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世界で一番パパが好き! /
Jersey Girl

Kevin Smith

2004 USA 102 Min. 劇映画

出演者

Jennifer Lopez
(Gertrude Steiney)

Ben Affleck
(Ollie Trinke - 音楽業界のヤッピー)

Raquel Castro
(Gertie Trinke - ゲルトルーデとオリ−の娘)

George Carlin
(Bart Trinke - オリ−の父親)

Liv Tyler (Maya - ビデオ屋でアルバイトをしている学生)

Stephen Root
(Greenie - バート仲間)

Mike Starr
(Block - バートの仲間)

Jason Biggs
(Arthur Brickman - オリ−のアシスタント)

Will Smith
(Will Smith)
Matt Damon (PR会社の社員)
Jason Lee
(PR会社の社員)

見た時期:2005年1月

ストーリーの説明あり

いやあ、もうこれははっきり駄作と言えてしまいます。ラジー賞にノミネートされるために作ったような作品。それにしてもどうしてこういう作品を作るんだろう。

ポリティカリー・インコレクトの作品を作るつもりなのだったら、最初からバッド・サンタやファレリ−兄弟のようにしてしまえばいいのです。年齢制限も高くなり、大人相手だから言いたい放題、やりたい放題。しかしそういう方針の作品にするには、キャスティングが行けません。大根役者風のベン・アフレックとジェニファー・ロペスが主演です。

アフレックはこれまでちゃんとした演技の作品を1度も見たことがありません。《スター》という商売をするために映画界に採用されたような人でしたが、イメージが似ているケネディーの息子が死んでしまって、出る幕が無くなってしまったのかも知れません。以前はグウィニス・パートロフと2人並んで、若いケネディー・カップルそっくりの路線でした。ケネディーの若旦那が生きていれば、ちょっとしたそっくりさんで、英雄の役が回って来たのではないかと思えないこともありません。と思っていたら、ブッシュ家の後継者になりそうな三代目の若い息子がまたアフレックとイメージが似ているのです。アフレックは個人的には民主党の支持者だそうで、ブッシュ家の将来を有望視されている若者のそっくりさんとは思われたくないでしょうが。アフレックには戦争映画、宇宙での戦いの映画、CIA など、一応英雄の役は回って来ていますが、どうもまだこれだという役に当たっていないですねえ。友達のマット・デイモンはこれまで何度か名前を覚えて貰えるようないい演技を見たことがあるのですが。アフレックがマネー・ゲームという作品に出た時は短い出演ながらかなり冴えた演技を見せていたので、テンションが上がれば結構行けそうです。まだ実力がスクリーンに現われていないような気がします。

後記: おもしろい作品が出るのは2006年頃から。長編監督は2007年頃から。パートロフもお姫様役、変な役柄から脱し、最近は意欲作と思える作品に出るようになっています。(2012年)

ロペスは大根役者とは言いましたが、元々ケイト・ブランシェットのような職業は目指していないのでしょう。華やかなスター商売向きの人です。しかし作品の選び方には気をつけているようで、コメディー・タッチの犯罪物アウト・オブ・サイトは良かったと思います。あれはデニス・ファリナ、マイケル・キートンなどと一緒にクルーニーを食ったと思います。その後はやや社会派の作品が多く、メッセージは分かるのですが、映画としての出来は良くありません。世界で一番パパが好き!にも親子関係重視というメッセージがたくさん盛り込まれていて、その意味では啓蒙作品なのかも知れません。ところが良く見ていると目が点になってしまうようなシーンが所々に出て来るのです。それが居直って楽しむポリティカリー・インコレクト路線とは全然違うので驚き。世界で一番パパが好き!は子供も見るかも知れないという作品なのです。年齢指定は11歳から13歳という国が多いです。そういう意味で脇の甘さにドッキリさせられてしまいます。ロペスが前半早々退散したのは賢明だったかも知れません。

