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誰家玉笛暗飛聲,
散入春風滿洛城。
此夜曲中聞折柳,
何人不起故園情。
春夜 洛城に 笛を聞く
誰が家の玉笛ぞ 暗に 聲を飛ばす,
散じて 春風に 入りて 洛城に 滿つ。
此の夜 曲中 折柳を 聞く,
何人か 故園の情を 起こさざらん。
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◎ 私感註釈
※李白:盛唐の詩人。詩仙と称される。
※春夜洛城聞笛:春の夜に洛陽の街で(「折楊柳」の曲を奏でる)笛をきく。同様のモチーフのものに、王翰の『涼州詞』「秦中花鳥已應闌,塞外風沙猶自寒。夜聽胡笳折楊柳,ヘ人意氣憶長安。」や、李益の『夜上受降城聞笛』に「囘樂峯前沙似雪,受降城外月如霜。不知何處吹蘆管,一夜征人盡望郷。」 がある。
※誰家玉笛暗飛聲:どこで笛を吹いているのだろうか、宵闇に笛の音(ね)(だけ)が聞こえてくるが。 ・誰家:どこ。だれ。 *かならずしも「だれの家」と、住処を尋ねていない。 ・玉笛:宝玉でできた笛。立派な笛。 ・暗:暗闇に。宵闇に。或いは、密やかに。 ・飛聲:笛の音を飛ばす。笛の音を流す。 ・聲:ひびき。おと。ふし。
※散入春風滿洛城:散らばって(春風に)乗って洛陽城に(笛の音が)満ちている。 ・散入:散らばって(春風に)乗って。後世、中唐・韓翃の『寒食』で「春城無處不飛花,寒食東風御柳斜。日暮漢宮傳蝋燭,輕煙散入五侯家。」と使う。 ・洛城:洛陽城。東都洛陽の都。洛陽の街。 ・城:都市。城市。都会。街。
※此夜曲中聞折柳:この夜、(流れてくる)曲中に、(別れの曲)『折楊柳』の曲が聞こえてきた。 ・曲中:玉笛の聲裏ということ。 ・折柳:折楊柳のこと。横吹曲の一。別れの情をうたった曲名。別離の折り、水の畔まで見送り、柳の枝を折って贈った故事に基づくもの。前出、『涼州詞』「夜聽胡笳折楊柳,ヘ人意氣憶長安。」の影響を受けていよう。
※何人不起故園情:誰が故郷を思う気持ちを起こさないだろうか。いや、起こす。 ・何人:〔なんぴと;he2ren2○○〕誰。 ・不起:起こさない。 ・何人不起:誰が起こさないだろうか。いや、起こす。〔何+(名詞) 不+(動詞)〕:反語反問の気勢の語形。王維に『胡居士皆病寄此詩兼示學人』に「植福祠迦葉,求仁笑孔丘。何津不鼓櫂,何路不摧。」とある。 ・故園:故郷。 ・情:想い。 ・故園情:故郷を思う気持ち。郷愁。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「聲城情」で平水韻下平八庚。この作品の平仄は、次の通り。
○○●●●○○,(韻)。
●●○○●●○。(韻)
●●●○○●●,
○○●●●○○。(韻)
2003.7.31 8. 1完 8. 2補 2004.2.21 2012.6.23 |
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