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        説假話年代  
                       韶華
廿載荒唐言,
無盡辛酸涙。
莫怪蒼生癡,
皆因言獲罪。
 


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説假話年代

廿載(にふさい)  荒唐(くゎうたう)の言,
(つ)くること 無し  辛酸の涙。
怪しむ莫
(なか)れ  蒼生(さうせい)は 癡(ち)なりと,
皆  言はば 罪を獲
(え)んことに 因(よ)る。

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◎ 私感註釈

※韶華:原名は周玉銘。文化界で活躍している人物。1925年河南省に生まれる。文化教員、従軍記者…を勤め、中国作家協会書記処の書記を務めた。

※説仮話年代:うそを言った年代。 *この詩は、同名作品『説假話年代』(1999年・瀋陽・春風文芸出版社)の最終章に出てくるもの。作者が『紅楼夢』終章の詩「説到辛酸處,荒唐愈可悲。由來同一夢,休笑世人癡。」をもじったもの。「石頭曾記否,紅樓一場夢」ということか…。 ・説:言う。 ・仮話:うそ。虚言。嘘言。1958年5月に「大躍進」運動が全国的に展開され、大増産が上級に報告されるようになった。韶華『説假話年代』に拠ると、「1個の白菜が五百斤(250kg)、1畝(ムー)あたり十二万斤」(0.667aあたり6000kg)の食糧、1畝(ムー)あたり二百一十一万斤」(0.667aあたり1055000kg)のサツマイモ、稲穂が密生したためにその上に小さい女の子が座れた…等の指示された目標を超過達成したとの虚偽の報告がなされた。この目標の超過完成といった虚偽の報告が競い合って出され、それが重なり合って、災害を招いた、その虚偽、虚飾。真実を言えなくなっていた状況を指している。 ・年代:この詩の作者・韶華の『説假話年代』では1958年からの約二十年間を指す。

※廿載荒唐言:二十年間、でたらめな言葉(で)。 ・廿載:20年。1958年(「大躍進」運動)〜1978年(中共第十一期三中全会での過去の“左派”的な政治運動の誤りの是正)までの二十年間を指す。1958年5月に「大躍進」運動が全国的に展開された。8月には更に熱気を帯び、“大煉鋼鉄運動”(製鉄運動)が始まった。このため、農民が農業に従事できなくなり、天災三分、人禍七分といわれる大饑饉に見まわれ、厖大な数の餓死者を出したという。さらに紆余曲折の後、1966年に文化大革命が始まり、十年間続いた。76年10月、四人組が打倒され、77年8月、文化大革命の終結が宣言され、78年12月、中共第十一期三中全会が開催され、58年以降〜文化大革命時期の誤りが是正されだした。その間までの二十年間を謂う。 ・廿:〔じふ、にふ;nian4●入声(日本語での音(呉音、漢音)と、漢語(中国語)との音が対応していない稀少例)〕二十。 ・載:〔さい;zai3●上声〕とし。年。≒歳〔さい;sui4●去声〕。 ・荒唐言:無責任な発言。でたらめな言葉。ここでは、政治指導者の指導の言を指している。  ・荒唐:言説がとりとめのないこと。でたらめ。荒唐無稽。 ・言:発言。言葉。名詞。

※無盡辛酸涙:辛(つら)くて苦しい涙は、尽きることが無かった。 ・無盡:尽きることがない。果てしのない。 ・辛酸:つらく苦しいこと。辛苦。

※莫怪蒼生痴:人民とは、愚かだと訝(いぶか)しく思ってはいけない。 ・莫:…な。なかれ。禁止、否定の辞。 ・怪:不審に思う。訝(いぶか)しく思う。あやしむ。 ・蒼生:人民。百姓。 ・癡(痴):〔ち;chi1○〕愚かである。

※皆因言獲罪:(そのわけは)言えば、罪になるからなのだ。 ・皆因…:すべて…による。…のため。…だからだ。原因、理由を提起する表現。 ・皆:みな。ことごとく。全部。 ・因:起因する。原因である。よる。 ・言:言う。言葉に出してはっきりと表明する。動詞。前出「説」が口語であるのに対し、「言」は文語的表現になる。 ・獲罪:罪を得る。罪になる。




◎ 構成について

韻式は「aa」。韻脚は「涙罪」で、平水韻では、去声四ゥ(涙)と上声十賄(罪)で異なる韻部。現代語韻〔涙:lei4〕〔罪:zui4(zuei4)〕と謂える。次の平仄は、この作品のもの。

●●○○○,
○●○○●。(韻)
●●○○○,
○○○●●。(韻)
2007.1.31
     2. 2



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