第175回 平成23年07月17日
兼題:夏の雲 河鹿(蛙)
明易しペンにインクを吸ひ上げて
ビルの隙埋め東京の夏の雲
無き風にもつれのほぐれからすうり
夏の雲泥で継ぎする登り窯
腹さすり母となるらし白日傘
良人
◎夏の雲池塘に影の収まらず
○闇破る白き川波夕河鹿
・途切れ無き瀬音と競ひ河鹿笛
瀬音より節流れ来る河鹿笛
銀翼の機影のみ込む夏の雲
恵子
◎月面の海静かなり遠河鹿
・展示会扇子忙しく使ひつつ
・夏の雲喉鳴らし呑む渓の水
河鹿笛聴きて飲み干す渓の水
どこまでも続く豆畑夏の雲
○石清水飲むや奥山傾けて
○夏の雲古屋七戸の蕎麦の里
・河鹿笛独り占めして露天風呂
・街騒を遁れ一睡河鹿宿
河鹿笛匂ふが如き喉仏
ともこ
○夏雲の湧けり写楽の大首絵
・石垣に地震の傷跡額の花
・野の花を挿すガラス瓶卓涼し
・野を渡る風のにほひの扇子選る
河鹿笛風の細波の露天風呂
比呂
○薙ぎし草もて拭ふ鎌夕河鹿
・転げたるまま睡る児や釣忍
・笹舟の小堰に解け左千夫の忌
前頭葉子に傾げ抜け茅の輪かな
アルプスてふ観覧席や夏の雲
○実桜や群に目配る猿のボス
吊り橋の揺るるや淵のかじか笛
療西日病んで幼き姉を見る
船溜り帆柱あやなす夏の雲
貴婦人てふ樺の一樹夏きざす
聖子
・足濡らし遠まはりして河鹿笛
・野良着きた母の若き日河鹿笛
・胸濡らすまま呑む水や夏の雲
畝の間に膝つき藷を差しにけり
故郷へ夜も流るる夏の雲
一構
・法螺貝の峯から峯へ夏の雲
・屋根覆ふ雨避けシート夏の雲
頂へすがる鎖や夏のクオ
嬉々として子の撒く水に虹浮けり
夏雲や松一本の防風林
・瀬の音のまじりて細く河鹿笛
・葉裏より光りの透けて蛍の火
ただ無為に過ぎゆく時間酷暑かな
夏雲の峰を飛び行くヘリ一機
夕明りおちこちに揺れ蛍の夜
於した
・町並に掴まり立ちし夏の雲
終戦を知らせるラジオ夏の雲
夫婦とて趣味それぞれの河鹿宿
河鹿笛聞きたし峡の旅なれば
夏の雲群るる如よく立つ日なり
敬子
・河鹿笛ランプを吊す宿の軒
・百合咲くや手際よろしきマッサージ
代替わりして洋館の薔薇の門
夏雲の崩れ駆け込む道の駅
蔵の街梅雨明けの月美しく
・夏の雲小さな雲を引きつれて
・吹き晴れて躍動著き夏の雲
瀬の音にまじり河鹿のハーモニー
三つ色や河鹿の音色白に灰
放射能空まで届く夏の雲
郁子
・夏の雲牛馬を放つ草千里
百竿の竹の匂へる涼しさよ
光と風よ睡蓮の池波立てり
登るほど瀬音にまさる河鹿笛
奥日光木霊返しにほととぎす