第196回 平成25年4月21日
兼題: 行く春 風車(かざぐるま)





  利孟
 色の無きマニキュアを塗り春惜しむ
 かはたれの吐息にまはる風車
 大釜にひねもす沸く湯春行けり
 初燕一便減りし朝のバス
 エプロンの保母に抱かれて入園す

  比呂
☆止まりてはまた風を恋ふ風車
☆水平線に動かぬ船や春惜しむ
☆うかうかと風に蔓出す花豌豆
・末黒野に戻る鳥声夕暮るる
・行く春や砂場に埋れ忘れ靴

  良人
☆行く春や溜池に満つ雨の音
☆行く春や客の途絶えぬ峠茶屋
・くるくると風の脚読む風車
 行く春や下手の風に堤揺れ
 行く春や疾風を防ぐ樅林

  信子
☆行く春や縛られ黙す地蔵尊
☆風車回りて風の色となる
・花冷えや電子辞書より鳥の声
 惜春や女は仮名を書く昔
 大しだれ桜に人の千二千

  登美子
☆湿り気の無き風好み風車
・駅前の風と客呼ぶ風車
・白鷺の佇む水際風光る
・風車風に光りて色かへる
 行く春や背すじ伸ばして厨に立つ

  昭雄
☆行く春や埴輪の胸のうすつぺら
・癌病棟の窓辺に赤き風車
・犬ふぐり夜は満天の星と舞ふ
 春惜しむ水尾残照の戻り舟
 風車愛想笑ひの二歩三歩

  大越
☆風車行き交ふ風に語り出す
・風車法被の父の肩に乗り
 色褪せて軒に捨て置き風車
 行く春の風の中にも慈愛あり
 行く春の窓辺に映す花の色

  鴻
・たらの芽や予報違はず通り雨
・部屋飾る花にあしらひ雪柳
・風車疾風に音を立て回る
 行く春を同級生とをしみけり
 庭すみのつつじの紅の燃え盛る

  ミヨ
・風車老いて思ひの空まはり
・妖精の衿の大きさ白すみれ
 行く春や掟書かるる番屋の碑
 疼く手を忘れて散らし花の屑
 妖として三尺藤の夕ごころ

  聖子
・流れ来る風のやはらか春惜しむ
・産み月の腰堂々と風車
 エコバッグ抱へた紳士春惜しむ
 旅雑誌立ち読み迷ふ春の旅
 雨粒の順に当たりて春惜しむ

  敬子
・風車水子地蔵の手にまはる
 噺家と城跡めぐり春惜しむ
 陸奥の旅の憩ひの蕨餅
 歩みつつ読経の散華朝雲雀
 行く春や古墳の丘に琴の音

  健
 あの頃はドン・キホーテや風車
 行く春やあすの希望に燃えたぎる
 行く春を名残惜しむやわれ生きて
 耳すまし田園に音風車
 蕎麦すする調べ奏でる風車