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把君詩卷燈前讀,
詩盡燈殘天未明。
眼痛滅燈猶闇坐,
逆風吹浪打船聲。
舟中にて 元九の詩を讀む
君が詩卷を 把(と)りて 燈前に讀み,
詩 盡(つ)き 燈 殘(すた)るるも 天 未(いま)だ明けず。
眼 痛み 燈を滅(け)して 猶(な)ほ 闇坐(あんざ)すれば,
逆風 浪を 吹きて 船を 打つの聲。
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◎ 私感註釈
※白居易:中唐の詩人。
※舟中讀元九詩:白居易が九江郡司馬となって左遷される時の詩。白居易の『琵琶行』序では「元和十年,予左遷九江郡司馬」とある。 ・舟中:(旅をする)小舟の中で。「舟」は小舟であり、不遇でひとり旅の意の「孤舟」をもイメージする語。後出「船」は構造物としての船舶の意になる。 ・讀:(声に出して)よむ。 ・元九:元のこと。「九」は排行。元も『聞白樂天左降江州司馬』「殘燈無焔影幢幢,此夕聞君謫九江。垂死病中驚坐起,暗風吹雨入寒窗。」 と白居易の身を気遣った作品を遺している。『初貶官過望秦嶺』で「草草辭家憂後事,遲遲去國問前途。望秦嶺上迴頭立,無限秋風吹白鬚。」 も同時期の作品である。
※把君詩卷燈前讀:あなたの詩集を手に取り持って、灯火のところで読んだが。 ・把:手に取る。手に取り持つ。後世、この語は介詞として発展する。 ・君:あなた(の)。ここでは、元九(元)のことのことになる。 ・詩卷:詩集。 ・燈前:灯火のところで。
※詩盡燈殘天未明:詩も読み終わり、燈火も消えかかろうとするのに、夜はまだ明けない。 ・詩盡:(詩集を読み尽くしたので)詩集の閲読が終わる。詩集を読み尽くす。 ・燈殘:燈火がすたれる。燈火(の油が残り少なくなって)消えかかる。灯油は、費えてきたということで、時間の経過や、費やした時間の多さをも表す。 ・殘:缺けて不完全になってのこされた。ここは、余って残る、の意ではない。その場合は「餘」や「剰」になる。 ・天未明:空は未だ明けない。未だ夜明けにはならない。
※眼痛滅燈猶闇坐:目が(疲れて)痛くなり、燈火を消して、なおもずっと暗闇に坐り続けて(あれこれ思いをめぐらして)いると。 ・眼痛:「燈殘」であるために、読みにくく、却って目が疲れた(ので)。 ・滅燈:灯火を消す。 ・猶:なおも。なお。なおまだ。なおかつ。 ・闇坐:暗闇で坐り続ける。
※逆風吹浪打船聲:逆風が大浪を作者の乗る船に向けて吹きつけてくるので、船体に当たって音があがる。 *第一聯は、視覚の世界で、第二聯は聴覚の世界になる。 ・逆風:むかい風。自分が進行しようとする方向と逆方向に吹く風。 ・吹浪:(逆風が)大浪を吹きつけて。 ・打船聲:船体に打ちつけて来る音。
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◎ 構成について
韻式は「AA」。韻脚は「明聲」で、平水韻下平八庚。次の平仄はこの作品のもの。
●○○●○○●,
○●○○○●○。(韻)
●●●○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2005.3.11 3.12 |
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