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マイアミ・バイス / Miami Vice

Michael Mann

2006 USA 134 Min. 劇映画

出演者

Colin Farrell
(James Crockett - 警察所属の囮捜査官)

鞏俐
(Isabella - 麻薬取引のやり手の女)

Jamie Foxx
(Ricardo Tubbs - 警察所属の囮捜査官)

Naomie Harris
(Trudy Joplin - リカルドの恋人)

Barry Shabaka Henley
(Castillo - ジェームズとリカルドの上司)

Ciara'n Hinds
(Fujima - FBIの責任者)

Justin Theroux
(Zito - 麻薬取引の元締め)

Luis Tosar
(Arcángel de Jesús Montoya - 国際麻薬取引の大本締め)

見た時期:2006年8月

要注意: ネタばれあり!

なぜかその辺のブログを見ると評判が悪いのですが・・・。

その辺の話は無視。独善と主観で行きます。

映画監督としてのマイケル・マンの作品数はそれほど多くありません。私はたまたま見る機会があったので、数本見ていました。その中ではこの劇場版マイアミ・バイスが最高でした。他の作品にも気合は入っていますが、長過ぎたり、登場人物が多過ぎたり、見所がほんの数シーンだったりと、いくらか不満が残っていました。劇場版マイアミ・バイスは画面、ドラマ両方に見所があり、物語の進展のテンポは速く、退屈しませんでした。カリブの海賊ほどではありませんが、結構長いんですよ。

マンは監督以外の仕事も多く、テレビ・シリーズの特捜刑事マイアミヴァイスでは制作に関わっています。早く言えば彼が作ったわけです。聞くところによると歴代のテレビ・シリーズの中で1番成功した番組なのだそうです。古いところでは彼はアンジー・ディッキンソンの女刑事ペパーの1本も撮っています。

さて、ドイツでもかなりヒットしていたテレビ版特捜刑事マイアミヴァイス。その劇場映画化です。私はテレビは見ていないのですが、評判はかなり良く、それを越えられるかも見所の1つだったようです。フォックスなどは「テレビとは違うよ、そのつもりでリラックスして見てくれ」などと言っているので、気合が入っておらず、気の抜けたコーラのような作品かと思っていました。

見下した予想は大はずれ。テレビ版の大体の評価は耳に入っていたのですが、それとは全然様子が違い、気合たっぷりです。例えばヒートの戦闘シーンを拡大したような緊迫感あふれるシーンは期待していいです。

主演のうちフォックスは最初から決まりで、これは監督とのコネが理由。劇場番の言い出しっぺがフォックスです。彼はアリに出ていますし、最近はフォックス主演で1本撮っていました。失礼、クルーズが主演でしたっけ。クルーズは最近PR係の人選を誤り、こけていますが、フォックスの方は人気上昇中。その彼がマイアミ・バイスに出ると聞いたので、テレビの人気にあやかったリメイクかなどと見下していましたが、テレビを知らない私は劇場版を見て感心してしまいました。

全体的にはフォックスは押さえて、ファレルが目立つようにしています。監督に呼ばれて第一指名のフォックスがこの謙虚さ。なるほど、役上の主演を立てているんだなと感心。

マン監督とフォックスの間でリメイクをする話がまとまったところで連れて来たのがコリン・ファレル。彼はちょっと前まで飛ぶ鳥を落とす勢いでしたが、最近はやや静かに。しかしちやほやもてはやされている上昇中の新人俳優の中では、演技はできそうだと思って見ていました。ハリウッドというのはシーズンのようなものがあって、1、2年もてはやした後、ポイっと捨てるかのように宣伝活動を引っ込めてしまったりするので、キャンペーンが静かになったのだろうと思っていました。

以前はアンジェリーナ・ジョリーとのロマンスが噂されたりしていましたが、あまり激しい飲み方に、ジョリーが恐れをなして逃げ出したなどというゴシップがある人です。アイルランドとかスコットランドの人が普通に飲む量、強さは、アメリカ人でも付いて行けないこともあるようです(1度ファレルとユアン・マグレガーの飲み比べを見物してみたいです)。ジョリーに逃げられたのは彼にとって幸いだったのかも知れません。なんでもその後ファレルに子供ができて、結婚こそしないけれど、ちょっと落ちついたと言われています。この辺はゴシップの又聞きなので、信じなくてもいいです。

その彼ですが、大勢のS.W.A.T.に狙われ演技力を要求されるきつい役のフォーン・ブースは置いて、私が見た作品はあまり難しい役ではありませんでした。しかしS.W.A.T.リクルートに出ていたため、警察関係者の役はもう慣れていると見え、戦闘態勢の時の体の動きなどは軽くこなしていました。さらにそこへ微妙な表情の演技を盛り込む余裕もあり、見ていて倍の満足。

彼の出で立ちはもさっとしていて、フォックスの方が切れる感じを出しています。2人はマイアミ警察の刑事。ちょうど囮捜査に関わっていたため、ヤーさんに見えてもおかしくないお姿。

ネタばれ開始!

