Huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye
戦城南



                                              
      戰城南

                 李白


去年戰桑乾源,
今年戰葱河道。
洗兵條支海上波,
放馬天山雪中草。
萬里長征戰,
三軍盡衰老。
匈奴以殺戮爲耕作,
古來唯見白骨黄沙田。
秦家築城備胡處,
漢家還有烽火然。
烽火然不息,
征戰無已時。
野戰格鬪死,
敗馬號鳴向天悲。
烏鳶啄人腸,
銜飛上挂枯樹枝。
士卒塗草莽,
將軍空爾爲。
乃知兵者是凶器,
聖人不得已而用之。


******


戰城南
 
去年  桑乾に源に 戰ひ,
今年  葱河の道に 戰ふ。
兵を 條支 海上の波に 洗ひ,
馬を 天山 雪中の草に 放つ。
萬里  長征して 戰ひ,
三軍  盡
(ことごと)く 衰老す。
匈奴  殺戮を 以て 耕作と 爲し,
古來 唯だ見る  白骨 黄沙に 田
(う)うるを。
秦家  城を 築きて  胡に 備へて 處し,
漢家  還
(な)ほ 烽火 然(も)ゆる 有り。
烽火  然
(も)えて 息(や)まずして,
征戰  已
(や)む時 無し。
野戰に  格鬪して 死し,
敗馬  號鳴して 天に 向かひて 悲し。
烏鳶  人の腸
(はらわた)を 啄(ついば)み,
(くは)へ 飛び上りて  枯樹の枝に 挂(か)く。
士卒  草莽に 塗
(まみ)れ,
將軍  空しく 爾
(しか) 爲す。
(すなは)ち 知る  兵 者(は) 是(こ)れ 凶器にして,
聖人は  已
(や)むを 得ずして 之(こ)れを 用ふ。

*****************


◎ 私感註釈

※戰城南:樂府題。征戦を詠う。

※去年戰桑乾源:先年は、北方の桑乾河で戦い。 ・去年戰:去年は、…で戦う。『舊唐書・卷九・玄宗下』を見れば、玄宗開元末期から天寶初期(安禄山の乱直前)にかけては、突厥や吐蕃との交渉が実に多く、特定しがたい。毎年とも謂える。『中国軍事史略』中(軍事科学出版社)によれば、突厥とは武徳七年(624年)〜永淳元年(682年)、吐蕃とは咸亨元年(670年)〜大中五年(851年)の長きに亘っている。 ・桑乾:桑乾河附近の戦闘のこと。桑乾河北方に要衝・雲中(現・大同)がある。『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)46−47ページ「河東道」にある。桑乾河は、山西省北部から東に流れ、河北省北部を通り、北京を貫流する。永定河の別称。北京より上流を桑乾河と呼び、北京より下流を永定河と呼ぶ。長安の人にとっては遙かなところになる。唐・賈島に『渡桑乾』「客舍并州已十霜,歸心日夜憶咸陽。無端更渡
桑乾,卻望并州是故ク。」 や、李益『幽州』「征戍在桑乾,年年薊水寒。殷勤驛西路,此去向長安。」がある。 ・源:みなもと。

※今年戰葱河道:今年は西域の葱嶺の川で戦っている。 ・今年戰:今年は…で戦っている。ここでは最近の戦闘をいう。 ・葱河:葱嶺を流れる二つの川で、葱嶺北河は、カシュガル川。パミール高原(葱嶺)の北端のカシュガルを流れる川。天山の西端になる。葱嶺南河は、叶爾羌河、タリム川。『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)63−64ページ「唐 隴右道西部」にある。三国が集まる要衝。

