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2010年3月20日-21日
今年もファンタの季節になりました。まずは前菜として10作。1日5本ですから1日のスケジュールとしては夏の本番と変わりません。今年は出た10本が全部見られるようなスケジュールでした。開催都市は7箇所。ミュンヘンとシュトゥットガルトがスタートで、ベルリンとハンブルクは2番手。去年に続き今年も通しのパスを売っていました。私も含め常連の大半は通しのパスは止めて両日から数本選んで見ました。
では参加作品をご紹介しましょう。アジアからは日本のみで2本。欧州の非英語圏から2本。6本は英語圏で、英、米、豪、カナダです。
1974年、1977年、1980年、1983年にヨークシャーをめぐって起きた事件をテーマとした4部作の小説があります。それを1974年、1980年、1983年の3部作のテレビ・ドラマにしたため、上映時間が298分です。その第1作がファンタに出ました。間もなく全部セットのDVDが発売されるために、今後ファンタには出ません。
後記: 期待して見た人が多く、ホールは満員でした。小説を先に読んで来た人もいました。私が聞いた限りでは長過ぎるという意見の人が何人もいました。雰囲気がいいという意見も多かったです。フィルム・ノワールっぽく作られています。私も行きがかり上いつかDVDで続きを見るかも知れませんが、やはりちょっと長過ぎてだらだらしていたと思います。同じ出来事は1回はっきり描写して、その後は暗示すれば時間が節約できてメリハリもついたかと思います。
ヨークシャーに実際にあった事件を参考にしているらしいので、そちらに関心のある方にはお薦めです。今回扱われているだけでも女児連続拷問殺害死体損壊事件と、警察や地域の癒着、ジャーナリスト事故風殺人事件と、興味を引くのに十分な材料がありますし、俳優は英語圏のスター、ベテラン揃いです。
今回出演した人が続編にも出るようです。第1作を見ただけでもヨークシャーというのは何と腐敗した町なのかと思ってしまうぐらい酷い事件が起き、それを処理するはずの警察もこんなことでは国が滅びると言えそうなぐらい腐敗しています。これでは観光客は恐くて近づけません。ちょっとその辺も考えて作った方が良かったのではと、ヨークシャー人の身になって心配してしまいました。
おもしろいのは英語の映画で、出演者も英語をしゃべっているのに、英語の字幕がついていたことです。どのぐらい正確なのかは分かりませんが、出演者はほとんど全員強い方言をしゃべっていました。とは言うものの、ドイツ語圏の側からすると却って聞き取り易くなります。例えばスコットランド方言はドイツ人とはとても相性がいいです。私も聞いていて、ヨークシャー方言もかなりはっきり聞き取れました。あの字幕は一体誰のためなんだろうと考え込んでしまいました。
解説を読んで止めました。仲間も似たような決定。
後記: 後から知ったのですが、監督デビューで、脚本家としては10本ほど書いています。例えばソウ 4、ソウ 5、ソウ 6、ソウ 7。ソウいう仕事(駄洒落のつもり)を引き受けていると行き着く先が The Collector となるのかも知れません。パンフレットを見るとゲバルト・ポルノのようです。
REC/レックを見ていないのでパスしました。
後記: REC/レックを見た人は REC/レック2 も見たようです。REC/レックを褒めている人がいました。私はREC/レックの解説を読んで見るのを止めています。監督は両作品とも同じ人なので、統一は取れていると思います。
ヴィンチェンツォ・ナタリだったので散々迷った末、パス。同じように迷った人が多かったです。見た人に聞くと、これまで見たナタリの中では最低という評価でした。
後記: 分野はナタリお得意のSF。今回はDNAをいじり過ぎて起きた事件です。いつもの通り高校時代からの友達も出演しています。
見た人の話だと科学の先端を行く話が急カーブを切って家族の話になるとのことです。
今年は2人の監督が1本作る作品が多いです。この作品を見ようか、ナタリにしようか、両方見ようか迷った末、こちらに決めました。フィルム・ノワール系。
後記: ・・・とは言っても後から反省しました。フランスのフィルム・ノワールは神経を逆撫ですることが多く、本当は私向きではありません。La horde もたったの90分ですが、長過ぎるように感じました。カットできる箇所があちらこちらにあります。
