第179回原宿句会
平成16年5月11日
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千恵子 聖五月番の鳩の胸の張り 風孕む木綿のシャツや麦の秋 山背風吹く辻に餓死者の弔ひ碑 誕生の知らせ待つ夜のさくらんぼ ほととぎす朱肉の滲む納経帳 白美 追伸のインクの青さサクランボ ボクシング中継を背に蛸を揉む 天を衝く並ぶ風車や山背風 水色の縞のワイシャツ聖五月 たたなづく立山連峰麦を刈る 美穂子 遺影への小さき賑はひさくらんぼ 空見るは習ひのひとつやませ吹く 麦刈りて流れの変はる風の道 蹴る猫の尾に力あり青嵐 坂道に負けし自転車杉落ち葉 |
武甲 大仏の背に窓二つ山背風 夏立つや岸に陣取る写生会 大声で始まる点呼麦の秋 ためらひが語尾を濁してさくらんぼ 母の日や満車を知らす赤ランプ 希覯子 燈臺も官舎も白亜風光る やませクル船双錨の備へかな さくらんぼ種吹きとばす競ひあり 聖五月風樹の嘆をしみじみと 麦秋のワーテルローを訪ねけり 和博 贈答の茎の揃ひてさくらんぼ 振り返ることの多きや竹落葉 芍薬の花に隠れて車椅子 大刹の影を時計に麦を刈る 山背風年の神への機嫌買ひ |
利孟 列に付き賜ふ試食のさくらんぼ ほどけ初め深山蓮華にあはき紅 山背風声掛け捨てに選挙カー 鉢うちの土三升の麦の秋 五月闇携帯電話身悶えす 正 金色のジャンヌの騎馬像聖五月 やませ吹く夜半に左遷の遠電話 麦秋や美瑛の丘の夕茜 オペラ座の屋根の蜜蜂ハミングす 桜桃の暮れゆく空に八ヶ岳 美子 口角に埃の乾く麦刈女 母の固辞して走り値のさくらんぼ 悼・巣立つあり逝くあり顔の裏で哭く 山背風来る霧の奥より叫ぶ声 観てゐない眼球固し五月病 |
箏円 さくらんぼ背よりはみ出すランドセル 立夏なる風を集めし風見鶏 太陽を緑に染めてやませかな ベクトルの向き定まらず麦の秋 五稜郭馬鈴薯の花見え隠れ |