第295回 令和3年8月29日
兼題 立秋 木槿
酔ひどれの花をこぼして酔芙蓉
白木槿夜来の雨を光らせて
雲の湧く地平の遠く秋立つ日
捕らへれば風の重さの蝉の殻
鳴き出すに和して掛け合ひ法師蝉
比呂
☆炎帝の欠伸の涙日照り雨
☆目薬師に寄り目の絵馬やすいつちよん
△秋立つや古地図に父祖の旧番地
・底紅や男のすなる眉化粧
・鳥帰る天の扉の開かれて
英郷
△浮き雲の風に身任せ花木槿
△花木槿歩荷何やらつぶやきて
・立秋やパラアスリーツ自立して
・南洋に台風三つ生れ妖し
秋立ちや球界ともに金が舞ふ
△ジョギングの前を往き来し鬼やんま
・赤牛の鳴き黒牛も那須の秋
・保母さんはしやがんで見上げ軒燕
・悪童と言はれし頃や桑いちご
・口喧嘩どちらも折れず青胡桃
聖子
△秋立つや還暦にして恋の夢
・道祖神奥に工場白木槿
・雲よぎる青一色の今朝の秋
・店に入る前の除菌やソーダ水
・夕立雲兆し大工の早仕舞
良人
△秋立つや頬に優しき瀬のしぶき
・秋立つや風にお堀の草揺れて
・ハイウェイの路肩を飾り花木槿
・秋立つや日光街道すぎなみき
白木槿咲く生垣や夕暮るる
△日の温み残る庭先実山椒
・立秋の瀬音は岩を震はせて
・竹の春村にちらほら灯のともり
・抹茶の香竹の器に水羊羹
花木槿土橋渡りてくぐる門
ミヨ
△百日紅村人まつる塩地蔵
・杉の闇鋸屑まみれの氷室守
・里帰りの嬰の泣き声木槿垣
・夏暁や老体反らし深呼吸
呆気なく苧殻火風にさらはれて
美恵子
・立秋や衝立隔てAランチ
・三代で詣でる寺や木槿坂
・秋立つやオリンピックの火の消えて
立秋や上がらぬバーベル投げ出して
大雨や夏鴉打つ影を打つ
秋来る東京五輪無事仕舞ふ
古希過ぎて先はまだまだ雪催
てんぷらの油吸ひ取る新生姜
木槿咲く明日は明日の風が吹く
秋の風コロナウイルス吹き払へ