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サンシャイン 2057 / Sunshine

Danny Boyle

2007 UK 108 Min. 劇映画

出演者

真田広之
(金田 - キャプテン)

Cillian Murphy
(Capa - 物理学者、ミッション全体を把握している)

Rose Byrne
(Cassie)

Michelle Yeoh
(Corazon - 生物学者、植物栽培、酸素補給係)

Benedict Wong
(Trey - データー入力担当、船で言う航海士)

Cliff Curtis
(Searle)

Chris Evans
(Mace - エンジニア)

Troy Garity
(Harvey - 通信技師)

Mark Strong
(Pinbacker - イカルス1号の乗組員)

見た時期:2007年4月

2007年春のファンタ参加作品。

内容にかなり触れますが、1番肝心な結末はばらしません。

春のファンタの目玉とも言える作品です。普段はあまり人に自慢したくなることは無いのですが、この作品を他の人に先駆けて見られたのはうれしかったです。是非大スクリーン、音響効果のいい映画館でご覧下さい。楽しみが倍増します。

結構長く感じましたが、標準的な108分です。長いというのは退屈だという意味ではなく、出来事満載という意味です。

★ パクっても上手く料理してあれば美味い

プロットはパクリまくり。見ながら有名なSFを色々思い出して下さい。すでにカルトだと騒がれていますが、そういう評判にふさわしいです。バイオ・ハザードはプロットはパクリまくり、代わりにメッセージを前面に出していましたが、サンシャイン 2057もプロットは新しい物は考えず、代わりに嘘を本当と思わせる説得力のある画面です。

★ すてきな宇宙船

これまで宇宙船の中を描いた作品の中で最高だった2001年宇宙の旅を抜いたと言えます。もう2001年はとっくに過ぎたのでそろそろバージョン・アップがあってもいいと思いながらすでに6年。ようやくカブリックを越える作品が出たという感じです。

後で筋をご紹介しますが、宇宙船の内部、付近が重要なので、そこにたっぷりお金をかけ、本当に何百メートルもありそうだ、船内を一回りするのに何時間もかかりそうだと思える描写です。あれだけのスペース感を出せたので、できれば2001年宇宙の旅のように最初たっぷり時間を取って船内の生活紹介に使ってくれれば良かったのにと思います。やや物足りなかったです。

サイレント・ランニングと似た温室が出るのですが、そのシーンももう少したっぷり見せてもらいたかったです。そうするとそれが失われた時の喪失感がもっと伝わるように思います。ベルリンにはすばらしい植物園があるのですが、それをこの宇宙船に持って来たかのような印象を受けました。ただそれをやると全体が3時間ぐらい行ってしまうだろうと思うので、それはダイレクターズ・カットに期待するしかないのかも知れません。

★ 上手に使った色

最近ドイツはどこへ行ってもオレンジ・カラー。いくら良い事をシンボルにしているつもりでも、他の選択肢が隅に追いやられ、これほど前に、前にと出されると食傷気味。サンシャイン 2057はそこを上手に処理し、洋服や調度品はオレンジにせず、翳りの見えた太陽がいつもの白に近い真黄色でなく、夕陽のようなオレンジ色になっているという趣向です。それも真オレンジではなく、燃える太陽なので、暗い所、明るい所が混ざり、オレンジの使い方に説得力があります。なかなか工夫があり、オレンジ・ブームが去った後で見ても違和感がないのではと思います。

★ アンバランス効果

ちょっとバランスの良くない国際クルーを演じるのが各国の俳優。真田はキャプテンです。バランスが良くないのはわざとで、喧嘩などが起きる仕掛けです。日本人真田、国籍不明、ロンドンで活躍しファーストネームが欧米風、苗字が中国風で中国人に見えるウォン、元ミス・マレーシアのヨー、マオリ人カーティス、アイルランド人マーフィー、アメリカ人エヴァンスとギャリティー、オーストラリア人バーン(春のファンタ2度目の登場)。他に登場する人は英国人ストロング含め出番は僅かです。

真田のファンタ登場はこれが初めてではなく、昨年の春のファンタでも無極で光明という将軍を演じていました。日本から来る映画はちょっと見劣りがしたのですが、このサンシャイン 2057はなかなかの力作で、そこに出ているというのは誇っていいのではないかと思います。渡辺兼と比べられることも多く、出遅れたというような風評も聞いたことがあるのですが、こういう作品にドンと顔を出しておくと損は無いと思います。単なる映画ファンの私としては国際的に活躍する人が2人の方が1人よりいいように思うので、何も渡辺と競争させる必要は無く、間口を広げてくれればと思っています。

★ ストーリー

さて、話を元に戻しますが、クルーが徐々に減って行くのは7年前に消息を絶ったイベント・ホライゾンや9年後にオトシマエをつけようとした2010年を思わせるような出来事があるからです。出来事全体は2057年を設定して語られています。私たちでもまだ生きているかもしれない、それほど遠くない未来の話です。

ここから具体的な内容に触れます。見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

2057年から数えて7年前、太陽が輝くのを止めたので世界は凍りつき、こりゃ困ったというので、アルマゲドンザ・コアと同じ事を考えてミッション・トゥー・サンを企画します。イカルス1号というロケットを打ち上げたまではいいのですが、出た切り帰って来ません。多分ロケットの命名がまずかったのでしょう。

