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種豆南山下,
草盛豆苗稀。
晨興理荒穢,
帶月荷鋤歸。
道狹草木長,
夕露沾我衣。
衣霑不足惜,
但使願無違。
園田の居に 歸る 五首
其三
豆を種(う)う 南山の 下,
草 盛んにして 豆苗 稀なり。
晨(あした)に 興(お)きて 荒穢を 理(ととの)へ,
月を帶び 鋤を荷(にな)ひて 歸る。
道 狹くして 草木 長じ,
夕露 我が衣を 霑(ぬ)らす。
衣が霑(ぬ)るるは 惜むに 足らざれど,
但(た)だ 願ひをして 違(たが)ふことを 無から使(し)めよ 。
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◎ 私感註釈
※陶潛:東晉の詩人。官吏をやめて、隠棲をする折りの詩。
※歸園田居:田舎へ帰る。帰田、帰耕すること。これは、全五首の中の第三首。
『古文眞寶』
※種豆南山下:南山の麓で、豆を まいて。 ・種豆:豆を 種播く。豆の種を播く。 ・種:(種を)播く。動詞で去声。 ・南山:作者のいた盧山のこと。「采菊東籬下,悠然見南山。」と詠っているところ。
※草盛豆苗稀:雑草が盛んに生い茂り、陶潜自身が種を播いて、芽を出した豆の苗が、雑草に隠れてしまって少なくなっている。 ・草盛:雑草が盛んに生い茂る。 ・豆苗:(陶潜自身が種を播いて、芽が出てきた)豆の苗。豆の新芽。 ・稀:まれである。育てている豆の苗が、雑草に負けてしまって少なくなる。
※晨興理荒穢:朝、起きてからは、荒れ地を整えて。 ・晨:朝。 ・興:起きる。 ・理:整える。 ・荒穢:荒れて雑草の生い茂った地。荒れ地。
※帶月荷鋤歸:(日も暮れて)昇ってきた月とともに、スキをかついで、自宅に帰っていく。遅くまで野良で働いていることをいう。 ・帶月:(日が落ちて、昇ってきた)月とともに。 ・帶:おびる。身につける。 ・荷鋤:スキをになう。スキをかつぐ。 ・歸:もどる。(自宅に)帰る。
※道狹草木長:道幅はせまく、両側から延びている草木は背丈が伸び。 ・道狹:道はせまい。 ・草木:道の両側から延びている草木を指す。 ・長:大きくなる。動詞。
※夕露霑我衣:夜露わたしの衣服をぬらす。 ・夕露:夜露。 ・霑:ぬらす。うるおす。しめらす。 ・我衣:わたしの衣服。
※衣霑不足惜:衣服がぬれることは、惜しむに足らない(が)。 ・衣霑:衣服がぬれる。前出「霑・我衣」は〔動詞+賓語〕で、この場合、動詞(霑)は、他動詞的な働き((…を)ぬらす)になる。それに対して、この句の主部「衣霑」は〔主語+動詞〕となり、この場合、動詞(霑)は、自動詞的な働き((…が)ぬれる)になる。 ・不足惜:惜しむに足らない。
※但使願無違:ただ、(のぞみが)たがうことのないことだけを願う。(服は濡れても構わないが)、ただ、(農作物)だけは、無事に成長いたしますように。 ・但使:ただ……でさえあれば。 ・願:ねがう。…がないように。願望を述べる時に使う。 ・無違:たがうことがない。
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◎ 構成について
韻式は「AAAA」で、韻脚は「稀歸衣違」で、平水韻で見れば上平五微になる。この作品の平仄は次の通り。
●●○○●,
●●●○○。(韻)
○○●○●,
●●○●○。(韻)
●●●●●,
●●●●○。(韻)
○●●●●,
●●●●○。(韻)
2003.4.24 4.25完 2009.4. 2版 |
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