第137回平成20年03月23日
★ 菜の花や塗師の分厚き老眼鏡
◎ 逞しき男の野火を打ち続く
◎ 春惜しむ閉鎖告知の診療所
墨糸の音のきつぱり春寒し
菜の花に「喝」を貰ひし三千歩
鴻
★ あれこれの虫を集めて梅の花
・ 菜の花の黄のあふれたる棚田かな
老夫婦終日睦み芹を摘む
川岸に草丈伸びて張る惜しむ
回り道して?の芽を摘みにけり
良人
◎ 川敷を埋める花名や遠筑波
・ 菜の花の一株ばかり無縁塚
・ 城山の坂登り来て弥生尽
・ 春惜しむ那須野の風のひもすがら
男体山の遠退く影に春惜しむ
◎ 取り交すワイングラスや花菜和へ
・ 獅子舞の神籤は吉と梅祭
・ 天空へ大き橋脚峡の春
・ 七賢の軸を掲げて春惜しむ
長英の隠し湯があり犬ふぐり
憲巳
◎ 制服の返納印や春惜しむ
・ 菜の花や二階の隅の喫煙場
・ 菜の花や四十二年を勤め上げ
・ 菜の花や風のワルツにゆれてゐる
返却の制服数へ利休の忌
幸子
◎ 朝靄を分けて摘み取る蕗の薹
・ 潮風と花菜の香る旅の宿
・ 春惜しむ母の香のたつ衣装箱
梅見茶屋枝に吊るしてお品書
春めくや犬連れて畑見廻れる
◎ 見せたくて見えぬ眼や花盛ん
・ 菜の花の畑で歌ふ童歌
・ 生き生きと芽吹き盛りの春惜しむ
食卓に菜の花並びつまみ食ひ
座禅草脳裏に浮かび春惜しむ
聖子
・ 菜の花や土手長々と染め上げて
・ 梅散れば風の池へと誘ひて
・ 春惜しむうしろ姿の紙人形
・ 領収書のいつもの癖字春惜しむ
使い捨てられし爪切り春惜しむ
登美子
・ 菜の花の雲の連山へと続く
・ 南国の甘き土産や日脚伸ぶ
・ 雀来る春の光のゆれる庭
風少し杖持つ母と摘むつくし
あれこれの色の薬や春の風
・ 梅開く堂に防火の赤ばけつ
・ 先頭は一年一組花菜風
・ 春の雪鏝絵の鶴が舞ひ降りて
惜春や帽に三つの鳩目穴
弛みゐるあらき折り目の紙雛
永子
・ 花菜雨舟に乗り込む傘ふたつ
・ 春霖にけぶる山路の賽の神
閉校の校舎の時計春惜しむ
目借り時我が身ゆだねるバスの揺れ
旅支度小さく畳む春ショール
信子
・ 笑み足して回辻芸うららかに
・ 惜春の神鈴鳴らす夕明かり
町ぢゅうに桜咲く日を待ちにけり
遠く来て河津桜の日和かな
待春の雨ひとしきり父母の寺
月に皺寄る涅槃図の巻き疲れ
菜の花や子をかろがろと肩にして
惜春やうろくづ光る台秤
涅槃図の隅の嘘泣き漢かな
霞暮る房州の山低きかな
美代子
裏山にころがる日差し北開く
初蝶の降り来土嗅ぐやうにかな
風に乗り来る潮騒春惜しむ
菜の花や列車轟音残し行く
古蔵や赤き蔦の芽走りゐて
芳子
菜の花の天まで染める水平線
手桶より霊水こぼつ春北風
春愁昼のけだるきハーブティ
薄れたる樫の暗さや春惜しむ
声高な訛言葉の鹿尾菜取り
惜春や煤け薬缶の揺る自在
公園となりし川筋柳の芽
菜の花や犬三頭に身を引かれ
花辛夷兄と奪り合ふ三輪車
霾天や辻々に名の京の町