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ショーン・オブ・ザ・デッド /
Shaun of the Dead

Edgar Wright

2004 UK/F 99 Min. 劇映画

出演者

Simon Pegg
(Shaun - 電気製品店の店員)

Nick Frost
(Ed - ショーンの同居人、失業中)

Peter Serafinowicz
(Pete - ショーンの同居人)

Kate Ashfield
(Liz - ショーンのガールフレンド)

Lucy Davis
(Dianne - リズの同居人)

Dylan Moran
(David - ダイアンのボーイフレンドおよび同居人)

Nicola Cunningham
(Mary - 庭に迷い込んだ女性)

Gavin Ferguson
(近所でサッカーの練習をする少年)

Horton Jupiter
(近所で物乞いをするホームレス)

Penelope Wilton
(Barbara - ショーンの母親)

Bill Nighy
(Philip - ショーンの義父)

Jessica Stevenson
(Yvonne - ショーンたちの知り合い)

Julia Deakin
(イヴォンヌの母親)

レポーター、ジャーナリスト (皆本人役)

見た時期:2005年9月

2005年度ファンタ不参加作品

何でこれがファンタに出なかったのだろう。ファンタ、特に真夜中の狂気コーナー向きの作品です。

・・・とランド・オブ・ザ・デッドに書きましたが、ショーン・オブ・ザ・デッドについても同じ感想を持ちました。一般公開のスケジュールとの関係でファンタに呼んで来られなかったのかも知れません。外国ではドーン・オブ・ザ・デッドの公開後に出すため、映画が完成していたのに待たされたという話も聞いたことがあります。

このページの最後で軽く結末に触れます。ショーン・オブ・ザ・デッドは結末より、そこに至るまでの登場人物の態度や会話の方がおもしろい作品です。とは言っても見る予定の人、まだ話を聞きたくないという人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

タイトルは言わずと知れたドーン・オブ・ザ・デッドに引っ掛けた洒落。最近偶然ゾンビ映画が続いていますが、これも出来のいいゾンビ映画です。ゾンビというジャンルを使って社会批判をするというのが本来の目的だとすれば、ショーン・オブ・ザ・デッドには特に政治的な批判は含まれていません。敢えていうなら、人間関係、家族関係などをジョークのネタにしています。

最近良かったゾンビ映画をまとめてみますと、

・ 28日後・・・
動物愛護運動家が動物実験をやっている会社に入り込んで、実験に使われていた猿を解放してしまったことがきっかけで、英国がゾンビにやられてしまう。噛まれてからゾンビになるまでの時間は約28秒。ゾンビの動きも非常に速いので、人間は一瞬の決断を迫られる。非常にスピーディーなアクション映画。舞台はロンドン中心。

・ ドーン・オブ・ザ・デッド(リメイクの方)
説明抜きでゾンビに占領されたアメリカの町の物語が始まり、最初から最後まで攻防戦と逃避行に明け暮れる。噛まれてからゾンビになるまでの時間は数日。ゾンビの動きが速いのでこれもスピーディーなアクション映画。

・ ランド・オブ・ザ・デッド
ゾンビの創始者とされる監督の作品。原点に戻り、ゾンビの動きは遅い。人間が武器で対抗する時間は十分。原点に戻り政治、社会批判が全編にあふれる。最近の世相や戦争に重点を置いている。噛まれてからゾンビになるまでの時間は1時間から数時間。普通の手ぶらゾンビと違い武器を持つゾンビも出て来る。舞台はニューヨークを思わせるアメリカの大都市。

・ ショーン・オブ・ザ・デッド
これといった政治批判は含まれていない。どちらかと言うと社会、それも家庭環境や友人との付き合い方がギャグに使われている。おちょくってはいるけれど否定はしていない。噛まれてからゾンビになるまでに1度死ぬ。死後すぐゾンビに変身。頭をぶち抜くとゾンビにならずに済むらしい。ゾンビの動く速度はクラシック(遅い)。舞台はロンドンの一般住宅街。