時期的には世界的に有名になったアフレックとロペスのロマンスの時期と重なるのですが、映画の中では2人は全然乗っている様子は見えません。

ストーリーは単純。ニューヨークの音楽業界の仕事中毒ヤッピー青年が素敵な女性と結婚。ところが出産の時にその女性は死んでしまいます。これがロペスで、本人の登場は短いですが、その後も写真で登場します。

生まれたばかりの赤ん坊を抱え、仕方なく父親の所へ助けを求めに行きます。最初父親バートは息子オリーのことを気遣い赤ん坊の世話をしていましたが、本来祖父でなく実の父親が子供の面倒を見るべきだという本筋を通すため、祖父は自分の本来の仕事に出るようになります。祖父はニュージャージーで相棒2人と町の道路や電気工事を請け負っています。

カッコ良くニューヨークで風を切って歩いていたオリーは愛する人を失い、ストレスで仕事も失い失意のどん底。またいつの日か元の仕事に戻ることを夢を見ています。実生活の方では生まれたばかりの赤ん坊に焦点を合わせ、父親の工事の仕事を手伝いながらシングル・ファーザーをやることになります。シングルとは言っても、バートと同居している上、バートの2人の同僚がまるで娘のおじさんのように近くにいるので、家庭生活としては恵まれている方です。オリーが不満なのは《自分がやっている事は本来母親の仕事だ、自分は本来ニューヨークで風を切るのだ》と考えているからです。

映画の中では大きく触れていませんが、死んでしまった母親ゲルトルーデことロペスもニューヨークでは風を切っていたキャリア・ウーマン。ですから子供ができたからと言って、自分の仕事を辞めて家庭に収まるような人ではありません。生きていたらどんなストーリーになったか、これもまた興味が沸きます。

バートは自分も現在は一人身。奥方は随分前に亡くなっていて、身の回りの事は自分でやっています。皮肉なことに若いオリーより、年寄りのバートの方が、男性と女性の役割については公平な考え方を持っています。

娘は映画の後半はもう小学生。母親に似たのか、かなりのやり手で、父親をやりこめたりします。見ては行けないことになっているビデオをおねだりするのも上手。最悪なのは小学校で催される学芸会があり、家族ミュージカルにオリーも出演という話。オリーにはやる気は全然ありません。しかも題目はキャット。大反対のオリーは娘を1度ニューヨークに連れて行って、違うミュージカルを見せます。すると娘は「それでもいい」と言うので、親子、それにバートの友達や、最近知り合ったビデオ屋の女性などと一緒に練習を始めます。この別なミュージカルが床屋が人を殺すというストーリーで、小学校の親子学芸会には全然合いません。そこが世界で一番パパが好き!の見せ場の1つで、ユーモアになるはずなのですが、湿った花火のように不発。

ビデオ屋の女性マヤとオリーはロマンスが芽生えるような、芽生えないようなあやふやな関係になります。マヤは最初オリーをその辺の男と同じだと決め付けてやりこめようとしますが、未亡夫と分かると、同情しながら迫って来ます。このあたり映画の中の通常の男女関係がやや逆転しています。マヤは結局オリーの家族と色々関わることになりますが、オリー1人浮き上がっています。

羽振りの良い頃アシスタントとして使っていたアーサー(アメリカン・パイで3回主演を張ったビッグス。脇役も将来性ありそうです)が、オリーの再就職の手助けをしてくれることになり、アーサーの上司の業界人との面接にこぎつけます。オリーが首になったきっかけは、仕事と子育てでストレスの頂点に達していた時、大勢の記者がいる所でウィル・スミスに絡んで言っては行けない事を言ってしまったためです。7年以上の時間が経ち、誰か1人ぐらい彼を雇ってくれるのではと思ったのです。面接の日は運悪く娘の学芸会の当日。オリーはバートに代役を頼み、間に合わなかったら父親が出演するということで面接に行きます。

面接の待合室には別な用事でウィル・スミスも来ます。オリーは待っている間、ウィル・スミスとおしゃべり。すると話が子供の話題に行き、ウィル・スミスは自分の3人の子供について語り始めます。オリーも共感。自分はやはりニュージャージーで子供と過ごす方がいいと気づいて、面接をせず、飛んで帰ります。ぎりぎりのところでミュージカルに間に合いハッピーエンド。家庭の大切さに気づいたという話です。

