即目三首其二 | |
清・王士禛 |
蕭條秋雨夕,
蒼茫楚江晦。
時見一舟行,
濛濛水雲外。
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即目 三首 其の二
蕭條 たる秋雨 の夕 ,
蒼茫 として楚江 晦 し。
時に一舟 の行くを 見る,
濛濛 たる水雲 の外 に。
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◎ 私感註釈
※王士禛:清代の詩人。字は貽上、また子眞。号して漁洋。士禎と名を賜る。1634年(明・崇禎七年)~1711年(洪煕五十年)。
※即目三首其二:目にふれた光景をそのままうたった詩。これは全三首の中の第二首。 ・即目:目にふれる。目にふれたもの。
※蕭條秋雨夕:もの寂しげな秋の雨の(降る)夕方。 ・蕭條:〔せうでう;xiao1tiao2○○〕 もの寂しいさま。東晉・陶潛の『挽歌詩 其三』に「荒草何茫茫,白楊亦蕭蕭。嚴霜九月中,送我出遠郊。四面無人居,高墳正嶕嶢。馬爲仰天鳴,風爲自蕭條。幽室一已閉,千年不復朝。千年不復朝,賢達無奈何。向來相送人,各自還其家。親戚或餘悲,他人亦已歌。死去何所道,託體同山阿。」とあり、盛唐・岑參の『山房春事』に「梁園日暮亂飛鴉,極目蕭條三兩家。庭樹不知人死盡,春來還發舊時花。」とあり、王士禛自身も『夜雨題寒山寺寄西樵禮吉』で「楓葉蕭條水驛空,離居千里悵難同。十年舊約江南夢,獨聽寒山半夜鐘。」と使う。 ・夕:ゆう。ゆうべ。日暮れ。
※蒼茫楚江晦:広々と果てしのない楚の国の川・長江は暗く(なってきた)。 *明・楊一淸の『山丹題壁』に「關山偪仄人踪少,風雨蒼茫野色昏。萬里一身方獨往,百年多事共誰論。東風四月初生草,落日孤城早閉門。記取漢兵追寇地,沙上猶有未招魂。」とある。 ・蒼茫:〔さうばう;cang1mang2○○〕(空、海、平原などの)広々として、はてしのないさま。見わたす限り青々として広いさま。また、目のとどく限りうす暗くひろいさま。蛇足になるが、「蒼莽」は〔さうまう(ばう);cang(1)mang3●●(上声上声)〕となる。「蒼」は多音字。 ・楚江:楚の国の川の意で長江のこと。また、岷江((現・四川省)岷山→成都→長江へ注ぐ川)のこと。作者の揚州時代の詩作なので、ここは、前者の意。 ・晦:〔くゎい;hui4●〕くらい。真っ暗闇。かくれてわからない意。
※時見一舟行:時々、小舟が一艘(夕霧がたちこめて暗い水と雲の向こうの方に)行くのが見えている。 ・時:時折。時に。 ・見:見える。「一舟行,濛濛水雲外」(=濛濛水雲外,一舟行)が見えるということ。 ・舟:こぶね。
※濛濛水雲外:(時々、一艘の小舟が)夕霧がたちこめて暗い水と雲の向こうの方に(行くのが見えている)。 ・濛濛:〔もうもう;meng2meng2○○〕霧などがたちこめて暗いさま。 ・水雲:水と雲。水の上に湧く雲。また、大自然。ここは、前者の意。 ・外:…の彼方(かなた)に。…より向こう(の方に)。
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◎ 構成について
韻式は、「aa」。韻脚は「響上」で、平水韻上声二十二養。この作品の平仄は、次の通り。
◎◎●○●,
●●○○●。(韻)
●●●○○,
○○●○●。(韻)
2011.3.20 3.21完 2020.7.10補 |
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