闖D如飛雪, 入酒即消融。 好花如故人, 一笑杯自空。 流鶯有情亦念我, 柳邊盡日啼春風。 長安不到十四載, 酒徒往往成衰翁。 九環寶帶光照地, 不如留君雙頰紅。 |
酒に對す
闖D は飛雪 の如 く,
酒に入 りては即 ち消融 す。
好花 は 故人の如く,
一笑すれば 杯自 ら空 なり。
流鶯 情 有りて亦 た我を念 ひ,
柳邊 盡日 春風 に啼 く。
長安 到らざること十四 載 ,
酒徒往往 にして衰翁 と成る。
九環 の寶帶 光 地を照らすも,
如 かず 君の雙頰 の紅 を留 めたるに。
◎ 私感訳註:
※陸游:南宋の詩人。宣和七年(1125年)〜嘉定二年(1209年)。山陰 (現・浙江省紹興県)の人。字は務観。号して放翁。夔州通判、厳州権知事、軍器少監、礼部郎中兼実録院検討、宝謨閣待制などを歴任した。尤袤、楊万里、范成大とともに南宋四大家と称された。祖国を憂うる愛国詩人といわれるとともに、日常の生活をもこまやかに歌い上げた。
※対酒:酒に向かう。盛唐・李白に『春日醉起言志』「處世若大夢,胡爲勞其生。所以終日醉,頽然臥前楹。覺來盼庭前,一鳥花間鳴。借問此何時,春風語流鶯。感之欲歎息,對酒還自傾。浩歌待明月,曲盡已忘情。」とある。
※閑愁如飛雪:空しく愁えることは、飛び交(か)う雪のようで。 ・閑愁:空しく愁える。南宋・李C照の『一翦梅』に「紅藕香殘玉簟秋。輕解羅裳,獨上蘭舟。雲中誰寄錦書來,雁字回時,月滿西樓。 花自飄零水自流。一種相思,兩處閑愁。此情無計可消除,才下眉頭,却上心頭。」とある。
※入酒即消融:酒が入れば、すぐに溶けてしまう。 ・即:すぐに。すなわち。 ・消融:(雪や氷が)解ける。溶けてなくなる。
※好花如故人:美しい花は、昔なじみのようで。 ・好花:美しい花。=好華。 ・故人:昔なじみ。旧友。
※一笑杯自空:ひとたび咲けば(=笑えば)、酒杯はおのずと空になって(いく)。 ・一笑:微笑む。少し笑う。にっこりと笑う。また、ひとたび咲く。ここでは、両者の意。中唐・白居易の『長恨歌』に「回眸一笑百媚生」とある。「笑」は「わらう」意。また「咲く」意。 ・杯自空:酒杯(の酒)が、いつの間にか無くなる意。
※流鴬有情亦念我:木から木へと飛び移って鳴くウグイスは、好意をもっていて、また、わたしを思っている(のだろうか)。 ・流鴬:〔りうあう;liu2ying1○○〕木から木へと飛び移って鳴くウグイス。また、鳴き声が流麗である。 ・有情:親しみを感じる。好意をもつ。 ・流:〔りう;liu2○〕あちこちと移る。劉言史の『尋花』に「遊春未足春將度,訪紫尋紅少在家。借問流鶯與飛蝶,更知何處有幽花。」とあり、前出・李白の『春日醉起言志』に春風語流鶯。感之欲歎息,對酒還自傾。」とある。 ・亦:…もまた。 ・念:思う。
※柳辺尽日啼春風:柳のきのあたりで、一日中、春風に鳴いている。 ・尽日:一日中。 ・啼:鳴く。
※長安不到十四載:都(みやこ)に行かないこと十四年になる(が)。 ・長安:首都(長安)。ただし、ここでは、当時の南宋の首都である臨安(=杭州)を指す。 ・十四載:十四年。隆興元年(1163年)に中央の官を免ぜられ、鎮江通判に任ぜらる。以後、それから14年後の淳煕3年(1176年)にこの詩ができたことに因る。 ・載:〔さい;zai3●〕とし。年。
※酒徒往往成衰翁:酒飲みは、ややもすれば、心身が衰えた老人となってしまう。 ・酒徒:酒飲み。飲んべえ。 ・往往:つねづね。しばしば。時々。往々にして。まま。時として。ややもすれば。 ・衰翁:高齢のため、心身が衰えた老人。
※九環宝帯光照地:(権威の象徴である)九環の宝帯の輝きは、地面を照らしている(が)。 ・九環宝帯:五円玉状の宝玉を九箇ベルト状に並べて繋いだ帯。 ・環:たまき。平たい玉で、真ん中に穴が空いている。五円玉状の宝玉。 ・宝帯:宝玉で飾った帯。
※不如留君双頬紅:(それも、)両方の頬が(火照(ほて)って、若々しく)赤いさまに及ばない。 ・不如:…に及ばない。…にしかず。 ・双頬紅:両方の頬が赤い意。若さ(≒紅顔)ゆえ? 酒に火照ったゆえ?
◎ 構成について
2019.3.22 3.23 3.24 3.25 3.26 |