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Code of Silence: Inside the Rampart Scandal

セルラーの元ネタ - Rampart Scandal

Chris Sikorowski

2004 USA 27 Min. 再現映画とインタビュー

本人出演

Scott Glover

Matt Lait

Kevin McKeeson

Richard Rosenthal

Bernard Parks
(署長、写真のみ)

Rafael Pérez
(CRASH 警官、写真のみ)

再現部分の俳優

Celestin Cornielle
(Nino Durden - CRASH 警官)

Fatal Instinct
(Rafael Pérez - CRASH 警官)

Elizabeth Lawrence (婦人警官)

Mills Pierre
(Armando Coronado)

Franco Vega
(Javier Ovando - 犠牲者)

見た時期:2008年11月

ドキュメンタリーのタイトルは Code of Silence: Inside the Rampart Scandal と言い、Rampart Scandal と呼ばれるロサンジェルスの警察内部のスキャンダルを報告したものでした。ここで起きた事件をベースに、エリス監督は関係者の人物を変えて劇映画を作ったわけです。電話が切れそうになりながら繋がっているとか、一家誘拐などはもしかしたら創作かも知れません。肝心なのはビデオの中に収まっていた警官の不正の部分。この再現ドキュメンタリーは劇映画自体よりずっとおもしろかったです。短くまとめると・・・。

★ 実話の主役

ロサンジェルス警察に勤めるかなり大勢の警官が関わっていました。内々でクラブのような物を作り CRASH と名乗っていました。きちんと編成された部隊だったという話も耳にしたことがあります。

元祖の組織の結成は70年代あたりで、悪徳ゴッタムシティーのようになってしまった現実を自分たちで掃除しようという志だったようなのですが、結成していくつかの不正が上手く行った時、当初の志はぐにゃっと曲がってしまったようです。元の志も《現在の法律では間に合っていないので、警官の制服を着、バッジをつけた身で、勝手に町を掃除してしまおう》という趣旨だったので、当然ながら違法。CRASH は90年代後半にはかなりの規模になっていたそうです。

早い話がロサンジェルスのこれまでのギャング集団に新手の集団が加わった、たまたまその人たちは社会で優先的に力を持つ身分証を持っていた、車や武器は税金から支払われていた、一般市民に優先して合法的に武器が使えた、活動は一般市民から正当な行いだと思われ信用されていたといった状態で、外部から見ると普通の勤務についている勤勉な警官に見えたわけです。

そんな事をしたら市民からの信用が落ちるかも知れないなどということは気にもせず、そんなの関係ねえとばかりに、町のギャングを令状、裁判所の手続き無しで、逮捕すらせずに片付けてしまいます。証拠は仲間内でもみ消してしまいます。当初の、本人たちは清いと思ったかも知れない志は、間もなくどこかに飛んでしまいます。

セルラーでマーシーがきっちり法律を守る愚直な警官を演じていたのは、手本とするべき行動を映画の中で1人に演じさせて、観客に本来の警官はこうあるべきだという姿を見せておく必要があったからでしょう。

警察という、一般市民以上の力を公的に認められた中で働いている人の集団が、法律を無視して勝手に動き出してしまうというのは考えようによってはクーデター行動とも取れます。CRASH はロサンジェルス内だけで活動していましたが、極端な言い方をすると市長、州知事のみならず、大統領も無視した行動に出ていたことになります。70年代からセルラーの事件で扱っている CRASH がばれたあたりまでの大統領は、ニクソン、フォード、カーター、レーガン、パパ・ブッシュ、クリントン、州知事はリーガン、ブラウン、デュークメジアン、ウィルソンです。

DVD についていたスペシャルでは麻薬の取引とそれに絡む殺人、冤罪などを扱っていました。元の志だけしか理由が無かったら、関係者が殺人などで刑務所に送られたとしても、メディアなどからは「だからもっと警察や裁判所はきっちり仕事をしなければ行けない」式の反省は出たでしょう。アメリカはお国柄が違うので、日本人の肌には合わない《自らの手でけりをつける》という方法を支持する人も時々出ます。

しかし押収した麻薬を再販して儲けたとなると、弁解の余地がありません。暴行、殺人、窃盗、麻薬取引、銀行強盗、証拠隠滅等なども明るみに出ています。これではどう転んでも正当化する余地がありません。

CRASH 警官の中でよく名前が出るのはニノ・ダーデン、ラファエル・ペレス、デヴィッド・マック。 判決が下り、告訴された事件が片付き、服役を始めたペレスがある日司法取引を条件に自分が知っている他の事件について証言すると言い出したので、署は大騒ぎ。出るわ、出るわ。合計70〜120人ほどが関わる話に発展しました。実際に刑に至ったのは2、3人。調べられた数が70〜120人でも氷山の一角と言われています。あまり規模が大きかったので、慌てて蓋をしてしまったかのように見えます。ランパート・スキャンダルはここで扱った事件のみではなく、時たま大きな騒ぎになっています。

セルラーについていたビデオは27分で、とても CRASH の悪事の全部は扱えません。それでペレスが3キロ半ほどの麻薬を警察から持ち出した事件を中心に扱っています。押収した麻薬は署に保管されているのですが、捜査に必要な時は貸し出しが可能です。持ち出された 3.5 キロは戻されていませんでした。売りさばいて80万ドルほど荒稼ぎしたようです。ペレスには殺人罪もついています。

以前ご紹介したブルース・ウィリス主演の 16ブロックも舞台はニューヨークですが、組織ぐるみ不正をやっている警察署の話でした。突然正義に目覚めてしまった刑事が上司と対決し、命を失うバージョンと助かるバージョンが用意されていた作品です。

どこどこの国が腐敗しているとか、どこどこの国の警察は人権を無視しているという話は国際機関であったり、アメリカ自身のマスコミの発言であることが多いです。それにしてはアメリカは自国が荒れるに任せているなあと感じます。こういう事件があるからこそ、それと戦う人たちがヒーローとして描かれるのでしょうか。

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