無題 | |||||||
菅茶山 |
|||||||
窗前竹虹偃, 雪塢夜無聲。 孤燭攤書坐, 時聞棲雀驚。
|
窗前 竹 虹のごとく偃 せ,
雪塢 夜 聲 無し。
孤燭書 を攤 げて坐すれば,
時に 聞く棲 みたる雀の驚くを。
晉帥 (イメージ)
*****************
◎ 私感註釈
※菅茶山:江戸時代後期(化政文化期の代表的な)漢詩人、儒学者。延享五年(1748年)〜文政十年(1827年)。姓は菅波。名は晋帥(ときのり)。字は礼卿。号して茶山。通称は太仲。幼名は喜太郎、百助。備後国安那郡川北村(現・広島県福山市神辺町)の人で、農業・菅波久助の長子として生まれる。京都の那波魯堂に朱子学を学び、後に故郷に帰って、神辺(現・福山市)に私塾・黄葉夕陽村舎を開く。塾は、後には福山藩の郷学として認可され、廉塾と名が改められた。菅茶山は、藩校・弘道館にも出講した。廉塾の門人には、頼山陽・北条霞亭など。墓所は神辺網付谷にある。
※無題:詩題は無い。この詩は、菅茶山「五言絶句」二詩の元来は屏風にしていたものを、ばらして二本の軸装にしたもの。それ故、一本は関防印だけで署名は無く、一本は署名・押印だけ(=このページの詩:右の写真)となっている。元来の右曲の軸は「関防印+『早掃梅辺雪,衡門手自開。今朝是人日,応有韻流来。』」であり、元来の左曲の軸は「『窓前竹虹偃,雪塢夜無声。孤燭攤書坐,時聞棲雀驚。』+署名+押印」(=このページの詩)となっている。
※窓前竹虹偃:窓辺の竹に(雪が積もって)虹(にじ)のように(アーチ状に)倒れ伏して。 ・窓前:窓辺(に)。 ・虹偃:〔かうえん;hong2yan3◎●〕虹(にじ)のように(アーチ状に)倒れ伏すさまを謂う。 ・偃:〔えん;yan3●〕ふせる。倒れる。うつぶせになる倒れふす。(あおむけに)倒れる。倒す。
※雪塢夜無声:雪の垣(の中)は、夜になって、(静かで)物音がしない。 ・塢:〔を;wu4●〕とりで。堤。土手。四面が高く中央の窪んだところ。 ・夜無声:盛唐・杜甫の『春夜喜雨』に「好雨知時節,當春乃發生。隨風潛入夜,潤物細無聲。野徑雲倶K,江船火獨明。曉看紅濕處,花重錦官城。」とある。
※孤燭攤書坐:さびしく照らすただ一つのともしびの下で、書物を並べて(調べ物をして)坐っていると。 ・孤燭:さびしく照らすただ一つのともしび。≒孤灯。中唐・白居易の『長恨歌』に「夕殿螢飛思悄然,孤燈挑盡未成眠。遲遲鐘鼓初長夜,耿耿星河欲曙天。鴛鴦瓦冷霜華重,翡翠衾寒誰與共。悠悠生死別經年,魂魄不曾來入夢。」とある。 ・攤:〔たん;tan1○〕(平らに)広げる。並べる。開く。 ・書:書物。 ・坐:すわる。
※時聞棲雀驚:時折、木に棲(す)んでいるスズメの驚き騒ぐ(物音が)聞こえてくる。 ・時:時折。時に。 ・聞:きこえる。耳にする。 ・棲:〔せい;qi1○〕生息する。住む。(鳥が木に)止まる。
※晉帥 :ときのり。菅茶山の名。
***********
◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「聲驚」で、平水韻下平八庚。この作品の平仄は、次の通り。
○○●●●,
●●●○○。(韻)
○●○○●,
○○○●○。(韻)
平成24.7.12 7.14 7.15 7.16 7.17 |
トップ |