州橋
宋 范成大
州橋南北是天街,
父老年年等駕迴。
忍涙失聲詢使者,
幾時眞有六軍來。
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州橋
州橋の 南北は 是れ 天街,
父老 年年 駕の 迴
(めぐ)
るを 等
(ま)
つ。
涙を忍び 聲を失ひ 使者に詢
(と)
ふ:
「幾時 眞
(まこと)
に 六軍
(りくぐん)
の來ること 有らん」と。
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◎ 私感訳註:
※范成大:南宋の愛国詩人、田園詩人。(1126年〜1193年)。字は致能で、石湖居士と号している。江蘇省呉県の人。司戸参軍、参知政事…等を歴任した。『石湖居士詩集』『石湖詞』等がある。
※州橋:
京に架かる天漢橋のこと。なお、「天漢」とは天の川、銀河のことで、下を流れる
河を天河と見なしてのこと。現在は無くなっているが、遺蹟は開封市中山路中段及皮革大世界広場前にある。その規模は横幅三十メートルに及ぶという。御道に架かる橋ゆえである。橋は唐代に建てられたもので、
州橋と命名された。五代には
橋と云われ、北宋時代には天漢橋と謂われた。前記,
河を天の川と見なしての命名であり、ここで使われている州橋とは、俗称である。繁栄した北宋
京の象徴でもあり、ここでは、その意味で使われている。この作品のイメージは全く同時代を生きた陸游の『書事』「關中父老望王師,想見壺漿滿路時。寂寞西溪衰草裏,斷碑猶有少陵詩。」
と共通の慷慨がある。
※州橋南北是天街:天漢橋の南北は御街であり。 ・南北:両岸。 ・是:…は…である。…、これ…。述語の頭に附き、述語を明確化する。〔「A是B。」:Aは、Bである〕。 ・天街:帝都の道。お成り道。御街。御道。皇帝も通った北宋の都の大路。
※父老年年等駕回:北宋の遺民は 毎年皇帝の乗り物が還ってくるのを待っている。 ・父老:村の主立った年寄り。年老いた人への敬称。前者、出身地の主立った年寄りの意では、『史記・高祖本紀』の「高祖還歸,過沛,留。置酒沛宮,悉召
故人
父老
子弟
縱酒,發沛中兒得百二十人,ヘ之歌。酒酣,高祖撃筑,自爲歌詩曰:『大風起兮雲飛揚。…」
や『項羽本紀』には「父兄」も出てくる。後者、特に北宋遺民(淮河以北の金の領土となったところの漢民族の人民で、南宋の立場に立った見方)に対しての用法では、辛棄疾の「渡江天馬南來,幾人眞是經綸手。
長安
父老
,新亭風景,可憐依舊。」
や陸游の『書事』「
關中
父老
望王師
,想見壺漿滿路時。寂寞西溪衰草裏,斷碑猶有少陵詩。」
、南宋・楊萬里の『初入淮河』に「
中原
父老莫空談
,逢着王人訴不堪。卻是歸鴻不能語,一年一度到江南。」
と同様で、ここでは、後者の詩詞での用例にある北宋の遺民を謂う。 ・年年:毎年。年々。 ・等:〔白話〕待つ。待機する。前出陸游『書事』でいえば「關中父老
望
王師」
に該る。 ・駕:皇帝の乗物。宸駕、聖駕、聖輦。 ・迴:還る。戻る。白居易の『長恨歌』に「
天旋地轉
迴
龍馭
,到此躊躇不能去。馬嵬坡下泥土中,不見玉顏空死處。君臣相顧盡霑衣,東望キ門信馬歸。」
とある。
※忍涙失聲詢使者:流れる涙をこらえ、洩れる慟哭で声の調子も失いがちに使者に尋ねるに、 ・忍涙:涙が流れ出るのを堪えて。 ・失聲:声がすっかり出なくなること。泣きそうになるため、正常な声の調子を無くしがちになること。 ・詢:〔じゅん;xun2○〕問う。尋ねる。 ・使者:南宋から金にやってきた南宋側の使者。
※幾時眞有六軍來:いつ 本当に皇帝の軍隊がやって来るのか、と。盛唐・杜甫の『悲陳陶』に「孟冬十郡良家子,血作陳陶澤中水。野曠天C無戰聲,四萬義軍同日死。群胡歸來血洗箭,仍唱胡歌飮キ市。
キ人回面向北啼,
日夜更望官軍至
。」
とある。 ・幾時:いつ。 ・眞有:本当にあるのか。きつい言い方である。南宋朝廷を詰問しているとも謂える。 ・六軍:〔りくぐん;liu4jun1●○〕皇帝の率いる軍勢。編制が六つの軍団からなっていたことによる。
。前出『書事』では「關中父老望
王師
」
のこと。
◎ 構成について
七絶平起。韻式は「AAA」。韻脚は「街回來」で、平水韻上平十灰。次の平仄はこの作品のもの。
○○○●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
●●●○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2002.10.23完
11.16補
2005. 2.27
2007. 4.28
2011. 6.21
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