即目三首其三 | |
清・王士禛 |
白浪金山寺,
靑山鐵甕城。
故人今不見,
楊柳作秋聲 。
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即目 三首 其の三
白浪 の金山寺 ,
靑山 の鐵甕城 。
故人 今は見えず,
楊柳 秋聲 を作 す 。
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◎ 私感註釈
※王士禛:清代の詩人。字は貽上、また子眞。号して漁洋。士禎と名を賜る。1634年(明・崇禎七年)~1711年(洪煕五十年)。
※即目三首其三:目にふれた光景をそのままうたった詩。これは全三首の中の第三首。 ・即目:目にふれる。目にふれたもの。
※白浪金山寺:白い浪が(現・江蘇省鎮江市の長江沿岸にある寺院の)金山寺(に打ち寄せて)。 ・金山寺:京口(現・江蘇省鎮江市)の長江沿岸にある寺院。『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)24-25ページ「北宋 両浙路 江南東路」の丹徒の北寄りの長江沿岸に金山がある。(右下地図の中央北寄りの長江南岸)。南宋・辛棄疾の『生査子』題京口(=鎮江)郡治塵表亭に「悠悠萬世功,矻矻當年苦。魚自入深淵,人自居平土。 紅日又西沈,白浪長東去。不是望金山,我自思量禹。」とある。
大きな地図で見る長江南部が鎮江市。中央のやや北寄りに金山寺。
※青山鉄甕城:青々とした山が鉄甕城(てつうじょう)(=鎮江城)(を取り囲んでいる)。 ・青山:青々とした山。また墓所とすべき山。ここは、前者の意。 ・鉄甕城:〔てつをうじゃう;Tie3weng4cheng2●●○〕鎮江城のこと。三国・呉・孫権の時代に築かれた。甓のように堅固なため、この名となった。現・鎮江市は現・江蘇省の中南部、南京の東70キロメートルの地点で、長江と大運河が交わる地点の長江南岸側にある。(右下地図の長江南岸の都市)。
※故人今不見:昔の人は、今はもういなくなり。 *北宋・蘇舜欽の『中秋夜呉江亭上對月懷前宰張子野及寄君謨蔡大』に「獨坐對月心悠悠,故人不見使我愁。古今共傳惜今夕,況在松江亭上頭。可憐節物會人意,十日陰雨此夜收。不惟人間惜此月,天亦有意於中秋。長空無瑕露表裏,拂拂漸上寒光流。江平萬頃正碧色,上下淸澈雙璧浮。自視直欲見筋脈,無所逃避魚龍憂。不疑身世在地上,祗恐槎去觸斗牛。景淸境勝返不足,嘆息此際無交游。心魂冷烈曉不寢,勉爲此筆傳中州。」とある。 ・故人:昔の友人。古くからの友だち。古いなじみ。旧知。旧友。また、亡くなった人。 ・不見:見つからない。会えない。
※楊柳作秋声:(私の寂寥感を理解しているかのように、ただ)楊柳(だけ)が秋の物寂しい風の音をたてている。 ・楊柳:ヤナギ。ヨウリュウ(楊柳)の木。また「楊」の木と「柳」の木の総称。盛唐・崔國輔の『長樂少年行』に「遺卻珊瑚鞭,白馬驕不行。章臺折楊柳,春日路傍情。」とある。 ・作:なす。 ・秋声:秋の物寂しい風の音。両宋・張元幹の『石州慢』己酉秋呉興舟中作に「雨急雲飛,瞥然驚散,暮天涼月。誰家疏柳低迷,幾點流螢明滅。夜帆風駛,滿湖煙水蒼茫,菰蒲零亂秋聲咽。夢斷酒醒時,倚危檣淸絶。 心折,長庚光怒,群盗縱横,逆胡猖獗。欲挽天河,一洗中原膏血。兩宮何處?塞垣只隔長江,唾壺空撃悲歌缺。萬里想龍沙,泣孤臣呉越。」とある。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「城聲」で、平水韻下平八庚。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●,
○○●●○。(韻)
●○○●●,
○●●○○。(韻)
2011.3.22完 2014.7.26補 |
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