金縷曲
唐 杜秋娘
勸君莫惜金縷衣,
勸君惜取少年時。
花開堪折直須折,
莫待無花空折枝。
**********************
金縷曲
君に勸む 惜しむ莫
(なか)
れ 金縷の衣,
君に勸む 惜しみ取れ 少年の時。
花 開き 折るに堪へなば 直ちに 須
(すべから)
く 折るべく,
花 無きを待ちて 空しく 枝を折ること莫
(なか)
れ。
******************
◎ 私感訳註:
※金縷曲:「金縷衣」ともする。『唐詩三百首』では、楽府としている。の扱いであるが、絶句に近い。正格の絶句ではない。詳しくは「◎構成について」の平仄を参照。この作品は、詞の扱いで金縷曲、金縷衣というものの、詞牌の「金縷曲」「金縷衣」とは違う。詞牌の「金縷曲」「金縷衣」とは「賀新郎」
のことであって、これとは別。全くの別物。この作品のように勉励を詠うものは、古くは、漢樂府『長歌行』(青青園中葵)
があり宋・朱熹『偶成詩』(少年易老學難成)
、宋・朱熹『勸學文』(勿謂今日不學而有來日)
、明・文嘉『明日歌』(明日復明日)
等がある。
※杜秋娘:唐代・金陵の歌妓。「杜」が姓で、「秋」が名。「娘」は、「嬢」。「杜秋さん」の意。美人で有名。酒を勧めるときにいつも「金縷曲」を唱っていたという。ただし、この作品のことか或いは、「賀新郎」の「金縷曲」かは不明。十五歳で浙西観察使の李リの妾となる。後、穆宗に命じられて皇子の傅姆となる。杜牧の『杜秋娘詩』の序に「杜秋,金陵女也,年十五爲李リ妾。後リ叛滅,籍之入宮,有寵于景陵。穆宗即位,命秋爲皇子傅姆,皇子壯,封
王。鄭注用事,誣丞相欲去已者,指王爲根,王被罪廢削,秋因賜歸故ク。予過金陵,感其窮且老,爲之賦詩。」となっている。「杜秋は、金陵の女で、十五歳で李リの妾となった。後に、リが叛滅したため、後宮に籍をおき、景陵に寵をたまわった。穆宗が即位して、秋に命じて、皇子の傅姆とし、皇子の壯を
王に封じた。鄭注は用に事よせて、丞相は己を去ろうとする者であると誣告し、王を指して根となした。王は罪をこうむって廢削となった。秋はそのために、故クに帰ることを賜った。予が金陵を通り過ぎようとした際、其の窮 且つ 老を感じ、之がために詩を賦す。」
※勸君:あなたに勧める。「さあ、あなた。どうぞ」。王維の「送元二使安西」「勸君更盡一杯酒, 西出陽關無故人。」
が有名。
※莫惜:惜しみなさるな。
※金縷衣:金糸で縫い取りをした立派な着物。栄達、栄華を謂う。
※勸君莫惜金縷衣:あなたにお勧めしますが、富貴な生活を大切にすることは、しなさるな。
※惜取:大切にしなさい。 ・取:得る、手に入れる。動詞の後に附く。“聴取”の「取」に同じ。
※少年時:若いとき。
※勸君惜取少年時:あなたにお勧めしますが、人生の若い時期を大切にしなさい。
※花開:花が咲く。
※堪折:折るべきである。折る値打ちがある。・堪:…できる。
※直:ただちに。
※須折:折るべきである。
※花開堪折直須折:花が咲いて、折る値打ちがあれば、直ちに折るべきである。
※莫待:…しようとするなかれ。…するつもりでは、いけない。
※莫:…(する)な。…なかれ。打ち消し。禁止。
※待:〔古白話〕…しようとする。…するつもりである。
※無花:花が散ってから。時機遅れになってから。
※空折:無意味に折る。慌ててする、ということ。
※枝:花が無くなっている木の枝。
※莫待無花空折枝:花が散って、時機遅れになってから、慌てて無意味に折りなさるな。
◎ 句の大意
・勸君莫惜金縷衣:あなたに勧めるが、金糸で縫い取りをした立派な着物を着られる栄達にこだわりなさるな。
・勸君惜取少年時:あなたに勧めるが、若いときを大事にしなさい。
・花開堪折直須折:花が開いて、折り取るにふさわしい時期だったら直ちに折り取るべきで、
・莫待無花空折枝:躊躇して、花が散ってから慌てて、花のない枝を折りるようなことは、しなさるな。
◎ 構成について
絶句に近い。韻式は「AAA」。韻脚は「衣時枝」で、平水韻上平四支(枝時)、上平五微(衣)。次の平仄はこの作品のもの。なお、縷、空は両韻。この場合はどちらも
○
になる。
●○●●○○○,(韻)
●○●●●○○。
(韻)
○○○●●○●,
●●○○○●○。(韻)
2002.8. 7
8. 8完
2003.7.17補
2004.3.19
3.25
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