夜深衣薄露華凝, 屢欲催眠恐未應。 恰有天風解人意, 窗前吹滅讀書燈。 |
夏の夜 外 に示す
夜 は深 け衣 は薄 く露華 は凝 り,
屢〻 眠 を催 さんと欲 して未 だ應 ぜざるを恐 る。
恰 も天風 の 人の意を解 する 有りて,
窗前 吹き滅 す 讀書の燈 を。
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◎ 私感訳註:
※席佩蘭:清代の女性詩人。1760年〜1829年以後。袁枚の女性弟子。名は蕊珠。字は韻芬、遺華。号して浣雲、道華、佩蘭など。昭文(現・江蘇省常熟)の人。孫原湘の妻。佩蘭とは、蘭の絵を画くことに長けていたことに因る。詩は天機清妙で、著に『長真閣詩稿』や『傍杏樓調琴草』がある。
※夏夜示外:夏の夜に詩を作って、夫に見せた。 *妻(=作者)が夜更かしをする夫の健康状態に気遣って、「もうその辺で、擱(お)いたらどうですか?明かりも消えたことですし……」と、夫婦の会話を詩にしたもの。 ・示:詩を作って、人に見せる。詩詞を親しい者や目下に、気軽に見せるときなどに使う。北宋・蘇軾の『左遷至藍關示姪孫湘』、南宋・陸游『示兒』、無學祖元『示虜』等。贈…、呈…、の文型の一で、示…。 ・外:夫(おっと)。ここでは、孫原湘のことになる。なお、妻は「内」。
※夜深衣薄露華凝:夜が深まって(きたものの)、(あなたの)衣類は薄い(ままで、)(外では、)露(つゆ)の光が、固ま(っており)。 *この句、は【〔主語+述語〕〔主語+述語〕〔主語+述語〕】 =「夜・深+衣・薄+露華・凝」といった構文からなる。 ・夜深:夜が深まる。夜が更(ふ)ける。 ・露華:光っているつゆ。つゆの光。 ・凝:固まる。凝固する。凝結する。こる。
※屡欲催眠恐未応:しばしば、(もう)眠りませんかと、促してはいるものの、まだ承諾がないので心配です。 ・屡:しばしば。 ・欲:…う。…たい。ほっす。 ・催:うながす。 ・恐:恐れる。…ではないかと心配である。おそらく。ここは、前者の意。 ・未:まだ…ない。 ・応:〔おう;ying1○〕こたえる。承諾する。引き受ける。…べきである。まさに…べし。なお、「応」には:〔おう;ying4●〕こたえる。(求めに)応じる。返答する。返事する。の意がある。この詩のこの句は「●●○○●●○」とすべきところで、ここは○(平韻)の意(=前者の意。)で使われている。
※恰有天風解人意:ちょうど、空の高いところを吹く風(=天の風)が、人の思いが分かっているかのように。 ・恰:ちょうど。まさしく。あたかも。 ・天風:空の高いところを吹く風。世の中を司る天の風。明・王陽明(王守仁)の『泛海』に「險夷原不滯胸中,何異浮雲過太空。夜靜海濤三萬里,月明飛錫下天風。」とある。 ・解:わかる。 ・人意:人の思い。
※窓前吹滅読書灯:窓の前の読書用の灯(=スタンド)の火を吹き消した(ことですし…。もうこれを潮(しお)にして、寝ましょうよ)。 ・吹滅…灯:…の灯を吹き消す意。 ・滅:火を消す。火が消える。 ・読書:学ぶ。本を読む。
◎ 構成について
2017.7.26 7.27 |
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