How to Clearcom/RTS Line ⇔ 4Wire Interface
 米ClearCom社のクリアカムシステムやTelex社のRTSシステムにおける信号伝送の基本は不平衡2Wireシステムである。しかし、アクティブHYB(ハイブリッド)・高電圧(DC30V)駆動・レベル設定・信号電源分離・標準音声ケーブル運用可・・・など非常に巧妙なアイデアで2Wireシステムが持つ諸課題をクリアし、連絡装置として世界的な地位を確立している。そして今や単独の連絡システムはもとより、カメラや映像システムの内部まで組み込まれるようになった。しかし連絡装置の中には依然として従来の4Wireタイプや2Wireタイプが混在する。このような装置とのインターフェイスをとるにはそれなりの工夫が必要である。以下実例を基にそれらを説明したい。
 なお国内にはクリアカム「神話」があって困惑する。クリアカムラインの信号線は2Wであるので、端末の個数が増えたらHYBバランスを取り直す必要がある。或いはラインに負荷を装荷しておき、個数に応じて負荷を軽くする等の対応を取らなければいけない。こうした努力がなければクリアカムの能力を100%引き出すことが出来ない。端末器で送話-受話間の電気的なアイソレーションが劣化すれば、その個数に応じ総合的なアイソレーションの劣化を招き容易に発振器に化けてしまう(主にスピーカー端末)。決して「神話」など無く、相応の使い方があって初めてその能力を発揮すると言う事を忘れてはいけない。
 RTS社は1970年代初頭に設立されたメーカーだが1998年にTelex社に統合された。Telex社は古くから航空機のヘッドセットやインターカム(ICS)装置で有名なメーカーである。RTS社の語源について同社に問い合わせた事があるが、フォーンプラグ(#110や3Cプラグ)のRing/Tip/Sleeveの頭文字をとった説、Receiver & Transmitter Systemの頭文字をとった説などあるようだが本当のところは良く分からないらしい。Clear-Com(クリアカム)社はご存知の通りで余りにも有名で、連絡装置(インターカム)の代名詞的な存在だ。
 何れにせよ、アクティブHYBを中心とする電気的な動作原理を理解の上で運用することをお勧めしたい。


 図に自作した「クリアカムライン対4Wライン」インターフェイスの一例を示す。
クリアカムラインはXLR3の@番をシールドコモン、A番を30V電源、B番を信号線として使用している。したがって信号(Audio)の伝送方法は不平衡2W方式である。T1は2Wを4Wに変換するハイブリッド(HYB)の中心を成す。T1の1次コイルのCT(Center Tap)に送話信号が供給されると、CTを中心に左右均等に電流(位相差180度)が流れコイルによる励磁がゼロになり、2次側には信号が発生せずアイソレーションが成立する。即ちCTを中心とした1次コイルの左コイルと右コイル、ラインインピーダンスとVR1でブリッジ回路が構成される(T1の1次側の両端は2次側に再現される)。ハイブリッドバランスが取れた状態では、VR1はクリアカムラインのインピーダンス相当値になる。VR1をゆっくり回して行くと送話から受話への漏れが劇的に減衰するポイントがあり感激する。
 この時VR1で損失しているエネルギー相当量がラインにも出力される。またラインからの入力はT1の1次とVR1の直列回路を駆動するが、同時にT1の2次側に電力を誘起して受話出力となる。
 ハイブリッドにはクリアカムラインのXLR3@-B番が接続される。コンデンサC1が挿入されているが、これは誤って直流が重畳された場合に安全のために直流をブロックするためのもの。A番は電源ラインで、クリアカムラインに接続される子機やスピーカーステーション等の端末に30V電源を供給する。ここではXLR4の@-C番間に12Vを供給しDC-DCコンバーターで30Vを得ている。ダイオードは外部からの電源に対する保護用。
 受話出力はT1の2次側から取り出されXLR3で平衡出力される。また送話入力はXLR3より平衡入力されるが、T2により平衡-不平衡変換されハイブリッドに接続される。


 なお受話XLR3はクリアカムラインと双方向性があり、レベルを気にしなければ平衡2Wライン(クリアカム-2W変換)としても使用できる。こうしたグッズを持ち歩いていると、急な対応が可能であり現場では結構重宝する。
写真は上記回路図を基に製作したインターフェイス。TAKACHIのユニバーサルケースに収め、入出力・電源は全てXLRタイプコネクタで処理し、バランスVRは外から指先の爪などで回せるようにしてある。手のひらに収まりポケットにも入るので携帯に便利である。手前は4WラインのT(左)/R(右)とHYBバランスVR(中央)。奥はクリアカムライン(左)と12V電源入力(右)。ケース内手前はT1/T2に利用した山水のST-71と30V(15Vx2)DC-DCコンバータ。
 こうしたグッズは動作原理の基本を理解していれば様々な回路がイメージできるはずである。ここではCT付きトランスを利用してブリッジ回路を構成してみたが、ロスは多くなるが抵抗ブリッジを使ったり、OPアンプを使ったアクティブ型でも作っても面白い。いずれにしても、不平衡2Wのクリアカムラインと平衡4W(2Wx2)ラインとのインターフェイスが、XLR3型コネクタで実現できればより実用性が高くなる。


