huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye




                     
江月
                    
          
                         
         胡世將
秋夕興元使院作,用東坡赤壁韻

神州沈陸,
問誰是、一范一韓人物。
北望長安應不見,
抛卻關西半壁。
塞馬晨嘶,
胡笳夕引,
得頭如雪。
三秦往事,
只數漢家三傑。


試看百二山河,
奈君門萬里,
六師不發。
外何人迴首處,
鐵騎千群都滅。
拜將臺欹,
懷賢閣杳,
空指衝冠髮。
欄干拍遍,
獨對中天明月。

    **********************
       江月

神州  沈陸,
問ふ 誰か是れ、 一范 一韓の 人物なるかと。
北のかた 長安を望めど  應に見えざるべし,
抛卻せる  關西 半壁を。
塞馬  晨
(あした)に 嘶き,
胡笳  夕
(ゆふべ)に 引き,
ち得たるは  頭 雪の如きを。
三秦の  往事は,
只だ  漢家の 三傑を 數ふ。


試みに看よ  百二山河を,
君門 萬里を 奈
(いか)んせんとて,
六師  發せず。
外の  何人 迴首せる處,
鐵騎 千群  都
(すべ)て滅ぶ。
拜將臺  欹
(かたむ)き,
懷賢閣  杳
(はる)かにして,
空しく  衝冠の髮を 指す。
欄干を 拍つこと遍く,
獨り  中天の明月に 對す。

             ******************

◎ 私感訳註:

江月:詞牌の一。詳しくは「構成について」を参照。

※秋夕興元使院作:秋の夕べに、興元(現・陝西省漢中市)の使院(=節度使代理の官署)で作った。 ・秋夕:秋の夕べ。或いは中秋節。 ・興元:地名。秦時の名称は南鄭で、漢中郡の治所。現・陝西省の漢中市。 ・使院:節度使が不在の場合、節度使の代理事務を行う官署。

※胡世将:(1085〜1142)北宋末〜南宋初。岳飛と同時代人。字は承公。常州晋陵(現・江蘇省)人。四川安撫使等を務めた抗金のリーダーの一。

※用東坡赤壁韻:蘇軾(蘇東坡)の『念奴嬌』 「大江東去,浪淘盡、千古風流人
。故壘西邊,人道是、三國周カ赤。」に使われ押韻の韻字を自由な配列で使うこと。用韻。ここでは、次韻になっている。この作品は『史記・高祖本紀』に基づいて作られている趣がある。

※神州沈陸:中華の地が滅亡(しかかっている)。 ・神州:中国の美称。 ・沈陸:国家の滅亡。領土の陥落。ここでは、華北の陥落をいう。東北に契丹(遼)、西北に西夏(大夏)が起こり、作者がこの詞を作った時は金が淮河以北を領土としていた。華北の地が異民族に占領されたことを指す。陸沈のこと。「陸」(詞韻第十八部)で韻を踏むために、「沈陸」とした。

※問誰是、一范一韓人物:たずねるが、一体どこに范仲淹や韓gのような(骨のある)人物がいるのか。 ・問:問う。たずねる。 ・誰是:だれが…なのか。 ・一范一韓人物:范仲淹や韓gのような骨のある人物。范:范仲淹。韓:韓g。ともに、陝西省の積極的防衛を主張した人物。

※北望長安應不見:(陥落して、既に宋の版図ではなくなった)北の方の首都・長安を眺めても、おそらく見えないだろう。 ・北望:北方の(陥落した一帯)を眺めれば。 ・長安:唐代までの首都。ここでは、北宋の首都京をいう。 ・應不見:(「抛卻關西半壁」は)おそらく見えないだろう。きっと見えないだろう。

※抛卻關西半壁:函谷関以西の領土の半分をなげすててしまった。 ・抛卻:なげすててしまう。 ・關西:函谷関以西の地。後出の関中、三秦でもある。現・陝西省、甘肅省。 ・半壁:領土の半分。

