少年行
　　　　　　　　　　　　　　
      　　　　　　　　　　　　李白　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
五陵の　年少　　金市の東，
銀鞍 白馬　　春風を　度（わた）る。
落花　踏み盡（つく）して　　何處（いづこ）にか遊ぶ，
笑ひて入る　　胡姫の　酒肆（しゅし）の中に。

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◎　私感註釈

※李白：盛唐の詩人。

※少年行：楽府題。唐の崔國輔『長樂少年行』「遺卻珊瑚鞭，白馬驕不行。章臺折楊柳，春日路傍情。」 や王維の『少年行』「新豐美酒斗十千，咸陽遊侠多少年。相逢意氣爲君飮，繋馬高樓垂柳邊。」 宋の賀鑄『六州歌頭』「少年侠氣，交結五�ｷ雄。肝膽洞，毛髮聳。立談中，生死同，一諾千金重。推翹勇，矜豪縱，輕蓋擁，聯飛, 斗城東。轟飮酒，春色浮寒甕。吸海垂虹。�闌ﾄ鷹嗾犬，白�駐E雕弓，狡穴俄空。樂怱怱。」 王昌齢『少年行』「走馬遠相尋，西樓下夕陰。結交期一劍，留意贈千金。高閣歌聲遠，重門柳色深。夜闌須盡飲，莫負百年心。」や沈彬の『結客少年場行』「重義輕生一劍知，白虹貫日報讎歸。片心惆悵清平世，酒市無人問布衣。」など、いなせな若者や壮士を詠う。

※五陵年少金市東：五陵に住む富裕な若者たちは、長安の西の繁華街の金市の東で。　・五陵：長安の北にある地名。漢代の五陵墓があったことに起因する地名。富裕階層の住宅地。　・年少：わかもの。　・金市：長安の西の市場。

※銀鞍白馬度春風：銀色の鞍を置いた白馬といった、贅を尽くした出で立ちで、春の風が吹く人生の得意の時期を過ごしている。　・銀鞍：〔ぎんあん；yin2an1○○〕銀色に耀くくら。　・白馬：白い馬。前出「銀鞍」とともに贅を尽くしていることの表現。　・度：過ごす。わたる。　・春風：春の風。人生の得意の時でもある。

※落花踏盡遊何處：散っていく花びらを（意に介することもなく）すっかり踏んづけていって、どこで歓楽の時を過ごすのだろうか。　・落花：散っていく花びら。　・踏盡：すっかり踏んでしまう。驕る雰囲気を持つ語である。　・遊：遊ぶ。　・何處：どこで。

※笑入胡姫酒肆中：笑いながら、エキゾチックな容貌をした西域出身のホステスのいる酒場へ入っていった。　・笑入：笑いながら入っていく。　・胡姫：〔こき；hu2ji1○○〕西域の（酒場の）美女。エキゾチックな容貌をした西域出身のホステス。　・酒肆：〔しゅし；jiu3si4●●〕酒場。酒店。

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◎　構成について

　韻式は「AAA」。韻脚は「東風中」で、平水韻上平一東。次の平仄はこの作品のもの。

●○○●○●○，（韻）
○○●●●○○。（韻）
●○●●○○●，
●●○○●●○。（韻）

２００５．７．１８

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