第304回 令和4年7月23日 Zoom句会
兼題 蝉 扇風機



  利孟  
 絶壁を洗ふ濤へと落ちて滝  
 天然氷と墨書の幟氷室茶屋  
 ランドセル水筒首のハンディファン  
 ハイヒール手に待つ車街出水  
 蝉に和すサイレン発破五分前  

  比呂  
☆濡れ縁に庭師の野菜朝の蝉  
△音激し老舗蕎麦屋の扇風機  
・嘶きて夏野行く馬車軽やかに  
・小躍りに釣られし鮎の手に香る  
・かなかなや手紙に添へし旅程表  

  良人  
☆和菓子屋の白地の暖簾蝉の声  
△渓声のときにかき消し蝉時雨  
・蝉時雨松原海を遠ざけて  
・切れ目なく一山覆ひ蝉時雨  
 エアコンの風を広げて扇風機  

  ミヨ  
△わが宿の昭和の名残扇風機  
 大樹蔭羽を休ませ揚羽蝶  
 花虻のせはし羽音をぶつけ合ひ  
 雨乞や地割れの畦に幣立てて  
 ベランダの防鳥ネット蝉時雨  

  信子  
・朝の蝉歯磨ぎゆうと絞り出し  
・明日には過去となる今夜の蝉  
・九十の姉守る生家蝉しぐれ  
・一雨の後に風来て星今宵  
 クーラーの風を煽りて扇風機  

  美恵子  
・出張の重き鞄や夏の雨  
・色違ふ流行色や夏オフィス  
・コロナ禍やオフィスに増えて扇風機  
・街道の長き渋滞蝉時雨  
 向き変へて風を分け合ひ扇風機  

  英郷  
・扇風機全開にして書くカルテ  
・まどろめば波のごと寄せ蝉時雨  
 キッチンの熱気吐き出し換気扇  
 戻り梅雨令和のテロに国葬儀  
 空蝉や己は何に変はらむか