※塞馬晨嘶:辺境守備の軍馬は朝にいななき。 ・塞馬:辺境守備の軍馬。 ・晨嘶:朝にいななく。 *漢民族発祥の地・中原、漢王室勃興の地・関中は、敵陣となって臨戦態勢なのをいう。

※胡笳夕引:異民族の吹く葦笛の音は、宵に収まる。 *異民族の進出情況を表現している。 ・胡笳:異民族の吹く葦笛。胡人の吹く笛の音。 ・夕引:宵に収まる。

得頭如雪:勝ち取ったのは、頭髪が雪のように白くなったこと(だけ)であった。 ・得:勝ち取る。 ・頭如雪:頭髪が雪のように白くなる。

※三秦往事:項羽や劉邦が活躍した楚漢の昔(には)。 ・三秦:項羽が咸陽に入った後、関中=秦の地(前出「關西」でもある)を三分して秦の将に分け与えたことに基づく、秦の地(陝西省)のこと。『史記・高祖本紀』の「項羽自立爲西楚霸王,王梁、楚地九郡,都彭城。負約,更立沛公爲漢王,王巴、蜀、漢中,都南鄭。三分關中,立秦三將。」をいう。 ・往事:むかし。

※只數漢家三傑:ただ、漢王室建国の功臣である三大家臣の張良、蕭何、韓信だけが(歴史上)数え挙げられる。 *ここでは、漢を建国した劉邦が韓信の策を容れて、関中(前出「三秦」)を収めた歴史上の先例があることをいう。 ・只數:ただ、…だけが挙げられる。ただ、…だけが(歴史上)数えられる。 ・漢家三傑:漢を建国した劉邦の三大家臣で、張良、蕭何、韓信のこと。

※試看百二山河:見たまえ、堅固な関中の地の山河を。 *ここでは、失われた祖国の山河の意で使われていよう。 ・試看:見たまえ。見なさい。ごらんなさい。 ・百二山河:山河が堅固な関中の地。『史記・高祖本紀』に「陛下得韓信,又治秦中。秦,形勝之國,帶河山之險,縣隔千里,持戟百萬,秦得
百二。」に基づく。その場合の「百二」は、その後に続く「齊…地方二千里,持戟百萬,縣隔千里之外,齊得十二。」とともに割合、比率をいう。二人で護れば、百人に敵することができる堅固な地勢。その読み方については、『史記・高祖本紀』の古註に詳しい。「一人當關萬夫莫(開)」ということ。我が国の唱歌「箱根の山は天下の険,函谷関もものならず。…一夫関に当たれば万夫も開くなし」の意に同じ。後世、金・元好問は『岐陽』で「百二關河草不,十年戎馬暗秦京。岐陽西望無來信,隴水東流聞哭聲。野蔓有情戰骨,殘陽何意照空城。從誰細向蒼蒼問,爭遣蚩尤作五兵。」と使う。もっとも、胡曾の「日照荒城芳草新,相如曾此挫強秦,能令百二山河,便作樽前撃缶人。」のように、実数かの如きものになった。

※奈君門萬里:君主一家、二帝が靖康之変で、万里の彼方の北方に拉致された事実をどう(とらえている)のか。 ・奈:どうするのか。いかんと…せん。 ・君門:君主一家。 ・萬里:靖康之変で、宋の二帝が万里の彼方の北方に拉致されたことを指す。

※六師不發:皇帝の軍隊は、進発しようとしない。 *朝廷は、和睦の方針を採ったことをいう。蛇足になるが、白居易の『長恨歌』に「九重城闕煙塵生,千乘萬騎西南行。翠華搖搖行復止,西出都門百餘里。
六軍不發無奈何,宛轉蛾眉馬前死。」がある。 ・六師:皇帝の軍隊構成。六軍〔りくぐん;lu4jun1〕。 ・不發:進発しない。