※洗兵條支海上波:武器(の血)をペルシア湾の波で洗い。 ・洗兵:武器(の血)を洗う。 ・條支:イラク。條枝國。 ・海上波:ペルシア湾の波。

※放馬天山雪中草:馬を天山の雪の合間にある草地で放牧する。 ・放馬:馬を放牧する。 ・天山:〔てんざん;tian1shan1○○〕新疆にある祁連山〔きれんざん;Qi2lian2shan1○○○〕(チーリェンシャン)。天山一帯。当時の中国人の世界観では、最西端になる。天山山脈のこと。新疆ウイグル(維吾爾)自治区中央部タリム盆地の北を東西に走る大山系で、パミール高原(葱嶺)の北部に至る。雪山。ここでは「異民族との戦闘の前線」の意として、使われている。唐・岑参の『胡笳歌送顏真卿使赴河隴』「君不聞胡笳聲最悲,紫髯濠瘡モ人吹。吹之一曲猶未了,愁殺樓蘭征戍兒。涼秋八月蕭關道,北風吹斷天山。崑崙山南月欲斜,胡人向月吹胡笳。胡笳怨兮將送君,秦山遙望隴山雲。邊城夜夜多愁夢,向月胡笳誰喜聞。」また、李白の『塞下曲』「五月天山,無花祗有寒。笛中聞折柳,春色未曾看。曉戰隨金鼓,宵眠抱玉鞍。願將腰下劍,直爲斬樓蘭。」や、南宋・陸游の『訴衷情』「當年萬里覓封侯,匹馬戍梁州。關河夢斷何處? 塵暗舊貂裘。胡未滅,鬢先秋,涙空流。此生誰料,心在天山,身在蒼洲!」とある。 ・雪中草:雪の合間にある草(地)。

※萬里長征戰:遙かな遠征の戦い(では)。 ・萬里:長大な距離をいう。 ・長征戰:遠征の戦(いくさ)。

※三軍盡衰老:全軍、ことごとく年を取って衰えた。 ・三軍:全軍。 ・盡:ことごとく。 ・衰老:衰え年取る。老いて衰弱する。

※匈奴以殺戮爲耕作:匈奴は殺戮することを(恰も)耕作に従事するかのようにしている。 ・匈奴:北方の遊牧民族。紀元前三世紀から紀元後五世紀の間、安徽省方面から中原の漢民族を屡々おびやかした。 ・以…爲:…を…とする。 ・殺戮:(刑罰として)殺すこと。 ・戮:罪人を殺す。 ・耕作:田畑を耕して、農作物を作ることで、ここでは日常の労働の意で使われている。

※古來唯見白骨黄沙田:古来より、ただ白骨だけが黄砂に植わっているさまを見受けるだけである。 ・古來:昔から。 ・唯見:ただ…だけが見られる。 ・白骨:(征戦の勇士や人民の)白骨(が)。 ・黄沙:黄土。黄土の荒原。ここの用語法では、「黄沙の地に、黄土の所で」になる。 ・田:たがやす。植え付ける。田作りする。動詞として使っている。ここでは、そのさまになる。「黄沙の田」と読めば、語調はよい。

※秦家築城備胡處:秦王朝は、万里の長城を築いいて異民族の(侵入に)備えて、対処して。 ・秦家:秦王朝。ここでは、「過去の時代」の意として使われている。 ・築城:万里の長城を築く。 *北狄の騎馬による侵入を防ぐための堤防とも謂える城壁。 ・備:そなえる。準備する。 ・胡:えびす。異民族。 ・處:ここは聯として見た場合、おそらく動詞になり、「処す、対処する」、になる。「胡に備ふる處」も、なめらかですばらしい。

※漢家還有烽火然:漢代(現代)でも、まだ狼煙火が燃えて、辺塞での有事に関する狼煙火の逓伝がある。 ・漢家:漢王朝。ここでは、「現代」のことになる。 ・還有:まだ…がある。また…がある。 ・烽火:のろし。 ・然:燃やす。燃える。=燃。

※烽火然不息:狼煙火が燃えて熄(や)むことがない。 ・不息:止まない。

※征戰無已時:征伐の戦争はやむ時がない。 ・征戰:征伐、征服のための戦争。自国内で戦うことではなく、他国、他地域に出かけて行って戦うこと。敵を攻め戦うことで、相手側からいえば、侵略戦争。 ・已時:やむ時。

※野戰格鬪死:原野での戦闘で組み討ちをして死んでいき。 ・野戰:山野での戦闘。原野を遠征しての征討。 ・格鬪:組み討ち合って争うこと。

※敗馬號鳴向天悲: ・敗馬:敗走する軍馬。 ・號鳴:大きな鳴き声で鳴く。大きく嘶く。 ・向天悲:天に向かって悲しげである。

※烏鳶啄人腸:カラスやトンビが人のはらわたをついばんで。 ・烏鳶:〔うえん;wu1yuan1〕カラスやトビ。野生の鳥。 ・啄:〔たく;zhuo2●〕ついばむ。 ・人腸:人のはらわた。

