贈范曄

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　南北朝・陸凱

折梅逢驛使， 寄與隴頭人。 江南無所有， 聊贈一枝春。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 范曄(はんえふ)に贈る

梅を折りて　　驛使(えき し )に逢ひ，
寄(よ)せ與(あた)ふ　　隴頭(ろうとう)の人に。
江南(かうなん)　　有る所 無(な)し，
聊(いささ)か贈る　　一枝(いっ し )の春

　　　　　　　　　　　　　******************





◎　私感訳註：

※陸凱：南朝・宋（４２０年〜４７９年）の人か。

※贈范曄：范曄（はんよう）に贈る。 ＊この詩は、（取り立ててこれといった物の無い）江南の地にいる作者（＝陸凱）が、（江南に比べて北方の）隴頭（ろうとう≒長安）にいる范曄（はんよう）に対して、（とりあえず）（南方の江南の春の）梅の花の枝を贈った、というもの。　・范曄：〔はんえふ（はんよう）；Fan4Ye4〕。南朝・宋の政治家・学者で、『後漢書』を著した。３９８年〜４４５年。字は蔚宗。会稽郡山陰県（現・浙江省紹興）の人。

※折梅逢駅使：官文書を伝達する人に（偶然に）でくわしたので、梅の枝を折って。　・逢：（偶然に）でくわす。（偶然に）あう。　・駅使：官文書を伝達する人。

※寄与隴頭人：隴頭（≒長安）にいる人（＝范曄）に贈りあたえる（ことにした）。　・寄与：贈りあたえる。　・隴頭：隴山のことならば、現・陝西省と甘粛省の境にある山の名。『中国歴史地図集』第四冊　東晋十六国・南北朝時期（中国地図出版社）５４−５５ページ「北朝　魏」にある。現・陝西省・甘粛省境で、（現代・毛沢東の『清平樂 六盤山』一九三五年十月に「天高雲淡，望斷南飛雁。不到長城非好漢，屈指行程二萬。　　　六盤山上高峰，紅旗漫捲西風。今日長纓在手，何時縛住蒼龍？」）現・六盤山などのあるところ。陝西省（の長安）を指しているか。　・隴頭人：隴頭（隴山）のほとりにいる人（＝范曄）。現・陝西省（の長安にいる）人（＝范曄）を指す。

※江南無所有：江南（＝長江下流地帯の南岸部）には、取り立ててこれといった物が無いので。　・江南：長江下流地帯の南岸部。　・無所有：取り立ててこれといった物が無いことを謂う。

※聊贈一枝春：ひとまず（南方の江南の春の）梅の花の枝を贈る（ことにした）。　・聊：ひとまず。しばらく。かりそめ。わずかに。いささか。

◎　構成について

韻式は「ＡＡ」。韻脚は「人春」で、平水韻上平十一真。近体詩の絶句の形式でもある。ただし、粘法を取っていない（失粘）。次の平仄はこの作品のもの。

●○○●●，
●●●○○。（韻）
○○○●●，
○●●○○。（韻）

２０１７．３．　６ 　　　　　３．　７ 　　　　　３．　８ 　　　　　３．　９ 　　　　　３．１０

次の詩へ 前の詩へ 「先秦漢魏六朝・詩歌辞賦」メニューへ戻る 　　　　********** 玉臺新詠 陶淵明集 辛棄疾詞 陸游詩詞 李�U詞 李清照詞 花間集 婉約詞集 豪放詞集・碧血の詩篇 歴代抒情詩集 秋瑾詩詞 天安門革命詩抄 扶桑櫻花讚 毛主席詩詞 読者の詩詞 碇豊長自作詩詞 豪放詞　民族呼称 詩詞概説　　 唐詩格律　之一 宋詞格律 詞牌・詞譜 詞韻 詩韻 参考文献（宋詞・詞譜） 参考文献（詩詞格律） 参考文献（唐詩・宋詞）

わたしの主張

トップ