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2006 USA 110 Min. 劇映画
出演者
Predrag Bjelac
(教会の天文台担当者)
Carlo Sabatini
(Fabretti - 枢機卿)
Bohumil Svarc
(ローマ法王)
Marshall Cupp
(Steven Haines - ローマ勤務のアメリカ大使)
Liev Schreiber
(Robert Thorn -ハイネスの部下)
Julia Stiles
(Katherine Thorn - ロバートの妻)
Seamus Davey-Fitzpatrick
(Damien - ソーン夫妻の息子)
Tomas Wooler
(Damien、2歳)
Zikova
(Damien、新生児)
Muller
(Damien、新生児)
Litera
(Damien、新生児)
Morvas
(Damien、新生児)
Amy Huck
(ダミアンの初代乳母)
Mia Farrow
(Baylock - ダミアンの2代目乳母)
Giovanni Lombardo Radice
(Spiletto - 病院で働く神父)
Pete Postlethwaite
(Brennan - ソーンに忠告する神父)
David Thewlis
(Keith Jennings - ソーンを取材するカメラマン)
Michael Gambon
(Carl Bugenhagen)
見た時期:2006年月
なぜだか分かりませんがこの作品は批評家の間では非常に評判が悪いのだそうです。興行成績の方は比較的順調だったらしく、続編の話もチラッと耳にしました。オリジナルの方には続編があるので、リメイクの実質的な収入が大きかったら続編も作られるでしょう。
たいていのリメイクを見ると、2度作る必要が感じられないのですが、時にはリメイクだということを考慮せず、それ1作としてちゃんと見ていられる佳作もあります。新オーメンはそういう作品で、不思議なことに主演はリエフ・シュライバーです。
何が不思議かと言うと彼がちょっと前に撮ったクライシス・オブ・アメリカもそういったリメイクで、リエフ・シュライバーはメリル・ストリープを相手に健闘していました。彼は短時間登場しても良い印象を残す人で、さほど美男でもなく、芸能界で大袈裟な事をしているわけでもないのに、チラッと記憶に残る人でした。知らない間に私は結構な数見ていました。
スターで売り出した人ではなく小さな役が多かったのですが、端役は十分勤めたと認められたのか、最近は大きな役が増えており、オーメンでは立派な主役。それも魅力的な仕上がりです。オーメンは本来オカルト映画で、演じる人の魅力は横に置いて、怖い呪いとか悪魔の登場が中心になるべきジャンルですが、新生オーメンはそれをちょっと捻って、リエフ・シュライバーの魅力、推理物仕立て、不気味な乳母などに適度な比重を置いて、子供1人に注目が集中しないような作りになっています。仕上がりが手堅く、久しぶりに職人の手仕事を見たという印象でした。
オカルト映画はホラー系と分類されるもので、ショック・シーンが多いものだと普通なら思います。最近はホラー物が大受けで、ショック・シーンの大盤振る舞い。しかしそうなるとストーリーがかすんでしまい、推理や人間ドラマにも興味のある観客には飽きられる危険があります。そこへこういう作品が出て来ると、オカルトでありながら一般の客にも受けそうで、うれしいです。
ショック・シーンは極力押さえてあるのです。頻度も描写も押さえ気味で、見終わって上品だという印象を受けました。普通の映画ファンが見てもこの程度の量なら納得しますし、息子のルーツを追って行くシーンは探偵風。ダミアンの父親の態度は普通の官僚として常識を外れず、オカルトやホラー的な夢の世界の出来事にしてありません。それでいてメイン・ストーリーはしっかりオカルトなのです。
オリジナルの1976年版をしっかり踏襲していてほとんどストーリーは逸脱しません。私のように両方見る人もいるはず。そうなると二番煎じだろうと見る前から失望する準備をして映画館に来る人がいるはずです。そういう人の観賞にも耐えるようになっているのは、脚本の細かい配慮とそれを理解して演じているシュライバーやファーローの力でしょう。
そうです。あのローズマリーの赤ちゃんのミア・ファーローが久しぶりに大きな役で出演しているのです。主だった出演者の役名はオリジナルを踏襲。ファーローはベイロック夫人の役です。以前は主演を張っていた彼女、フランク・シナトラ、アンドレー・プレビンと音楽の一流どころを制覇。(半数は養子で)子供を6人もうけ離婚。映画監督と有名な女優の娘なので、やる事は派手でした。ウディー・アレンと生活を始めてからはあまり大きなヒットは出ませんでしたが、結局13人の子持ちに。世界各国の子供を養子にしていたようです。これだけの子育てを映画出演の横でこなすのはかなりの根性。アレンとのトラブルもなんのその。大ヒットは無いとは言え、彼女は毎年映画に出続けています。
先入観を持たれ易い人と思いますが、彼女はルーマニア・ハンガリー人のターザンことジョニー・ワイズミュラーとその恋人、後の夫人ジェーン・パーカーの間に生まれた子供ではなく(笑)、ジェーン役をやっていたモーリン・オサリバンと映画監督ジョン・ファローの間に生まれた子供です。オサリバン・ファロー夫妻は夫のファローが死ぬまで27年一緒で、7人の子供をもうけています。オサリバンはアイルランド人だったので、カソリックだったのかも知れません。オサリバンは2度結婚していますが、再婚も15年ほど続き、いずれも夫とは死別。本人は87歳まで生きました。