外何人迴首處:宮廷外のなんぴとであっても振り向くところで。 ・外:〔こんがい;kun3wai4●●〕しきいの外。しきみの外。境界の外。宮城の外。都城の外。国外。 ・何人:なんぴと。 ・迴首處:振り向くところ。

※鐵騎千群都滅:武装した我が南宋の戦馬の多くの隊伍が、すべて滅ぼされたところだ。 *ここは、富平之敗戦を指す。 ・鐵騎:武装した軍馬。 ・千群:多くの隊伍。 ・都滅:すべて滅ぶ。すべてが滅ぶ。

※拜將臺欹:漢の高祖・劉邦が、韓信を大将として拝した時の拜將臺は、傾き。敵国征伐の大将を出した伝統も滅びかけ。 ・拜將臺:漢の高祖・劉邦が、韓信を大将として拝した時に築いた3メートルほどの壇。現・陝西省漢中市の南よりにある。拜將壇ともいう。南北二つの高台からなり、南台の上には「漢大將韓信拜將壇」の碑がある。ここでは天下統一の大業をいう。南宋・陸游の『山南行』「我行山南已三日,如縄大路東西出。平川沃野望不盡,麥隴桑鬱鬱。地近函秦氣俗豪,鞦韆蹴鞠分朋曹。苜蓿連雲馬蹄健,楊柳夾道車聲高。古來歴歴興亡處,擧目山川尚如故。
將軍壇上冷雲低,丞相祠前春日暮。國家四紀失中原,師出江淮未易呑。會看金鼓從天下,却用關中作本根。」 とある。 ・欹:〔き;qi1〕(一方に)傾く。そばだつ。≒。本来、「欹」字は、〔い;yi1〕ああ。讃美を表す動詞。感嘆を表す助詞の義である。ここは、〔き;qi1〕字の意で使われている。読みも欹字であっても、〔き;qi1〕と読まざるを得ない。

※懷賢閣杳:諸葛亮が「臣亮言。先帝創業未半而中道崩。今天下三分,益州疲弊,此誠危急存亡之秋也。」といって、祖国に尽くした忠誠心も遥かな昔のこととなった。 ・懷賢閣:諸葛孔明を偲んで建てられた、宋代の建築。現・陝西省鳳翔市の東南にある。 ・杳:くらい。深い。はるかである。

※空指衝冠髮:むなしく激昂して、冠を衝きあげる髪を指し。 ・空:むなしく。 ・衝冠髮:岳飛の『滿江紅』「
怒髮衝冠,憑闌處、瀟瀟雨歇。抬望眼、仰天長嘯,壯懷激烈。三十功名塵與土,八千里路雲和月。莫等閨A白了少年頭,空悲切。」のこと。

※欄干拍遍:風景を眺めながら感慨に耽っていて、感極まって、高殿の欄干を何度もたたき。 ・欄干:たかどのの手摺り。風景を眺めながら感慨に耽っている。 ・拍遍:(感極まって、高殿の欄干を)何度もたたく。

※獨對中天明月:独りだけで、なかぞらの澄みわたった月に向かいあい、運命を尋ねてみる。 *運命を尋ねる「天問」をしている。蘇軾の『水調歌頭』「明月幾時有?把酒問天。不知天上宮闕,今夕是何年。」のように。  ・獨對:独りだけで…に向かいあう。 ・中天:なかぞら。空の中心に近いところ。 ・明月:澄みわたった月。





◎ 構成について

 双調。壱百字。韻式は「aaaa aaaa」 一般に入声韻を使用。念奴嬌の対句部分の考察については、ここを押す。韻脚は「物壁雪傑 發滅髪月」で、詞韻第十八部になる。

●●●
●○○

○●●

●○●●

●●○

○○○○,
●○●



●●●
●○○

○●●●,
●○●●

●●○

○○○○,
●○●



●●●
●○○

○●●●,
●○●●

●●○

○○○○,
●○●

2003.12.3
     12.4
     12.5
     12.6
     12.7完
2013. 8.10補

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