アフリカ系フランス人は恐ろしい憎しみを目だけで表現できる人が多く、私も恐かったです。それだけ現実のフランスの生活がよその国に比べて厳しいということなのかも知れません。La horde は不完全な人間が品評会のように並べてあり、そういう人が酷い目に遭うのを見て観客は鬱憤を晴らせばいいのかも知れませんが、あまりにもばかばかしい行動が多く、見ていてうんざりしました。仲間からも退屈したという声が聞かれました。
あらすじは簡単。犯罪者がいる廃屋になっている高層アパートに覆面をした警官が数人忍び込み、非合法の復讐をたくらみます。両者の戦いは熾烈だったのですが、そこへ突然外部から数え切れないほどのゾンビが入り込んで来るので、両者は本当なら喧嘩をしている場合ではありません。ゾンビは知能がゼロに近く、人間はインテリジェンスを持っているはずなのですが、人間は無用な争いを重ね、徐々に仲間を失い、いい加減にしたらと思うような愚かな結末に来ます。もしそういう人間の愚かさを表現したかったのなら、もう少し簡略化できたと思います。同じゾンビ物ですと、28日後・・・の方が優秀作と言えます。
ファンタでは時をかける少女の評判がとても良かったのですが、その系統だと言ったら、見ようと言い出す人が増えました。私もそれなりの期待をして見たのですが、期待以上に楽しめました。
後記: 現実と非現実の区別がきちんとされているので、子供が見ても大丈夫のように思います。ただ大人の目で見るとこの40年自らせっせと壊して来た家族の結びつきを、今頃になって元に戻そうとしてアニメを1本作ってみても、焼け石に水という感じはします。
規模はサマーウォーズほど大きくありませんが、私も大家族で育ち、親戚と付き合っていたので、それがどんどん崩れて行ったこの40年を苦しい思いで見ていました。うちでは通用する理屈が世間ではどんどん通用しなくなっており、そういう意味ではサマーウォーズの中の現実の部分が実は非現実的で、コンピューターを使い慣れている若者などの方が現実なのではないか、実は現実として売っているシーンがもはや今日では嘘に近くなっているのではないかなどと思いながら見ていました。
情報不足もあり、パス。
後記: 見終わった人を掴まえて聞いてみても要領を得ませんでした。一体どんな映画だったんだろう。
アホ・ゾンビ映画だろうと分かっていましたが、ファンタでは神様のロメロなので見ました・・・というのは口実で、実はその次の Daybreakers が混むから座席を確保したいと思って見ました。
後記: ところが意外とできが良くて、笑いあり、まじめなテーマありで十分楽しめました。いくらかゾンビーノに近い部分もありますが、サバイバル・オブ・ザ・デッドの方がずっといいです。
同じ90分でもこうも違うものかと感心します。さすがゾンビ一筋に生きた監督は手堅い作品を作ります。
今回のハイライト。
後記: 一応ファンタとしては贅沢な作品で、大物スターも出ています。演技派にしてはあまり演技を見せるチャンスはありませんが、それでも上手なキャスティングと言えます。上品な画面で、この役をやれそうな他の俳優より上品な仕上がりと言えそうです。アクションも十分あり、吸血鬼物としては新しい試みもあるので、一応満足して映画館を出られます。ところが家に帰る道中、「ちょっと待てよ」と思い始め、家に着く前にムカッと来る仕掛けになっています。きれいにまとめてあるのでス〜っと相手のペースに呑み込まれそうになりますが、よく考えるとちょっと身勝手なんじゃないのと思い始める人が出るかも知れません。
ところで今さらとは思いますが、
ゾンビと吸血鬼の違い: ゾンビは汚らしい、知性が無い、いつも腹を空かしている、犠牲者を選ばない、肉食、町じゅうがゾンビになるなど普通は数が多い、頭を撃たれたり首を取られると生き返らないことが多い、吸血鬼は清潔、元々持っていた知性は保持、時々喉が渇く、犠牲者を選ぶ、普段何を食べているのか分からないが、害になるものは避ける、普通は数が少なく、身分を隠していることが多い、胸に楔を刺されると生き返らないという違いがあるようです。
共通点: 両者とも死んでいる、主として夜行性。
Daybreakers で目新しいのは、元々吸血鬼だった者が血液ダイエットをするとゾンビに近づくという点です。
最近時たま3D作品がファンタに出ます。ベルリンだけ間に合わず2D上映になったりするとほっとして見に行きますが、今年は普段と違うホールを使っての3D上映。なので私は早退しました。仲間うちにも3Dは避ける人がいます。
後記: というわけなので、後からコメントする材料がありません。
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