そういう人の子供だったので、ミア・ファーローに子供が多いのは親譲り。彼女は何度か結婚しており、著名な人の名前が並びます。フランク・シナトラ(2年で離婚、子供無し)、アンドレー・プレビン( 9年で離婚、子供6人、うち3人養子)、ウディー・アレン(正式に籍を入れずプレビンと別れた後同棲、アレンとの間には子供が1人)。子供は全部で13人という話もあります。養子が多いのでしょう。どうやら自分で産んだ子供は4人のようですが、4人というのも現代では多い方です。
アレンとの関係はかなり長く続いていましたが、最後はご存知のようにやや悲劇的。プレビンと結婚中に養子にした韓国人の女の子がのちにアレンと関係を持っていることが奥方にばれ、アレンとの関係が崩壊します。アレンはその後奥方の娘と正式に結婚し、子供が2人いるようです。正式でないとはいえ、ファローは一応奥方。アレンは彼女が1番嫌がりそうな事をして関係を終えたことになります。ところが当時の世間はアレンを容認する方向に動いたため、私はあまり好きでなかったファローに初めて同情しました。深く傷ついたことでしょう。
顔を見ると意外と地味な人で、性格についてもメディアが報道しているどこまでが本当なのか見えにくい人です。有名だった頃ノイローゼ気味の役が多かったので、そのイメージが被り、13人の子供を育てるパワー・ウーマンとマッチしません。いくらスターでも13人分の衣食住、学費、旅費などを負担するとなると、そうそう贅沢な生活をしているわけではないでしょうし。
その彼女、オーメンでは怪しい乳母の役なのですが、いかにも怪しいという感じにせず、変な疑いを持っていなければ、普通のおばさんに見えるように演じています。終戦直前の生まれなので、もう結構な年のはずですが、若作りという感じでない若さを保っています。私は彼女のファンではなく、どちらかと言えば悪いイメージを持っていたのですが、オーメンを見る限りそのイメージは引っ込めたくなります。
昔のオーメンをご存知なら筋の説明は全く必要ありません。肝心な所はそのままいただいています。98%程度。それほど前の作品とそっくりなのに、退屈しませんでした。オリジナルをご存知無い方のためにちょっと説明を。
冒頭バチカンが登場。不吉な星の動きを察知して、過去の災厄、今後予想される災厄が語られます。
外交官夫妻のロバートとキャサリン・ソーンはこれまで死産が続いていて、子供がいませんでした。ちょうど今キャサリンが赴任先ローマで出産。やはり死産でした。その知らせを受けたロバートに病院付きの神父が養子を勧めます。ちょうど子供が生まれ、母親が死んだのです。妻の悲しみを考え、話を承諾。妻には秘密。やっと子供を得たキャサリンは大喜び。2年間幸せな日々が続きます。オリジナルを踏襲して、当時はまだ誰も知らなかったDNA検査は考慮していません。
ロバートが忠実に仕えていたローマ大使がロンドンへ転勤になります。ロバートはその時大使に推薦され、代理大使としてロンドン赴任が決まります。引越しの直前ローマ大使はファイナル・デスティネーション風の不運に見舞われ、事故死。そのため若干30歳台の年齢でロバートがロンドン大使になります。その後も3年ほど幸せな日々が続きます。
ところがその後乳母の奇妙な自殺、動物園で起きる騒ぎ、教会に行こうとするとヒステリックに叫ぶ息子ダミアンと不思議な出来事が起きます。ロバートは得体の知れない神父に警告を受け、キャサリンは死んだ乳母の後任と上手く行かず、ノイローゼ気味。夫は相談事を聞いてくれますが、非現実的な話は受け入れられません。
ついにある日キャサリンは家の3階から転落して重傷、入院。この時点でロバートは実は養子だったダミアンの素性を探り始めます。その頃ロバートをずっと取材していたカメラマンも妙な事に気付いてロバートに連絡を取って来ていました。2人はいくつかの点について話し合った末、協力することになり、調査のためにイタリア、イスラエルへ旅立ちます。
イタリアではダミアンが生まれた病院がその後大火に見舞われ、当時を知る人は大火傷を負っていました。証拠隠滅です。ロバートに養子を勧めた神父をようやく見つけ出し、ダミアンの母親の墓を見つけます。墓の中にあった物は・・・。イスラエルでは怪しい神父が警告の時に口にしていた人物を探し当て、悪魔払いの武器を手にしますが、その時カメラマンが命を落とします。
残ったのはロバート1人。果敢に悪魔に立ち向かいますが、リメイクでもオーメン2の準備が必要なので、結果はご想像の通りです。
ジュリア・スタイルズは今回もまたミス・キャスト。大人っぽいシュライバーに対して表情が少女っぽく、大使夫人に合いません。元々予定されていたローラ・リニーやレイチェル・ワイズでは《元は幸せな2人》という感じが出ず、不幸や影の部分が強くなり過ぎるかと思えるので、ケイト・ウィンスレットに任せれば良かったかと思います。しかしウィンスレットを提案した人はいなかった様子。元は幸せいっぱいの若夫婦で、流産を経験し、失望するけれどけなげに生きる若妻という役。3度目の正直で無事生まれた息子と5年間幸せに暮していたという役なので、最初は幸福、健康そうにしていないと行けません。そして外交官夫人なので、ある程度贅沢に慣れていて、かつ流行ばっかり追っている有名ホテル経営者の娘という感じになっても行けません。まだよれよれ、くたくたになっていない、しかしティーン・エージャーの面影は消えている、アホには見えない若い女性が必要。スタイルズにお母さんをやらせるのは、CIAのロギスティックと同じく無理です。
しかしそういうアラも補い切れる佳作に仕上がっています。
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