※銜飛上挂枯樹枝:(くちばしで)くわえて飛び上がり、枯れ木の枝に掛けている。 ・銜飛上挂:(くちばしで)くわえて、飛び上がる。 ・銜:〔かん;xian2○〕ふくむ。口にくわえる。 ・挂:〔くゎい;gua4●(両韻)〕かける。 ・枯樹枝:枯れ木の枝。 ・枯樹〔こじゅ;ku1shu4○●〕

※士卒塗草莽:兵士は草むらに斃れ。 ・士卒:士官と兵卒。兵士。 ・塗:まみれる。けがれる。『史記・高祖本紀第八』「天下方擾,諸侯並起,今置將不善,
壹敗。吾非敢自愛,恐能薄,不能完父兄子弟。」の「塗」に同じ。「たおれる」。 ・草莽:〔さうまう;cao3mang3●●〕草むら。草原。草のおい茂っているところ。

※將軍空爾爲:(一軍を率いる)将軍はむなしくそのようにした。 ・空:むなしく。 ・爾爲:そのようにする。しかなす。

※乃知兵者是凶器:そのあげく、分かったのは軍事ということは、まがごとであるということだった。 *『韓非子』「『
兵者,凶器也,』不可不審用也。」外に『国語』、後出『老子』にある。 ・乃:やむなく。そのあげく。すなわち。  ・兵:武力。武器。 ・者:…は。主語の後に附き、主語を明示する。 ・是:…である。主語と述語の間に入って、述部を明確にする働きがある。 ・凶器:いまわしいもの。兇器。

※聖人不得已而用之:聖天子は、やむを得ずしてこれを用いている。『老子』「夫佳
兵者不祥之器,物或惡之,故有道者不處。……兵者不祥之器,非君子之器,不得已而用之,恬淡爲上。」 ・聖人:天子のこと。(唐以降)天子をうやまっていう。尭、舜、禹。湯、文王、武王、周公。孔子などの徳望や知識がすぐれ、世の模範と仰がれるような人をいう。  ・不得已:やむを得ない。 ・而:…て。 ・用:もちいる。 ・之:これ。兵のこと。

               ***********




◎ 構成について

韻式は「aaaBBCCCCC」。韻脚は「道草老 田然 時悲枝爲之」で、平水韻上声十九皓(「道」は古韻では上声、現代語韻では去声)、下平一先、上平四支。次の平仄はこの作品のもの。

●○●○○○,
○○●○○●。(韻)
●○○○●●○,
●●○○●○●。(韻)
●●○○●,
○○●○●。(韻)
○○●●●○○●,
●○○●●●○○○。(韻)
○○●○●○●,
●○○●○●○。(韻)
○●○●●,
○●○●○。(韻)
●●●●●,
●●●○●○○。(韻)
○○●○○,
○○●●○●○。(韻)
●●○●●,
○○○●○。(韻)
●○○●●○●,
●○●●●○●○。(韻)
2004. 9. 5
      9. 8
      9.10
      9.11完
2007.10. 7補

漢詩 填詞 詩餘 詩余 

xia 1ye次の詩へ
shang 1ye前の詩へ
抒情詩選メニューへ
       ************
shici gaishuo詩詞概説
唐詩格律 之一
宋詞格律
詞牌・詞譜
詞韻
唐詩格律 之一
詩韻
詩詞用語解説
詩詞引用原文解説
詩詞民族呼称集
shichao shou ye天安門革命詩抄
Qiu Jin ci秋瑾詩詞
碧血の詩編
李U詞
Xin Qiji ci辛棄疾詞
李C照詞
Huajianji花間集
Huajianji婉約詞:香残詞
Huajianji毛澤東詩詞
zhuozuo碇豐長自作詩詞
漢訳和歌
参考文献(詩詞格律)
cankao shumu(wenge)参考文献(宋詞)
本ホームページの構成・他
Riyu:zhiciわたしのおもい
guanhougan
メール
hui shouye
トップ
huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye