第122回 平成18年月12日2日
・ 遠畑の煙一条今朝の冬
・ 大幣を舞殿に立て神迎へ
仕舞田に立つ忘れ鍬枯葎
☆ 天指して錆し大砲冬晴るる
◎ 焼藷屋おまけの世間話かな
永子
・ 熊除けの鈴の行き交ふ通学路
◎ 間延びした声の近づく焼き芋屋
・ 冬晴れや袴の皺を手熨斗して
・ ほうき持つ巫女の白き手落葉焚き
◎ 冬晴や程好く焦げる朝のパン
聖子
・ 焼芋の値の折り合ひて買ふ二本
・ 特訓のひとつに土下座空つ風
玄関へ来て山盛りの散紅葉
・ 源泉の臭気八方散紅葉
◎ 焼芋の焦げの匂ひの新聞紙
◎ 三つ星や手より溢るる露天の湯
・ 暁に音の澄みきる寒復習
・ 初雪の便り届きて替へる衿
・ 焼芋の温みを頬に抱き帰る
・ あやとりの指組み解きて冬麗
昭雄
・ 冬うらら糸底で擦るたなごころ
・ 金泥の般若心経冬うらら
・ 尉鶲鳴けり天眼鏡置けば
・ 吹き晴れて日波に浮かぶ鴨の陣
・ 焼芋屋巡りて休む芭蕉句碑
幸子
・ 人垣に釣られ焼芋買ひにけり
・ 母の歩に合はす散策冬うらら
・ 旅立ちの体を温め根深汁
・ カーテンの絵のふくらみて冬ぬくし
・ 風呂吹やいささか機嫌直す母
地下道を出で冬麗の雑踏へ
◎ 手秤の誤差のおほまか焼藷屋
◎ 前髪を上げて母似の七五三
・ 日溜りや低き羽音の冬の蜂
錦木や観音開きの蔵の窓
信子
冬ざれや杭に繋がる貸ボート
・ 晩菊の花びら零る古刹かな
・ 冬晴れや古城に据ゑし鏡石
◎ 棒切れで計る頃合焚火藷
・ 彩少し萎えて安らぐ紅葉山
美代
・ 冬晴れや塔のへつりの磨崖仏
・ ぎくぎくと足腰伸ばし冬蝗
・ 売り声で火を煽り立て焼芋屋
・ 飛びかかり玻璃戸に狂ふ尉鶲
・ 生乾きの土器削り冬に入る
腕白盛り落葉を積みて芋焼けり
☆ 放牛に名の黒々と小春かな
蔓梅擬草月流の家系継ぎ
冬晴れやとある茶房に魚板打つ
・ あれなるは天の岩戸よ木の実落つ
登美子
・ 冬晴れや昼の電車に眠り込み
・ 郵便夫焚火の煙を遠廻り
・ 旅支度して大鍋に炊くおでん
・ やきいも屋小さな庇に老夫婦
やきいも屋今日も来てをり恙無し
鴻
冬晴れの畑で過ごす漢かな
夜半の町焼芋売りの気的かな
冬耕の土に群がる小鳥かな
◎ 刈田覆ひつくして浮ける熱気球
・ 熱気球紅葉の山を埋めて浮く
・ 新幹線ホームの鳩や冬晴るる
月映えに銀杏黄葉色を増す
冠雪の立山浮かぶ能登の海
・ 鰤起し閃く能登の海の闇
・ 盛り場に焼きいも売りの声止まる
利孟
柴漬けや伊吹は風を分ける山
炉話や灰より婆の出すおやつ
焼芋をわけてじやれ合ひ女高生
寒晴れや押しては返し煎餅屋
茹でこぼれしづもる釜や走り蕎麦