How to Clearcom/RTS Line ⇔ 2Wire Interface
 「クリアカム-4Wインターフェイス」にならって「クリアカム-2Wインターフェイス」について解説する。クリアカムは不平衡2Wラインであるから、何らかの方法で信号源を平衡2Wラインにインターフェイスすれば良い。
図にノーマル型と簡易型を示す。ノーマル型はトランスを用い不平衡⇔平衡変換を行っている。この際トランス巻き線比による整合(巻き数比の2乗=インピーダンス比)を行えばロスの少ない伝送が可能である。しかし一般にクリアカム系にしても2W系にしても、チェーンされる端末数は不特定なので巻き線比は一概に決められない。クリアカム側の信号線にはコンデンサCを挿入し直流ブロックを行っている。JPはクリアカム系のグランドと2W系のグランドに電位差等があって、ハムやノイズが混入した場合グランド間を切り離し対策するためのもの。
 簡易型はクリアカム側の信号源を2Wのホット側に接続し、2Wのコールドはグランドにつなぎ全て不平衡で構成したものである。ノーマル型と同様の理由直流ブロックコンデンサとJPが組み込まれている。現場での急場しのぎはこちらが簡単で、殆どの場合コンデンサCは不要である。

#110 Plug & Jack to Clear Com Head-set I/F
 これは#110プラグ・ジャック等の3W(ThreeWire)方式のインターカムをクリアカムヘッドセットにインターフェイスする装置です。#110プラグはスリーブ(S)がコモン、リング(R)が受話、チップ(T)が送話である。このうちチップには送話器用の直流電源が重畳されている。この電源をAFC(低周波チョークコイル)と大容量ケミコンで平滑後、受話アンプと送話アンプに供給している。クリアカムヘッドセットは大音響のコンサートでは不可欠で、本装置は通常のインターカム装置の運用性改善を狙ったものである。なお最近のカメラ装置のインカム重畳電源は、例えば池上通信機製では8V程度と低目に設定されている。したがって接続する装置によっては、本装置の能力を十分発揮できないかもしれないので悪しからず。また電圧もさることながら重畳電源のインピーダンスが高いと十分な電源を供給できないため満足な動作が期待できない。従来使用していた600型カーボン式ヘッドセットに使用していた12Vや18V供給なら十分な動作が期待できるだろう。
 以下に参考回路図を掲示する。写真は低電圧動作(±1.5V〜)のOPアンプLM-358を使用しているが、回路図はパワーアンプのLM-386を使用している。デバイスの選択は電源供給能力とトレードオフなのでケースバイケースである。


Hint for Connection of Clear-Com Party & 4W System Intercom

 OB-VANやStudioのインターカムシステムが4W-MTX方式で、外部のクリアカムチェーンとI/Fしたい場合が良くある。この場合、4W-MTXシステムが崩されないように、必ず送受レベルとバランス調整のできる4W/2W_I/Fを用意する。I/Fにはクリアカム社のIF-4B-4等が良く使われる。
 ところがである。例えば理由あってクリアカムチェーンを切り離したい場合、リレーを使って4W回路を切り離すのが一般的だ。しかしリレー制御や信号処理の配線処理等やや厄介だ。2Wであるクリアカムライン(チェーン)をI/Fから切り離せば事は足りるように見えるが、今度は2Wラインがオープンになりバランスが崩れ発振する。その影響が4Wシステムにもろに出て大混乱になるので、2Wでは終端抵抗(随時要バランス調整)との切替が必須になってくる。
 I/F(IF-4B-4)はクリアカムライン側から供給される30V電源で送・受アンプが動作している。この30V電源をカットするスイッチを用意しておけば簡単に目的を果たせる。4W段階で回路を殺すのでバランスには影響ない。30V電源とSWボックスを用意し、クリアカムライン及びI/Fへの電源供給を制御する。切り離してもクリアカムチェーンを生かしておきたい場合は、I/Fへの電源供給のみをOFFすれば良い。
 図は上記を具現化する参考例である。D1の目的はクリアカムチェーンが既に電源供給されている場合、電源の逆流でIF-4B-4のアンプが動作してしまわない様に挿入している。すなわちIF-4B-4の動作はConnectスイッチの電源開閉にのみ依存し、クリアカムチェーンの電源は遮断している。なおConnectスイッチによりクリアカムチェーンへの電源供給も併せて行う。こうした機能をOB-VANやStudioの連絡装置に組み込んでおくと突然の依頼にもスムーズに対応できる。

オーナーより
このコーナーを書き出して既に7年近く経過しますが(Sep 08, 2008現在)、多くの読者がいらっしゃるようで検索ヒットで上位に来る様になりました。必要があれば随時メンテナンスを行って行きます。御質問や御意見など歓迎致します。よりローコストで高品質の連絡装置のために・・・そして正しい技術の理解と運用のために。
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How to Clearcom/RTS Line⇔4Wire Interface・・・ClearCom装置関連ノウハウ。
RFシグナルジェネレータの混合・・・U-PADを使ったRF-HYBを混合器に使う。