第195回 平成25年3月24日
兼題: 囀り 青饅


  利孟
 青饅のこんくらいてふ匙加減
 吹き溜る中に花屑涅槃吹き
 囀りの雨戸のくるる解けば満つ
 菜の花や鉈彫り地蔵の細き眼
 啓蟄や納屋に泥つく移植鏝

  比呂
☆呑み足りて離す乳房や白木蓮
☆事故跡のチョークの印春の雷
☆火渡りの行者の呪文百千鳥
△長閑けしや投網繕ふ鼻眼鏡
 青饅や旅の終りの夕明り

  良人
☆囀りをはこぶ山風谷の風
△青饅の酢の香のあふる釣りの宿
△囀りや畦にたむろす群烏
△囀りや遠山閉ざす雲簾
 囀りや処々に影飛ぶ遊水地

  ミヨ
☆追分に姥石一つ百千鳥
△春塵や総身はたかれ帰宅夫
△白日の中木蓮の影あふる
△青饅や木綿まとひて野良に老ゆ
 揚雲雀土管一本通す畦

  信子
☆青饅を食むや父母より生きて
△ときをりの高音のまぢり百千鳥
△畑打ちの男に薄日ひもすがら
 復興の槌音光の花前線
 「おはやう」と夫へ夫から山笑ふ

  一構
△囀や木道光る尾瀬の朝
△囀りや富士の頂きうつすらと
△囀りや雲峰出づる県境
△青饅や星ふりそそぐ山の宿
 囀りやことに晴れたる山の上

  芳子
△みどり児を抱き取り重き日永かな
△啓蟄やランナーの皆右回り
 卒園式小さき足の揃ひ立つ
 囀の胸突き出して歌ひ上げ
 青饅や友の面影まだ残り

  敬子
△白壁の映る堀へと流し雛
△囀りや手彫り地蔵の深き笑み
 青饅や器の景に調へる
 老桜樹むき出しの根に花一輪
 青饅や越前蟹の向付け

  登美子
△春一番外に移して植木鉢
 百千鳥下枝下枝をゆづり合ふ
 囀りやつつがなき日の介護服
 青饅の色濃きを食む下戸の父
 物忘る囀りの下忘れけり

  昭雄
△青饅や家伝に塩の一摘み
 青饅を掌に受け娘嫁仕度
 囀や喉に光の郷山路
 擂鉢を伏せて鎮める饅の香
 囀りやスカイタワーへ遠足児

  功
△青饅を肴に酒のすすみけり
 菜の花や歌を歌って登校児
 酒盛りの盃に散り入る花吹雪
 夕空に小鳥囀りこぶしの木
 満開の桜の中に鳥遊ぶ

  健
 うららかやオーケストラの百千鳥
 耳痛き値上げのラッシュ百千鳥
 囀の目覚めの床の中にかな
 囀りや忘れてならぬ一本松
 青饅を肴にしている赤提灯