といった具合です。ゾンビ映画は数が多く、ここに挙げたのは氷山の一角。私はゾンビの専門家でないので、見た作品の数は少ないです。それでも、有名な作品に触れたのかと思わせるシーンがチラッと出たりします。

ショーン・オブ・ザ・デッドではキャラクターのお勉強は十分できていて、病院に入院させるような意味で頭がおかしいのでは無い、しかし社会で十分に人に迷惑をかけている人たちがたっぷり描かれています。そういう人が社会に結構多い上、「そういうものだ」と受け入れられているような人たちです。その上問題な人が複数一緒に暮らしていると自分たちの間では全然問題が起きないので、ずっとそのままになって生きているという状態もネタの1つにされています。そういう息子を生んだお母さんがまた一般の社会からはちゃんと受け入れられるタイプの人。しかし虫眼鏡を出して来て彼女を良く観察してみると、ショーンがなぜそういう風になっているのかがチラリと見えてくる、等など全編キャラクター・ギャグの連続。それをゾンビという題材の中に嵌め込んであるところがユニークです。

映画館で見ただけですとこの映画の評価は10点満点で5点か6点ぐらいになったと思います。しかし私は偶然 DVD で見たため、本編を見た後もっと良い点を発見しました。まず映画の中でこれ以上のバカはいないという印象をふりまき、見ている私を怒らせた2人のキャラクター。ショーンとエドです。エクストラのインタビューを見てびっくり。特に準主演のエドは実は物静かでかなり頭も良さそうな青年。この人がどうやってあんなバカを演じることができたのか、英国、アイルランドはメソッド・アクティングのアメリカを抜いているのか、と感心したところです。

ドイツ語でも一応台詞は愉快でしたが、英語版を覗いてびっくり。英語の方がずっとハチャメチャで、愉快なのです。几帳面に翻訳した人には気の毒ですが、英語の良さかがかなり欠け落ちていました。間違っているとか言っているのではありませんが、英語版にあった勢いが翻訳の過程で静かになってしまった感じです。

マトリックス以来どの映画にもエクストラにこういうのがついて来るのだと思いますが、ショーン・オブ・ザ・デッドでも血が滴るシーンや、若い女性の胸に風穴が空くシーンのトリックが紹介されています。どうせ本当に女の子が死んでいるわけは無いと思っていましたが、こうやって撮影するんだというところを見せてくれ、納得。

中で1番恐いゾンビがショーンのお母さん。この人だけは生前からゾンビと同じ顔なのです。死んで変わるのは目の色だけ。ショーン・オブ・ザ・デッドではゾンビに変身すると目の色が薄いグリーンに変わります。他は普段と同じ姿で、死体を食べたりしたら手足に血がつくという程度にしか変化しません。他のゾンビ映画は舞台が夜だったりして、暗く、ゾンビは汚らしく汚れていますが、ショーン・オブ・ザ・デッドでは夜のシーンはほとんど無く、真昼間、明るい町で事件が起こります。

結局最後数少ない町の生き残りが出動して来た軍に救われ、その後メルヘンのごとくハッピーエンドに突入しますが、こういう結末のゾンビ映画はこれまで見たことがありません。小さな相違点ではありますが、ユニークです。他のゾンビ映画に比べ、その辺の街角の普通の生活をベースに話が進んで行くので、国が滅びるとか、人類が滅びるという次元ではありません。その分人間関係に大きな比重がかかっていますので、先に典型的なゾンビ映画を見て、その後にショーン・オブ・ザ・デッドを見ると楽しいかと思われます。

監督の顔がフレディー・マーキュリーにそっくりなためか、クイーンの曲が何度か流れます。バットマン、ダイア・ストレーツには反感があるらしく、主人公がレコードをゾンビに向かって投げて壊してしまいます。

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