一道殘陽鋪水中,
半江瑟瑟半江紅。
可憐九月初三夜,
露似眞珠月似弓。
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暮江吟
一道の殘陽 水中に鋪(し)き,
半江は 瑟瑟(しつしつ) 半江は 紅(くれなゐ)なり。
憐(あはれ)む 可(べ)し 九月初三の夜,
露は 眞珠の似(ごと)く 月は 弓に似たり。
◎ 私感註釈 *****************
※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)〜846年(會昌六年)。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。晩年仏教に帰依する。
※暮江吟:暮れの江べりのうた。
※一道殘陽鋪水中:一筋の夕陽が、水の中に射し込んできて。 ・一道:一筋。 ・殘陽:夕陽。 ・鋪:〔ほ;pu1○〕しく。しきつめる。ならべる。もうける。誇る。動詞。ここでは、夕陽が射し込む意になる。蛇足になるが、「鋪」〔ほ;pu4●〕は、店(みせ)、店舗の意で名詞。
※半江瑟瑟半江紅:川の半ばまで(の東側)は、さびしげな色で、(残りの)川の半分(である西側)は、赤くくれないである。 ・半江:川の半ば。後世、日本・夏目漱石の『無題』に「大愚難到志難成,五十春秋瞬息程。觀道無言只入靜,拈詩有句獨求C。迢迢天外去雲影,籟籟風中落葉聲。忽見閑窗虚白上,東山月出半江明。」と使う。 ・瑟瑟:〔しつしつ;se4se4●●〕さびしい様子や色のさま。風のさびしくきびしく吹く音のさま。珠玉の名。 ・紅:赤い。くれないである。夕焼け空が反映しているさまをいう。
※可憐九月初三夜:陰暦九月三日の夜の月は、愛すべきものである。 ・可憐:愛すべきである。愛らしい。うらやましい。あわれ。心が強く動かされるさまをいう。劉希夷『公子行』の「可憐楊柳傷心樹,可憐桃李斷腸花。」や、唐・王昌齡『梁苑』「梁園秋竹古時煙,城外風悲欲暮天。萬乘旌旗何處在,平臺賓客有誰憐。」、作者・白居易の『長恨歌』「可憐光彩生門戸」とあるのに同じ。 ・九月:陰暦の九月。晩秋。 ・初三:陰暦の月の第三日。ここでは、陰暦九月三日の夜ことになる。初三の夜の月の形は、三日月になる。三日月は、宵のうち、西天にあって、間もなく沈んでゆく。
※露似眞珠月似弓:(月光に)つゆは真珠のように(輝いて)、月(の形)は弓に似た(三日月の形になって)いる。 ・露:つゆ。 ・似:…のようである。…に似ている。ごとし。 ・弓:弓のような弧。三日月形。
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◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「中紅弓」で、平水韻上平一東。次の平仄はこの作品のもの。
●●○○○●○,(韻)
●○●●●○○。(韻)
●○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2006.1.28 |
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