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秋夜將曉出籬門迎涼有感
                                                  
                        両宋・陸游

迢迢天漢西南落,
喔喔鄰鷄一再鳴。
壯志病來消欲盡,
出門搔首愴平生。




               
    **********************


            秋夜(しう や ) (まさ)(あかつき)籬門(りもん)()(りゃう)(むか)へんとして 感有り

迢迢(てうてう)たる天漢  西南に落ち,
喔喔(あくあく)たる鄰鷄(りんけい)  一再(いつさい) 鳴く。
壯志 ()みてより(このかた)  消えて()きんと(ほっ)し,
門を()で (かうべ)()きて  平生(へいぜい)(いた)む。






◎ 私感訳註:

※秋夜將曉出籬門迎涼有感:秋の夜、眠れないまま一夜を過ごし、明け方近くになって、まがきの門から出て涼をとったときの思い。 *これは二首のうちの一。病になって気力の衰えを歎いた詩。その二:「三萬里河東入海,五千仞嶽上摩天。遺民涙盡胡塵裏,南望王師又一年。」 はこちら。

※迢迢天漢西南落:遥かに遠い銀河は、西南の方に沈み(かけ)。 ・迢迢:〔てうてう;tiao2tiao2○○〕遥かに遠い道程。はるばると。北宋・秦觀の『鵲橋仙』に「纖雲弄巧,飛星傳恨,
銀漢迢迢暗度。金風玉露一相逢,便勝卻人間無數。   柔情似水,佳期如夢,忍顧鵲橋歸路。兩情若是長久時,又豈在朝朝暮暮。」とある。 ・天漢:天の川。銀河。

※喔喔鄰鷄一再鳴:コケコッコーと隣家の鶏(にわとり)が何度も鳴いた。 ・喔喔:〔あくあく;wo1wo1●●〕コケコッコー。擬声語で、雄鶏(おんどり)の鳴き声。なお、雌鶏(めんどり)の鳴き声は〔咕咕gu1gu1〕。 ・一再:何度も。重ねて。繰り返し。

※壯志病來消欲盡:雄々しい志は、病(やまい)になってよりこのかた、消えて尽きてしまいそうになり。 ・壯志:雄々しい志。武き心。南宋・岳飛の『滿江紅』に「怒髮衝冠,憑闌處、瀟瀟雨歇。抬望眼、仰天長嘯,壯懷激烈。三十功名塵與土,八千里路雲和月。莫等閨A白了少年頭,空悲切。   康耻,猶未雪。臣子憾,何時滅。駕長車踏破,賀蘭山缺。
壯志饑餐胡虜肉,笑談渇飮匈奴血。待從頭、收拾舊山河,朝天闕。」とある。 ・病來:病(やまい)になってより、の意。 ・欲盡:尽きようとしている意。

※出門搔首愴平生:門を出て、頭を掻(か)いて(=困って思案するさま)、この一生をいたみかなしんでいる。 ・搔首:頭をか(いて思案する)。困って思案する様子。 ・愴:〔さう;chuang4●〕いたむ。かなしむ。 ・平生:生涯。終生。一生。また、かつて。むかし。往時。往年。また、日ごろ。北宋・黄庭堅の『虞美人』宜州見梅作に「天涯也有江南信,梅破知春近。夜闌風細得香遲,不道曉來開遍、向南枝。   玉臺弄粉花應妬,飄到眉心住。
平生箇裏願杯深,去國十年老盡、少年心。」とあり、明・戚繼光の『馬上作』に「南北驅馳報主情,江花邊草笑平生。一年三百六十日,キ是戈馬上行。」とある。






◎ 構成について

韻式は「AA」。韻脚は「鳴生」で、平水韻下平八庚。次の平仄はこの作品のもの。

○○○●○○●,
●●○○●●○。(韻)
●●●○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2016.10.30
     10.31
     11. 1
     11. 3
     11. 4
                               
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