翠鳥

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　蔡『古詩源』より

庭陬有若榴， �漉t含丹榮。 翠鳥時來集， 振翼修容形。 囘顧生碧色， 動搖揚縹��。 幸脱虞人機， 得親君子庭。 馴心託君素， 雌雄保百齡。

　
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　　　　　　　 翠鳥（すゐてう）

庭陬（ていすう）に　　若榴　有り，
�漉tに　　丹榮を　含む。
翠鳥　　時に來り集ひ，
翼を　振（ふ）りて　　容形を　修（をさ）む。
囘顧すれば　　碧色を　生じ，
動搖すれば　　縹��（へうせい）を　揚ぐ。
幸（さいはひ）に　　虞人（ぐじん）の機を　脱して，
君子の庭（てい）に　親しむを 得（え）たり。
心を馴らして　　君が素（そ）に 託し，
雌雄　　百齡を 保たん。

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◎　私感訳註：

※蔡：〔さいよう；Cai4Yong1〕後漢の文学者、書家。字は伯［口皆］。董卓のもとで左中郎将にまで昇ったので、蔡中郎と呼ばれる。博学多才で、書に優れる。董卓の死後、獄に下され、獄中で死んだ。紀元１３３年〜１９２年。

※翠鳥：〔すゐてう；cui4niao3●●〕カワセミ。　*カワセミが立派な柘榴（ざくろ）が生えている池に集い憩えているさまを詠うことで、豊かな国の素晴らしい君主の徳治に巡り逢えた喜びと憩いの一時を謂う。翠鳥＝作者・蔡のこと。庭陬＝国土。若榴＝天子。丹榮＝天徳。彩り豊かな詩である。

※庭陬有若榴：庭の隅（すみ）に石榴（ざくろ）の木がある。　・庭陬：〔ていすう；ting2zou1○○〕庭の隅（すみ）。　・有：…がある。　・若榴：〔じゃくりう（ざくろ）；ruo4liu2●○〕ざくろ。石榴（ざくろ）。柘榴（ざくろ）。

※�漉t含丹榮：緑の木の葉の中に赤い花がある。　・�漉t：〔りょくえふ；lyu4ye4●●〕緑の木の葉。「■■■■」　・含：ふくむ。　・丹榮：赤い花。「■■■■」。

※翠鳥時來集：：カワセミが、時々飛んできて集まっている。　・翠鳥：カワセミであり、もえぎ色「

」。

※幸脱虞人機：幸（さいわ）いにも、狩人の矢に狙われる（危うさから）脱する（ことができて）。　・幸：さいわいにも。　・脱：離脱する。　・虞人：〔ぐじん；yu2ren2○○〕山林・沼沢地帯の産物を司る役人。　・機：弩（いしゆみ）の石を発射するしかけ。弩（いしゆみ）のばね。　・虞人機：鳥にとっては、命を狙う危険なもの。災厄。

※得親君子庭：（幸いにも）君子の庭に親しく居ることができた。　・得：得る。手に入れる。　・親：親しくなる。　・君子：天子。君主。徳行のそなわった人。儒教の道徳を身につけた人格者。

※馴心託君素：従順な心で、君主の真心に任せて。　・馴心：〔じゅんしん；xun2xin1○○〕なれ従う心。従順な心。安心。　・託：託する。任（まか）せる。ゆだねる。　・君素：天子のまごころ。　・素：まこと。もと。また、白い色。「」

※雌雄保百齡：夫婦揃って（穏やかに過ごし）百歳の長寿を保ちたいものだ。庶民は「長命百歳」が願い。皇帝は「万壽無疆」。　・雌雄：〔しゆう；ci2xiong2○○〕（カワセミのオスメスが揃っているように）夫婦揃って。　・保：（齢（よわい）を）保つ。長生きをする。　・百齡：百歳の長寿。

◎　構成について

韻式は「AAAAA」。韻脚は「榮形青庭齡」で、平水韻でいえば下平九青。次の平仄はこの作品のもの。

○●●●○，
●●○○○。（韻）
●●○○●，
●●○○○。（韻）
○●○●●，
●○○●○。（韻）
●●○○○，
●○○●○。（韻）
○○●○●，
○○●●○。（韻）

２００７．６．５ 　　　　　６．６

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