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天風吹我上層岡,
露灑長松六月涼。
願借老僧雙白鶴,
碧雲深處共翔。
夏日 鶴巖に登りて 偶(たまた)ま成る
天風 我を吹きて 層岡に 上らしめ,
露は 長松に灑(そそ)ぎて 六月 涼し。
願はくは 老僧の 雙の白鶴を 借りて,
碧雲の深き處に 共に 翔(かうしゃう)せん。
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◎ 私感註釈
※戴叔倫:中唐の詩人。字は幼公。(現・江蘇省)潤州金壇の人。道教に帰依した。732年(開元二十年)〜789年(貞元五年)。
※夏日登鶴巖偶成:夏の一日、鶴巌(かくがん)に登り、偶(たまた)ま詩ができあがった。後世、日本の藤井竹外は影響を受け『遊芳野』「古陵松柏吼天,山寺尋春春寂寥。眉雪老僧時輟帚,落花深處説南朝。」を作った。 ・夏日:夏の一日。 ・鶴巖:〔かくがん;he4yan2●○〕具体的な場所は不明。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)で見ても見つけられない。作者の出身地も同様。 ・偶成:たまたま、詩ができあがる。
※天風吹我上層岡:空からの風は、わたしに向かって吹いてきて、幾重にも重なっている山の背へ追い上げた。 ・天風:空からの風。 ・吹:吹き(上げる)。 ・上:のぼる。 ・層岡:幾重にも重なっている山の背。
※露灑長松六月涼:露が大きい松にそそいだように降りていて、(真夏の旧暦)六月なのに涼しい。 ・灑:〔さい;sa3●〕そそぐ。水をそそぎかける。 ・長松:背の高い松の木。大きい松。「長」の用法≒「長」鯨の「長」。 ・六月:旧暦で、真夏。
※願借老僧雙白鶴:出来ることならば、老僧の二つならんだ白い鶴(白い眉毛の譬喩)をお借りして。 ・願借:出来ることならば…をお借りして。ねがわくは…を借り。願望を表す古漢語の「願…」の用法。漢の烏孫公主劉細君の『悲愁歌』に「吾家嫁我兮天一方,遠託異國兮烏孫王。穹盧爲室兮氈爲牆,以肉爲食兮酪爲漿。居常土思兮心内傷,願爲黄鵠兮歸故ク。」とあり、白居易の『長恨歌』「在天願作比翼鳥,在地願爲連理枝。」のこと。劉希夷(劉廷芝)の『公子行』では「願作輕羅著細腰,願爲明鏡分嬌面。與君相向轉相親,與君雙棲共一身。願作貞松千歳古,誰論芳槿一朝新。」 とあり、『古詩爲焦仲卿妻作(孔雀東南飛)』では「君當作磐石,妾當作蒲葦,蒲葦如絲,磐石無轉移。」とする。 ・老僧:僧侶。 ・雙白鶴:二つならんだ、白い眉毛を(向かい合っている)白いツルに喩えて謂う。
※碧雲深處共翔:みどり色の雲の深くなっているところをいっしょに、高く飛び回りたい。 ・碧雲:みどり色の雲。唐/蜀・温庭の『夢江南』「千萬恨,恨極在天涯。山月不知心裏事,水風空落眼前花。揺曳碧雲斜。」、宋・辛棄疾の『念奴嬌』「登建康賞心亭,呈史留守致道」「我來弔古,上危樓、贏得闖D千斛。虎踞龍蟠何處是?只有興亡滿目。柳外斜陽,水邊歸鳥,隴上吹喬木。片帆西去,一聲誰噴霜竹?却憶安石風流,東山歳晩,涙落哀箏曲。兒輩功名キ付與,長日惟消棋局。寶鏡難尋,碧雲將暮,誰勸杯中香H江頭風怒,朝來波浪翻屋。」、范仲淹『蘇幕遮』「碧雲天,黄葉地,秋色連波,波上寒煙翠。山映斜陽天接水,芳草無情,更在斜陽外。 黯ク魂,追旅思,夜夜除非,好夢留人睡。明月樓高休獨倚,酒入愁腸, 化作相思涙。」 とある。 ・深處:深いところ。 ・共:一緒に。ともに。 ・翔:〔かうしゃう;ao2xiang2○○〕鳥が高く飛びまわる。さまよう。
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◎ 構成について
仄起。一韻到底。韻式は、「AAAAA」。韻脚は「春人脣麟身」で、平水韻上平十一真。次の平仄はこの作品のもの。
●●○○●●○,(韻)
○○●●●○○。(韻)
●◎●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
○●●○○●●,
●○○●●○○。(韻)
●○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2007.4.22 |
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