から見れば、やはり、高校時代のものだし、廃品利用だけにあちこちに稚拙さや欠点が目につきます。



これが高校2年生のときにつくり、永らく愛用してきた油絵の
画材用具ケース。

その後、結婚してから少し大型のケースや家内用のものを買ったものの、何もないその時代に、苦労してつくったものだけにいままで捨てられず、ずっと、大事に使ったり保管してきたもの。


いちばん上のものが、後年、購入した家内用の市販品。
真ん中が今回とりあげた、そのお手製。
 いちばん下の、少し大きいものが上のものと同時に購入した自分用。
 ◇ その現状 

そのときの、お手製の詳細をよく見てみましょう。

取っ手は、当時、自分が使っていた、多分、バックルが壊れて使えなくなったズボン用のベルトの皮を利用してつくったもの。
ちゃんと何層かに重ね、 レザー・クラフト的に手縫いでつくっています。

縫い目が曲がっていたり、目の荒さや不揃いが目につきすが、
それでも問題なく、何十年もの使用に耐えてきています。

右のバックに見えている、蓋が所定の角度しか空かないようにしたストッパーも、皮を細切りして釘と木ビスで固定。

取っ手の留め金具は、廃品利用の?薄い真鍮の金属片と、
太めの針金を曲げてつくったもの。

その金属片がやや薄めだったためか、二重に重ね、端を小さなアルミのリベットで固定、真鍮の、小さな木ビス2本で止めています。

今ならリベットではなく、半田付けかロウ付けで、
こんな、リベットの頭を出すようなことはしなかったでしょう。

蓋止めには、ごく簡単な、L字型の、当時、市販されていた真鍮金具を使い、取っ手の左右と、安全ためにサイドにひとつ、3カ所で固定。

ご覧のように、肩からの吊り下げベルト用の受け金具には、
多分、壊れたビニル製のバックか何かの部材を再利用したもの。

ミシン目を丁寧にはずし、 それを小さな木ビス3本で止めています。

現在、肩掛けベルトは残っていませんが、多分、その壊れて不用になったバッグのベルトを利用したものでしょう。

現在、見て嬉しかったのは、箱・本体を組み上げるための角の処理。

写真でお分かりの通り、下手くそでも、丁寧にホゾ組みにして組み立ててありました。

きっと、当時では母子家庭のわが家には、これほど細いノミはあるはずもなく、 工作用の彫刻刀や切れないノコや小刀などを駆使し、長時間かけて「組子」を彫ったものでしょう。

また、箱の前面には、ご覧のようにへんな曲線の彫り物がしてありますが、これは、市販の木材ではなく、 疎開につぐ疎開で、壊れた家具(多分、本箱など)の引き出しの部材をバラして流用したもので、これは、その化粧としての彫刻の名残です。

また、蓋の表板や底板には、その引き出しの、多分、底板の杉材(4分板)を流用していましたから、 板目だし木目も粗く、そのため、やや無骨ない仕上がりになっています。

いまではすっかり忘れていますが、このように随所に工夫と苦労がうかがえる『苦心の作』でしたから、なおさら大事にしてきたわけ・・・。

近年つくった、こうした蓋のあるケース類をつくる際には、
まず、最初に全体をつくってから中央を割ってカットし、
蓋と底とに分けています。

ですから、上下に少しのズレもできません。

でもこれは、蓋と底を別々につくっていましたから、角・角に
若干のズレが出ています。

それが、ヴァイオリンづくりをするようになった今、
もし、孫やひ孫にこれを残すなら・・・、と気になり、
少しでも体裁がいいものにしようとリメイクすることにしたのです。

あるいは3つあれば、小生が万一の時にも、絵にはまったく関心がない子供たち3人で、それぞれひとつずつをボクの遺品として分けてもいいと考えてのことでした。

 ◇ 改造後 

まず、リメイク後の完成した写真をご覧下さい。

最初、スギ板の、板目の無骨ない4分板だったものを、まず上下とも
3mmベニヤに取り換えた。

また、不自然な位置に彫り込みがあった前面の彫刻も、その彫ってあった分だけをカンナで削り落とし、すっきりとさせた。

そのことは、上下のズレも合わせて同時に削ったから、
結果として補正することもできた。

それは、当然、古いニスを全部スクレーパーで削り落としてからのこと。
自分にとって、多分、その当時、たいへん苦労してつくったと思われる、
価値ある?「取っ手」はそのまま使い、 金具はサビを落とし、鋳掛け屋さんよろしく、きっちりと成形し直し、かつ、リベットもはずし、こんどは3本のビスで取り付けた。

ニスの色は、ヴァイオリン同様、筆者の好みで、市販のオイル系のメーブル色と、オーク色をブレンドしたもの3回塗って仕上げた。

ニスを塗る前には、古い、使わなくなったビス穴にはすべて爪楊枝を差し込み、ちゃんと埋め戻してから仕上げにかかっているから、
そのビス穴の痕はまったく気にならなくなっています。
ありがたいもので、現在では、ちょっと大きなDIYのホームセンターに行くといろいろな金具が売っています。

蓋止めは、いつもケース類の際に愛用しているパッチン金具の「小」。

肩からの吊り下げベルトの受け金具も、
こんな形のものが売っていましたから交換しました。

これは、添付されていた木ビス2本で固定。

ハンディ用の折りたたみ式のパレット置き場はほぼそのまま。

蓋の、上のカマチ部分内側にバレットの板が差し込めるように
ノコ目で切り込みを入れ、彫ってあります。
ですから、パレット板の先を少し上カマチに差し込んでから、
下の仕切りにある取り付けてある「Jの字」金具を回して固定します。

ただ、仕切り用の部材が杉材だったので、
新しく、ちょっと細目のタモ材に取り換えました。

真ん中の左側にある蓋止めのストッパーも市販品の金具に交換。
今回は、とりわけ油入れ瓶をしっかり納めるホルダーを設置。

これには透明なブラスチックを適当なサイズに切り抜き、接着付け。

これで、2ビンだけは右側から差し込むと、ここにぴったりと納まります。

蝶番は、真鍮製の古いものをそのまま使いました。

その当時でも、蝶番の取り付けには、ちゃんとその蝶番の厚さ分を削り取ってはめ込んであり、そのまま何もせずにアッセンブリーできました。
止め金など、新しく買った金具類が数百円、これも安い道楽のうち。

これで3つのケースが、なんの恥じることもなく、そろい踏みです。

いちばん右側の、家内用の小さなケースの取っ手は、素材がビニル製の合成皮革。
経年変化の劣化のためボロボロにボロけていますが、 さすが本革、
私の手づくり・取っ手は、50年以上たった、今だ何ともありません。

P.S.
四年前から、美術部OB展がはじまり、昔の道具を押し入れの奥から
引っ張り出してきたわけですが、さすが、ヨーロッパでは伝統と歴史ある油絵。オイルをはじめ、絵の具もチューブの蓋が固くて開かないものもありましたが、中身は何ともなく使うことができました。

当時のチューブは、蓋までが鉛製、それで、ガスライターで少しあぶり、
油分を少し溶かしてからゆるめます。
 
後年、買い足したプラスチック製の蓋は、プライヤーでつかんで回したり、お湯につけたりして外しました。

真ん中が、今回取りあげた箱。

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