とにかくつまらない出来なので何とかしなければ行けないということで、ウィル・スミスは本人役での出演。その他にマット・デーモンとジェーソン・リーがゲスト出演。しかしそれでもつまらなさは減りません。ロペスはひところのソフィア・ローレンのように魅力的なのですが、出番が非常に少なくファンはがっかりでしょう。

監督はと言うと、そうそう駄目な人ではありません。マット・デーモン、ベン・アフレック、ケヴィン・スミスはドグマでも共演していて、知らない仲ではありません。ジェーソン・リーとマット・デーモンとベン・アフレックは他にもスミスの作品には出ています。そういう意味では友情出演の傾向も強く、ファミリー的な雰囲気になり得たと思うのですが、世界で一番パパが好き!には残念ながらその様子は見えません。アフレックとロペスはこの頃もう1つの作品でも共演していて、そちらでは去年ラジー賞で最低作品賞、最低主演男優、最低主演女優、最低スクリーン・カップルに選ばれてしまいました。その駄目な作品というのはまだ見ていないのですが、世間は2人の将来の幸せを全然祈っていなかったみたいです。私は当時ロペスとパフ・ダディーのカップルの方がホットだと思っていましたが、ロペスとアフレックといううっちゃりにも感心したものです。しかしそれも敢え無く終わり。ロペス嬢には仕事をバリバリやるような男性が向いていると思うのですが、皆さんどう思いますか。

2人は今年もラジー賞にばっちりノミネートされていますが、今年は2人を越える強敵がいるので、受賞は無いのではないかと思います。

当時ベニファーと言われてからかわれていたアフレックは、ベニファーにはこだわったようで、その次のガールフレンドもジェニファーという名前なのだそうです。映画の中ではロペス嬢と夫婦にはなれましたが、すぐ死別する羽目になってしまっています。何だかつきの無い2人でした。

残念ながら私はこういうタイプの演技は嫌いなのですが学芸会ミュージカルのシーンでは歌える人ばかりなので感心しました。娘役の子供は特にミュージカル向きの根性を持っているという印象でした。ですからこの方面で将来性があるとは思いますが、いかんせん、私はこういうタイプが1番苦手。無理して良い所を探さなければならないような作品でした。

後記 1: アフレックは大化けして、現在名優、名監督への道をまっしぐらです。加えて弟のケーシーも馬鹿な作品にばかり出る時期を終え、オスカー候補にもなるような名優への道へ乗り換えました。どういういきさつでアフレックとデイモンがあの頃バックアップされたのかは今もって分かりませんが、いきなりオスカーを貰いながら登場。それから暫くスターとしてゴシップ欄ばかり賑わしていました。世界が大きく変わろうとしている現在、アフレック兄弟は本性を表わし、じわじわと実力を出しています。

後記 2: アフレック、ケーシー兄弟は映画人として手堅い才能の持ち主だということをその後も証明して回っていて、デイモンを抜いた感があります。そのデイモンも監督業に関心があると見え、やってみるようです。そしてアフレック・デイモン間にライバル意識が燃え盛っているという話も全く無く、3人ともマイペースで進んでいます。

参考作品:
ケーシー 存在感の薄い作品: アメリカン・パイ200本のたばこモナ 彼女が殺された理由 オーシャンズ(11−)13
ケーシー 俳優として大化け: キラー・インサイド・ミーゴーン・ベイビー・ゴーン
ベン 短いシーンで笑いを取る: スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい
ベン 短いシーンでインパクト: マネー・ゲーム
ベン 地味な良い演技: ハリウッドランド
ベン 出なくても良かった: ペイチェック 消された記憶、偶然の恋人、トータル・フィアーズ
ベン 監督作大成功: ゴーン・ベイビー・ゴーン、ザ・タウン(いずれ記事出します)

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