白居易戯答諸少年詩詞世界碇豊長の詩詞：漢詩白楽天 Baijuyi Bailetian

                     　       　　
      戲答諸少年
　　　　　　　　　　　　　　
      　　　　　　　　　　　　白居易　

顧我長年頭似雪，
饒君壯歳氣如雲。
朱顏今日雖欺我，
白髮他時不放君。

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　戲れに　諸少年に答ふ　　　　

我が長年にして　　頭　雪に似たるに顧（かへり）み，
君が壯歳にして　　氣　雲の如くなるを饒（ゆる）す。
朱顏　今日　　我を欺（あなど）ると雖（いへど）も，
白髮　他時　　君を放（ゆる）さず。

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◎　私感註釈

※白居易：中唐の詩人。７７２年（大暦七年）～８４６年（會昌六年）。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。晩年仏教に帰依する。

※戲答諸少年：戯れに若者たちに答えて言う。老齢の者の考えや態度を若者から批判され、からかわれたことに対しての詩作になろう。若者の無礼さに対しての詩。この作品は、全て対句で構成されている。口語的表現が多用されている。後世、晩唐・杜牧は『送隱者』で「無媒徑路草蕭蕭，自古雲林遠市朝。公道世間唯白髮，貴人頭上不曾饒。」と使う。　・戲：たわむれに。　・答：返答する。問いに対して返事する。答えて言う。　・少年：若者。

※顧我長年頭似雪：わたしが年長者で頭髪も雪のように白くなった者であることに留意して。　・顧：〔こ；gu4●〕気を配る。構う。振り向いて見る。気をとめる。目をかける。かえりみる。現在でも“顧”は「気を配る。構う。」の意で使われる。「顧」の対象は「我長年頭似雪」。　・我：作者白居易を謂う。　・長年：〔ちゃうねん；zhang3nian2●○〕年長である。歳が長（た）けている。　・頭：頭髪のことを指す。　・似雪：雪のように白いことを謂う。

※饒君壯歳氣如雲：君たち壮年の者の（尊大で）気宇壮大なのを大目に見てゆるしてやろう。　・饒：〔ぜう；rao2○〕ゆるす。見逃す。また、豊かな。あまる。ここは、前者の意。「饒」の対象は「君壯歳氣如雲」。蛇足になるが、後世、俗語（現代語）で、「勘弁する」「許す」というのは“饒”〔rao2〕と言う。　・君：ここでは､少年のことになる｡　・壯歳：血気盛んな年代。壮年。　・氣：意気。　・如雲：天を掩う雲のように大きいことを謂う。

※朱顏今日雖欺我：若々しい血色の良い顔色の若者は、今、わたしをあなどっていても。　・朱顏：若者。若い年齢。若々しい容貌。　・今日：今。　・雖：…であっても。いえども。　・欺：〔ぎ（き）；qi1○〕あなどる。しのぐ。また、あざむく。だます。ここは、前者の意。蛇足になるが、後世、俗語（現代語）で、「ばかにする」「いじめる」というのは“欺負”〔qi1fu0〕と言う。

※白髮他時不放君：白髪は、将来、君たちを（ゆるして）みのがすようなことはない。　*あなたたち若者にも、必ず老いというものはやってくるのだぞ、ということ。　・白髮：しらが。　・他時：将来。後年。　・不放：ゆるさない。はなさない。みのがさない。意志の否定であって、「ゆるさない」「はなそうとはしない」「見逃しはしない」というニュアンス。　・放：ゆるす。はなす。みのがす。

◎　構成について

　韻式は「AA」。韻脚は「雲君」で、平水韻上平十二文。平仄はこの作品のもの。
●●●○○●●，
○○●●●○○。（韻）
○○○●○○●，
●●○○●●○。（韻）