こりゃ困ったというので後続部隊イカルス2号を送り出します。なぜかフェニックス号と名付けず、イカルス2号となっています。これが最後の試みで、失敗するともう後がありません。ミッションは7年前の部隊の行方をつきとめることではなく、あくまでも太陽を再生させること。まるでゴミの山にマッチを1本投げ込んで、大火になる事を期待しているような計画なので現実味はゼロですが、そこは監督お得意の説得力で、アラは目立ちません。

日本人をキャプテンとする国際グループは技術者、科学者などの混成グループです。皆一応役目に忠実ですが、時たま争いも起きます。そして映画が始まる頃には地球とのコンタクトが難しくなる場所に来ており、クルーの1人キャパが家族に最後のメッセージを送ります。

無重力を無視して8人の乗組員はとりあえず退屈な日常生活を送っています。太陽に魅せられてテラスに長居する者もいます。当然の事ながら紫外線にあたり、日焼けし過ぎてしまいます。

そうこうするうちにあろう事かイカルス1号の遭難信号が飛び込んで来ます。ミッションを実行するために信号を無視するか、あるいは消息を調べるためにイカルス1号に接近するかで喧喧諤諤の揉め事。結局ゴミの山に放り込むマッチは1本より2本の方がいいだろうということで、イカルス1号にドッキングすることに決まります。

さらにもう1つの《あろうことか》が起きます。データー入力でミスが生じ、イカルス2号は予想外の動きをしてしまい、ロケットに大きな損傷が生じます。責任を感じたトレイは自殺の危険があるということで眠らされます。ボイルの作品はありそうもない話をありそうに語るのが大きな特徴。観客は「無重力はどうするの」という疑問はきれいに忘れています。何と中国人が食堂で普通に炒め物を作っているのです!!!

真田が後のインタビューで「自分は撮影準備の合宿中に皆のために料理をしたから船長の役を射止めた」と発言しています。冗談でしょうが、何となく納得できる話です。

外部の破壊状況を確かめ、救える部分は救おうと外に出たのが金田船長と物理学者キャパ。一方内部では酸素が多い植物園のセクションが大火になっています。丹精込めて植物を育てていた生物学者コラソンはサイレント・ランニングのブルース・ダーンになり切って心のそこから悲鳴を上げ嘆きます。

外でねじ回しを手に修理を重ねていた船長とキャパもまずいことになって来ます。修理をする2人は外にいる間ロケットの陰に入っていなければなりません。でないと高温で溶けてしまうのです。ところが航海士のミスでロケットの角度変更が間に合わず、船長がミッション全体を把握しているキャパを残して燃え去って行きます。

必死の作業を終えて戻って来たキャパ、船内外の状況を確かめる乗組員。新しいキャプテンを決め、残っている船の能力と食料や酸素の状況はと見てみると、絶望的な現状に直面していることが判明します。新しいキャプテンは金田船長ほど人格者でなく、元からそれほど親密ではなさそうだったクルーは険悪な雰囲気に。しかしイカルス1号とのドッキングで望みが繋がります。

イカルス1号には2号で失われたものが全部残っていて、使える状態。食料も残っていました。しかし4人連れでやって来た男性クルーのうち1人が1号に残ってドアロックを作動させないと他のメンバーも2号に戻れなくなってしまいます。太陽をこよなく愛したサールが残ることになります。ああ、悲しみのスペース・カウボーイ

2号から1号に移る時には通路があったので、みな普段着のままやって来ました。ところがなぜかその後通路が破壊されてしまいます。ですから宇宙服が無いと戻れません。しかし宇宙服は1着しかなく、それはキャパが着ています。残りの2人は無防備のまま何メートルか宇宙空間を通ってイカルス2号にたどり着かなければなりません。1人は新任のキャプテン。このシーンは嘘と分かっていてもスリル満点です。サールが残ることになり、キャパは宇宙服を着たまま。メイスとハーヴェイが無防御のまま。1人を救うことには成功しますが、2人は救えませんでした。8-1-2=5人。そして自殺の危険のあるトレイが現在冬眠中。活動できるのは男女4計名。

動ける人数が半減し、装備もガタガタ。地球へ戻れるかより、目的地にたどり着けるかが問題になるようなぼろぼろの状態で予定の場所へ向かいます。こういう不都合な真実を引きずりながらイカルス号はアルマゲドンよろしく目的地に向かいます。地球は果たして救われるのか・・・。

★ パクってもいい

とまあ盛り上げられるだけ盛り上げておいて、この後は謎までが出て来ます。2号の破損で植物園が使えず、酸素供給も滞ります。1号の植物園が使えるはずだったのに、それはドッキング通路破壊で不可能になります。ですから今後5人は残った酸素を分け合って生きていかなければなりません。そこで嫌な討論が始まります。嫌な結論が出て、1人がトレイを探しに行って発見したのは自殺死体。ところが2001年宇宙の旅のHALの女性版とも言えるコンピューターの声が、計算の合わない事を言い出します。確か残ったのは4人のはずだったのが、なぜか1人増えてる・・・。確かこれはSFで幽霊話ではなかったはずなのですが・・・。パクリまくっているのにオリジナリティーも忘れておらず、ピッチ・ブラックを初めて見た時のような新鮮さも漂います。

こういう作品をつきつけられると、パクってどこが悪いかと居直られたような感じで、一種痛快です。

悪役を見慣れていたマーフィーですが、ボイル監督と組むとそれほど悪役ではなくなります。サンシャイン 2057のクルーには悪役というのは無く、ちょっとだけエゴイストな人も混ざったクルーが次々襲って来る災厄に対処する様子を描いた映画と言った方がいいです。

驚愕の謎解き、運命の結末には触れないでおきましょう。それはぜひ大きな映画館でお楽しみ下さい。

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