警察の要請で情報などを探っていた男から「命が危ない」ような電話が入り、間もなくその男は死んでしまいます。どこからか捜査の情報が組織に漏れていた様子。この話を上司に報告したところ、FBIが企んでいた囮捜査と警察の情報屋のルートが絡み合って衝突してしまったとのこと。

警察の2人(フォックス、ファレル)は上司と一緒にFBIに抗議。その結果2人がアンダーカバーとして組織に入り込み、大物を狙うということで話がつきます。2人には他に男女数人仲間がいて、皆やくざということにしてあります。上司はその枠の外で見守り、必要とあらばS.W.A.T.のような部下、ヘリ、飛行機を動員できる体制にしてあります。

さて、組織に乗り込んで行くためにまずは裏の社会のドラッグを横取り。商売の話をつけに行くと、そこにはラテン系の中国人の女が。大ボスの女で経理担当です。黒い社会で経理と言うと、普通はお金のお洗濯。本気か作戦か最初よく分からなかったのですが、シングルのファレルは彼女に一目惚れ。フォックスの方には普通の社会の恋人がいます。女から綻びが生ずる良い例です。

組織には順調にもぐり込め、ボスの女も頂戴。「自分はボスの妻でも何でもなく、好きな男と寝る」と自立を強調した鞏俐。これはボスとの間で全然問題になっていません。なるほど、プロは仕事と私生活は分けるんだ・・・などと納得していたら、やはり拗れました。

マッチョ男がはびこるラテン・アメリカで自立しているのは立派ですが、彼女が手に入らず不満を持っている小ボスが1人。後から来たファレル演じるジェームズがあっさり彼女をモノにしてしまったのでカッカ。それで大ボスに「彼女は本気であいつに惚れている」と告げ口をするのです。

彼女が仕事の合間に時々つまみ食いをするのをいちいち咎めていない大ボスだったようですが、他の人のいる所で手下に言われてしまうと示しがつきません。それで彼女はとっ捕まってこの手下に払い下げ。その上ジェームズに圧力を加える手段にされてしまいます。

ジェームズの火遊びを気にかけていたフォックス演じるリカルドの心配が現実に。鞏俐とコリン・ファレルはここで良い演技をしています。2人は自分たちの運命を最初から悟った上でのお付き合いのつもりでした。ですから彼女はとっ捕まった時、自分の運命がいかなる物か覚悟が決まっている様子。ジェームズの方は何かあった時の準備は半分ぐらいできていましたが、目の前で彼女がとっ捕まっているのを見ると助けてしまいたくなる、どうしようもないロマンチスト。こういうアホな役をやらせると、コリン・ファレルには説得力があります。他の俳優にやらせると情がこもり過ぎて嘘臭くなるか、演技が下手で嘘臭くなるか、いずれにしても信憑性の無い演技を見せられるでしょう。

ファレルの演技は表情が良くて、「全く同じ状況が逆になって起こったら、鞏俐ならファレルを見殺しにして自分が助かろうとするだろうなあ」と思わせてくれます。この時の鞏俐の助かるはずが無いのに助けてもらって戸惑っている様子がいいです。

鞏俐はドイツでは超有名な中国人俳優なのですが、これまでは演技が荒い、監督の使い方が良いから良さそうに見えているだけという印象の人でした。私が見たのは一連の中国からの作品で、SAYURI 他のハリウッド作品は見ていません。ドイツでの評判も堂々としているという類のものが多いのですが、マイアミ・バイスではそれを越えた複雑な表情が見られました。

テレビを知っている人の評価と私の評価、違っているのではないかと思います。そういう意味ではフォックスの「テレビとは切り離して、エンターテイメントとして見てくれ」は当たっているかも知れません。自分で作った作品を自分でパクる監督もいますが、自分で作った作品のイメージを自分でぶっ潰す監督もいるようです。「自分でやるんだからいい、勝手にしてくれ、できあがりがおもしろければそれでいいんだ」というのが私の意見です。マイアミ・バイスは活劇としておもしろかったです。

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