朝中措 | |
宋・陳允平 |
欲晴又雨雨還晴。
時節又清明。
紅杏墻頭燕語,
碧桃枝上鶯聲。
輕衫短帽,
扁舟小棹,
幾度旗亭。
鬥草踏青天氣,
買花載酒心情。
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朝中措
晴れんと欲 して 又た雨ふり 雨ふりて還 た晴る。
時節は又 た清明。
紅杏 の墻頭 に燕語 あり,
碧桃 の枝上 に鶯聲 あり。
輕衫 に 短帽,
扁舟 に小棹 ,
幾 たびか旗亭 を度 る。
鬥草 踏青 の天氣なれば,
買花 載酒 の心情なり。
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◎ 私感註釈
※陳允平:南宋末〜元朝初期の詞人。生没年不詳。字は君衡。西麓と号す。四明*県(現・浙江省寧波市*県)官宦の名門出身。
※朝中措:詞牌の一。詳しくは「◎構成について」を参照。
※欲晴又雨雨還晴:晴れようとして、またしても雨になり、雨は、やはり晴れた。 ・欲-:…ようとする。 ・又:またしても。 ・雨:あめふる。動詞。 ・還:さらに。やはり。
※時節又清明:季節は、またしても清明節だ。 ・清明:清明節。二十四節気の一。新暦の四月四〜六日頃に当たり、先祖の墓参りをし、また、野山に出かけて春の遊びをする日。晩唐・杜牧の『C明』に「C明時節雨紛紛,路上行人欲斷魂。借問酒家何處有,牧童遙指杏花村。」とあり、同・杜牧の『春日茶山病不飮酒因呈賓客』に「笙歌登畫船,十日C明前。山秀白雲膩,溪光紅粉鮮。欲開未開花,半陰半晴天。誰知病太守,猶得作茶仙。」とある。
※紅杏墻頭燕語:赤いアンズの花が塀(へい)の上(に咲き)、ツバメの囀(さえず)り(が聞こえる)。 *「紅杏墻頭燕語」「碧桃枝上鶯声」は対句になっている。 ・杏:アンズ。 ・墻頭:塀の上(=てっぺん)の部分。また、塀(へい)。壁。後者の意の「-頭」は:名詞の接尾字。【名詞(/動詞/形容詞)+頭】で名詞を作る。 ・燕語:ツバメの囀(さえず)り。また、酒盛りして語る。ここは、前者の意。
※碧桃枝上鶯声:碧桃(へきとう)の枝の上にウグイスの鳴き声(がする)。 ・碧桃:桃の一種で、結実しない種。花は八重咲きで白やピンクの花瓣。 ・鶯声:ウグイスの鳴き声。
※軽衫短帽:かろやかなひとえの服に小さなかぶり物。 *「軽衫短帽」と「扁舟小棹」とは、対句になっている。 ・軽衫:かろやかなひとえの服。 ・短帽:小さな頭巾。小さなかぶり物。
※扁舟小棹:小舟に小さな櫂。 ・扁舟:小舟。 ・棹:〔たうzhao4●〕小さいさお。小さい櫂。唐・無名氏の『漁父 和張志和詞』に「雪色髭鬚一老翁,時開短棹拔長空。微有雨,正無風。宜在五湖煙水中。」とある。
※幾度旗亭:居酒屋を何軒通り過ごしただろうか。 ・度:すごす。 ・旗亭:居酒屋。また、料理屋。
※闘草踏青天気:草あわせ(の遊び)に、ピクニックの日和(ひより)で。 *「闘草踏青天気」と「買花載酒心情」とは、対句になっている。 ・闘草:いろいろの草を取り合わせて優劣を競った遊戯。摘み草を比べ合って、優劣をきめて遊ぶ。草あわせ。花くらべ。南宋・范成大の『四時田園雑興 春日』に「社下燒錢鼓似雷,日斜扶得醉翁囘。青枝滿地花狼藉,知是兒孫鬪草來。」とある。 ・踏青:〔たふせい;ta4qing1●○〕緑の草を踏んで春遊に出る。郊外に出かける。春のピクニックに出かける。明末清初・銭兼益の丙申春就醫秦淮寓丁家水閣浹兩月臨行作絶句三十首に「舞榭歌臺羅綺叢,キ無人跡有春風。踏無限傷心事,併入南朝落炤中。」とある。 ・天気:天空の気。
※買花載酒心情:花を買って、酒を携行している心地だ。 ・買花:花を買う(?)。晩唐・杜牧の『遣懷』詩を踏まえているのならば:「楚腰」(スマートな舞姫)。 ・載酒:酒を(舟に)載せる。酒を携行する。晩唐・杜牧の『遣懷』に「落魄江南載酒行,楚腰腸斷掌中輕。十年一覺揚州夢,贏得樓薄倖名。」とある。
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◎ 構成について
朝中措 (芙蓉曲、照江梅、梅月圓ともいう) 四十八字。双調。平韻一韻到底。韻式は「AAA AA」。韻脚は「晴明聲 亭情」で、詞韻第十一部 平声八庚(晴明情聲)、九青(亭)。
○●●○○。(韻)
●●○○。(韻)
●○●,
○●○○。(韻)
○●,
○●,
●○○。(韻)
●○●,
○●○○。(韻)
2017.6.24 6.25 6.26完 7.28補 |
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