映画のページ
2004 Thailand 98 Min. 劇映画
出演者
Ananda Everingham
(Tun - カメラマン)
Natthaweeranuch Thongmee
(Jane - トゥンのガールフレンド)
Achita Sikamana (Natre)
Unnop Chanpaibool (Tonn)
Chachchaya Chalemphol
(トンの妻)
Unnop Chanpabaibool
Titikarn Tongprasearth (Jim)
見た時期:2005年8月
ファンタ全体を見るとやや弱いかと思いますが、オープニング作品の直後というのはいいスケジュールでした。オープニングの日にはメインの作品がまず登場。ここにはハリウッドスターの名前が並ぶことも多いです。でなければ去年のように無名ながら超ユニークな作品が来ます。その日1本だけで帰るということはまず無く、たいていもう1本続きます。そこに置かれたのが鬼影です。
タイは映画大国ではありませんが、時々ポッとできのいい作品が飛び込んで来る国。鬼影は筋がユニークというわけでもなく、大アクションでも無いのですが、観客を最後まで引っ張って行ける作品でした。
今年はカメラにまつわる作品が前半にいくつも続きましたが、その第1弾。今流行りのデジタル・カメラではなく、ニコンなどのクラシックなカメラ。暗室で現像する普通のフィルムが使われています。鬼影では PC の前に座ってフォトショップで撮影ミスを修正したりすると、話に説得力が無くなってしまいます。わけの分からない光に感光して・・・という筋運びにならないと幽霊が出る幕が無く、《変だ》、《恐い》、《ぞーっ》という展開にならないのです。
後記: そういう意味ではデジタル画像などという新技術が登場したことで、幽霊話のきっかけが1つ死に絶えてしまったことになります。写真術という新技術が登場した1827年以降にそれを幽霊話と結びつけるという粋な事をした人に感謝。長い間ありがとう。
★ あらすじ
カメラマンが知り合いの卒業式の写真を頼まれます。彼にはガールフレンドがいて、ある夜、友人の結婚披露宴の帰路、少女を轢き逃げしてしまうという出来事がありました。ガールフレンドは「様子を見よう、助けを呼ぼう」と言ったのですが、カメラマンはやり過ごそうという意見でした。
写真を頼まれたのはその少し後なのですが、卒業式の写真はどういうわけか被写体の顔の部分に光が当たっていて使い物になりませんでした。私も少し写真をかじったことがあるので、フィルムに喜ばしくない光が入ることがあるのを知っています。たいていは巻き戻しをした時にフィルムを全部缶の中に引っ張り込んでしまって起きます。1ミリ程度の隙間から光が入り、そこにあった画像が感光してしまうのです。これで影響を受けるのは最後の方にある写真。フィルム全部がやられるということは無いです。対策としてはフィルム交換をする時に暗室でやるか、一時的に暗室状態を作ってそこでやるという方法があります。背広の上着を被せて両方の袖から手を入れ、フィルムは暗い所に置いたまま交換し、出したフィルムを速やかに光の入らない容器にしまってしまうというのも1つの手。デジタル・カメラですとそんなややこしい事をする必要はありませんし、今撮ったばかりの写真をうまく撮れているかすぐ確認できます。世の中はどんどん進歩。
さて、クラシックな方法で撮影したので、写真がだめだと分かったのは暫く経ってから。その後主人公のカップルの周囲で徐々に妙な事件が起きます。車の事故のカップルでは2人の間に少しずつ亀裂が生じます。轢き逃げ事件を起こしたので気が咎めるジェーンと、忘れようと仕事に没頭するトゥンの間がギクシャクして来ます。仲間の方には徐々に死人が出ます。冒頭のシーンでテーブルを囲んで楽しく飲んでいたのが嘘のよう。事件全体が妙な幽霊話になって来た時、ジェーンは意を決して事件の後を追い始めます。
追いかけられていた人が180度方向転換をするというのはいい考え。やがて轢き逃げ事件はそれ自体が問題なのではなく、その裏にもっと重大な事件が隠れていることが分かり始めます。ここまで来ると日本のホラー映画、ゴシカ、デビルズ・バックボーンなどを引き合いに出したら良いような展開になります。ですから鬼影はユニークなわけではありません。それでも最後まで見ていられるのは、キャラクターが良く書けているからなのではないかと思います。妙な死に方が続く友人たち。徐々に自分の番が近づいて来るのに何もしない主人公、きちんと葬儀を出しても引っ込まない幽霊、まだ何かあるぞと観客を落ち着かせない監督・・・。
夏の夜はゆっくり幽霊話をお楽しみ下さい。西洋の幽霊は冬に出るのですが、日本は夏。来年まで待たされるかな。
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